【3】FFPS(フィードフォワードパワーサプライ)
日本ビクター㈱が1980年代に開発した電源で、特許を取得したと記憶しております。第5図のように、出力管カソード基準の通常のカスコード接続と異なり、グリッドを基準とする可変定電圧電源と制御素子を組み合わせて構成されます。
この回路では、グリッドとプレート間電位が一定となります。また、一定レベルの信号まで制御素子でプレート電圧をコントロールでき、本機ではこの回路の採用でプレート損失を33%軽減しており、出力管の発熱を抑えています。また、可変定電圧電源への信号遅延が少ないので、特に超高域まで大量の負帰還を構成する当時の半導体アンプに展開されました。
第5図 FFPS回路(フィードフォワードパワーサプライ)
【4】放熱設計
本機は出力40W/8Ωの真空管式OTLアンプとしては無信号時消費電力を200Wに抑えることを達成しましたが、比較的小型の筐体(17リットル)のため、放熱に留意いたしました。主たる熱源である出力管の真空管カバーをチムニー(煙突)構造とすることで、冷却ファンを用いることなくシャーシ下部より冷却空気を吸引し、流れを作ることによって効率的に放熱しております。この効果により、シャーシ内部温度が14℃低下いたします。したがって、本機の真空管カバーは真空管保護のみならず放熱に寄与しておりますので、標準装備といたしました。合わせて温度定格の高い部品を採用し、長期の信頼性獲得を目指しました。
【5】保護回路
前述の理由により、真空管式OTLアンプは故障リスクが高く、本機では故障部位の拡大と伝搬を防ぐために、以下4項の事象に対する保護回路を装備いたしました。異常を検出すると直ちにFFPSを構成する制御トランジスターによって出力管に印加されるプレート電圧を遮断し、同時にスピーカーリレーにて出力を切り離し、内部回路とスピーカーの破壊を防止します。
制御回路部は、マイコンを搭載し、電源投入回数、通算通電時間、個別の保護回路の発動回数や出力管のプレート電流の累積計測値を記録する機構を装備する。
電源部整流回路を見る。右上が整流直後のフィルターコンデンサー。電源部はパワーリレー2基による突入電流抑制とリモート制御による電源ON/OFFに対応する。
①異常発振の検出 帯域制限となる出力トランスがないことで超高域発振の危険性があり、これを検出します。また、真空管の寿命末期に生ずるインパルス状のノイズを検出する効果もあり、真空管 交換時期のサインともなります。
②DCリーク検出 スピーカーと直結しているため、アンプが異常となったときに過大な電流が流れスピーカーを破損する可能性があります。本機では出力信号中のDC成分を検出し、規定値を超えた場合に発動します。
③オーバーヒート 出力管の異常発熱や放熱条件の悪化等でシャーシ内部の温度が規定値を超えた場合に発動し、高温による部品破損を防ぎます。
④オーバーカレント 出力ショートや4Ω以下の低インピーダンスのスピーカーを接続したときに過大な出力電流から出力管を保護するために発動します。
上記4項の保護発動回数ならびに出力管のプレート電流値の累積計測を行ない、その値を本機の内部に記録します。合わせて電源投入回数、通算通電時間を記録し、当社へ修理、定期検査等で入庫したときに、この記録内容を抽出、分析することで、使用実態の把握と課題の設定に供します。
第6図として、本機のブロックダイアグラムを示します。
第6図 ブロックダイアグラム

参考文献 『基礎電子管工学』J.W.ゲワルトウスキー、H.A.ワトソン/山本賢三監訳(廣川書店)、『OTLアンプの設計と製作』武末数馬(ラジオ技術社)



