エソテリックの新製品群のインパクトは今年も強力で、待ち受けるオーディオファンの期待は高まる一方だ。注目すべき理由はふたつある。まず、3機種いずれもソースコンポーネントであること。そして、フラッグシップの「Grandioso K1XE」を筆頭に、ネットワークDACの「N-01XE」、ターンテーブルの「T-01」と、各カテゴリーのトップモデルを揃えたことがふたつ目の重要なポイントだ。ディスク、ストリーミング、アナログレコードの各ジャンルを牽引する製品を同時に刷新して音楽メディア再生の新たな到達点を目指す意気込みが感じられ、頼もしい。
「Grandioso K1XE」の、新世代DACがもたらす音の変化に驚く

SACD/CDプレーヤー:Grandisos K1XE ¥4,180,000(税込、11月1日発売)
●SACD/CDトランスポート・メカニズム「VRDS-ATLAS」搭載
●新世代ディスクリートDAC「Master Sound Discrete DAC G2」搭載
●独自の電流伝送「ES-LINK Analog」
●ディスクリート構成の「ローフィードバック・DCパワーレギュレーター」
●マルチレイヤー構成シャーシコンストラクション
●セミフローティングトップパネル
●新世代高音質ピンポイント・アイソレーション・フット

トランスポート・メカニズムには、独自のVRDS-ATLASを搭載。K1XEのディスクトレイでは、ディスクを装填する部分の溝が従来モデルからやや深くなっている。それに伴い8cm CD用の溝がなくなったので、8cm CDを再生する場合はアダプターが必要とのこと
●再生可能ディスク:SACD、CD(CD-R/CD-RW)※8cmCDは非対応
●接続端子:アナログ音声出力2系統(XLR/ES-Link Analog、RCA)、デジタル音声出力(XLR)、デジタル音声入力3系統(ES-LINK、XLR、光)、USB(Type-B)、クロック入力(BNC、10MHz)
●寸法/質量:W445✕H161.5✕D447.3mm(端子部含む)/34.3kg

リアパネルにはデジタル、アナログの入出力端子を豊富に搭載。独自の超広帯域デジタル伝送ES-LINK5を使って、ネットワークトランスポート「Grandioso N1T」との接続も可能

強化電源の「Glandioso PS1XE」(¥1,540,000、税込、11月1日発売)を追加した音も確認していただいだ。K1XEと専用DC電源ケーブルでつなぐことで、より安定したドライブ駆動が可能になる
3機種の概要と音の印象を順に紹介していこう。まずは一体型プレーヤーの最高峰となるK1XE。今回、オーディオ回路の心臓部に相当するマスターサウンド・ディスクリートDACを第2世代(G2)に変更したことが重要だ。G2は「Grandioso N1」で採用された最新世代のディスクリートDACで、デジタル信号をアナログに変換する抵抗ネットワーク回路の構成を見直してさらなる音質改善を狙う。抵抗をオン・オフする回路の近傍にコンデンサーを配置するなどの設計手法をN1から受け継ぎ、ノイズ低減を達成したとされる。
ちなみに今回の最適化の考え方はモノーラルDAC「Grandioso D1X」のディスクリートDACが採用した回路構成に近い。D1Xではエレメントを放射状に配置していたが、その理想的な配置に一歩近付いたのだ。ちなみにネットワークトランスポートの最高峰に位置する「Grandioso N1T」のオーナーは、新設されたES-LINK5経由でK1XEに接続することで、G2ディスクリートDACを活用できる。

写真上側がエソテリックの最高峰モノーラルDAC「Grandisos D1X SE」に搭載されたマスターサウンド・ディスクリートDACの第1世代の基板で、右下は「Grandisos K1X」に使われたもの。左下が第2世代マスターサウンド・ディスクリートDAC基板で、第1世代の思想を受け継ぎつつここまでの小型化を実現している
G2のディスクリートDACは、デジタル領域とアナログ領域で電源をセパレート化するなど、電源回路も見直している。また、出力バッファーアンプをデュアル化することで電流出力を強化し、立ち上がりの速さを改善したことも音質改善につながるはずだ。
電源トランスはマイコン用を新たに独立させ、従来の4トランス構成から5トランスに構成に変更して干渉対策を徹底。さらに内蔵DACの電源回路を独立化する強化電源ユニットも「Grandioso PS1XE」としてリニューアルし、本質的グレードアップへの選択肢を強化した。ちなみにPS1XEはK1XやK1X SEの強化電源としても使用できる。
DACの世代交代がもたらす音の変化が小さくないことは聴く前から予想していたが、結果はその予想を上回り、K1X SEを愛用している筆者はかなりの衝撃を受けた。一聴してすぐ気付く変化として、密度、力強さ、勢いなど、演奏の生々しさや躍動感を左右する要素の表現力が確実に向上していることだ。それも特定の楽器や音域というのではなく、どの楽器、音域でも違いが聞き取れるレベルの変化なので、違いがとてもわかりやすいのだ。

上野通明のチェロ独奏では、張り詰めたフォルティッシモのピチカートで弦だけでなく楽器のボディまでもが震えている感触を実感できるし、カルメン前奏曲のマッシブだがスピード感のあるトゥッティも同じ音量とは思えないほどの強靭な音圧感を身体全体で受け止めることになる。K1XEの音質改善は単独で聴いてもすぐに気付くレベルだが、強化電源のPS1XEを追加すると、その進化が揺るぎないものになる。新設計のフットを導入した成果なども加わり、VRDS-ATLASのポテンシャルの高さをあらためて思い知らされた。
ディスクリートDACをG2に更新した「N-01XE」も、本質的な音質改善を果たす

ネットワーク/DAC:N-01XE ¥2,420,000(税込)
●DSD 22.5MHzやPCM 768kHzの再生をはじめとする最新フォーマットに対応
●SFPポートに対応した第4世代「ESOTERIC Network Engine G4」を搭載
●新世代のディスクリートDAC「Master Sound Discrete DAC G2」を搭載
●DSF、DSDIFF、FLAC、ALAC、WAV、AIFF、MQA、MP3、AACのファイルフォーマットに対応
●Tidal、Tidal Connect、Qobuz、Qobuz Connect、Roon、Spotify、QQ Musicなど、様々な音楽配信サービスに対応
●接続端子:デジタル入力4系統(ES-LINK、XLR、同軸、光)、USB(TYPE-B)、SFP、RJ45×1、USBドライブ(TYPE- A)、アナログ音声出力2系統(XLR/ES-LINK Analog、RCA)、クロックシンク入力(BNC、50Ω、10MHz)、12Vトリガー端子(3.5mmミニジャック)
●周波数特性:5Hz〜30kHz(-3dB)
●S/N:113dB(A-Weight)
●消費電力:25W(スタンバイ時0.3W)
●寸法/質量:W445×H161.5×D437mm/25.7kg

「N-01XE」は、D/Aコンバーターとしてだけでなく、ネットワークプレーヤーとして多彩なストリーミングサービスにも対応している。そこではLAN(RJ45)に加えて、SFP入力を備えているのも大きな特徴だ
N-01XEは01シリーズの頂点に位置するネットワークDACとして開発された。「N-01XD SE」の後継機に相当するが、K1XEと同様、ディスクリートDACをG2に更新することで本質的な音質改善を果たしたというのがメーカーの主張だ。
オーディオ用のネットワークシステムを構築する上で重要な鍵となる外来ノイズ対策についても、SFPを用いた光接続をサポートする第4世代のネットワークエンジンで万全の対応を果たした。ネットワーク信号処理とDAC以降のオーディオ回路を一気に最新世代に置き換える大技を導入することで、ストリーミングとファイル再生の頂点を目指す。そんな意気込みの強さが感じられる注目の一台なのだ。
Qobuzの音源を中心に確認したN-01XEの再生音は、精緻なディテイル描写とスケールの大きさが両立した次元の高い表現を引き出しており、エソテリックが目指す音のヴィジョンを目の前に提示されたように感じた。3次元の立体的なイメージとして声やソロ楽器が定位し、それぞれの楽器が共鳴する空気の揺らぎまで正確に再現する。K1XEで体験した力強さや勢いの強さはN-01XEの音を特徴付ける重要な資質のひとつだが、それに加えて繊細さと柔らかさも新たな領域に到達している。

新製品に搭載されたDAC回路について解説してくれた、ティアック株式会社プレミアムオーディオ事業部 海外営業・販売促進部 副部長の町田裕之さん
F.P.ツィンマーマンのスプリングソナタでの中高域の柔らかい感触やジョン・ウィルソンのコープランドで味わえる金管楽器のハーモニーの厚みなど、聴き慣れた音源から新たな発見を引き出す情報量の余裕は、G2ディスクリートDACのもうひとつの長所と理解した。
ディスクかストリーミングかといったメディアの種類を意識することなく演奏の真髄に迫り、録音の真価を引き出す。ハードウェアやソフトウェアの制約を超えて本質を見きわめることこそが、音楽ファンの究極の楽しみだと気付かせてくれる。ネットワークオーディオもついにそんな領域に到達したのだ。
「T-01」が、非接触マグネドライブシステムをより身近にする

ターンテーブル:T-01 ¥4,730,000(税込)
●回転数:33 1/3、45回転
●ワウフラッター:0.06%以下(W.R.M.S.)
●トーンアーム:スタティックバランス型(AT-95)
●トーンアーム全長:309mm(全長232mm)
●オーバーハング:16mm
●針圧印加範囲:0〜3g(0.25gステップ)
●カートリッジ/シェルバランス範囲:15〜32g(ヘッドシェル含む)
●ヘッドシェル自重:17g
●消費電力:8W(スタンバイ時0.3W)
●寸法/質量:本体 W539✕D206✕D432mm/35kg(アーム装着時)、電源部 W146✕H128✕D353mm/7kg
※ラインナップ:T-01 AL ¥4,400,000(税込、アームレスモデル)

「T-01」はターンテーブル部と電源部のツーピース構成。ターンテーブル部にはクロック入力端子(BNC、10MHz)も備えており、マスタークロックとつなぐことで、より安定した回転を実現できるそうだ

「アナログ再生におけるマスターサウンドの実現」という理念を実現させるために、非接触型の磁気誘導式ターンテーブル駆動方式を搭載している。駆動用モーターの先端には、特殊な着磁を行ったマグネティック・ドライバーを備える

写真左はMagneDrive Systemのモーターと、新開発されたバイブレーション・アブソーバー・ケース。このふたつを組み合わせることで、シャーシ内にMagne Drive Systemのモーターを内蔵。より使いやすい本体サイズを実現した。右の写真は新開発アイソレーション・フットで、独自のスパイクと受皿を一体化した構造に、ハウリングを防ぐためのダンパー機能を追加している
K1XEとN-01XEを聴いてデジタルオーディオの到達点を確認した後には、アナログオーディオの新たな頂点を目指したターンテーブルのT-01が待ち受けていた。「Grandioso T1」が世界で初めて採用した非接触のマグネドライブシステムを継承しながら、モーターユニットを本体に内蔵させることで優れたハンドリングを実現し、01シリーズならではの使い勝手の良さを追求している。マグネドライブが引き出す圧倒的な静寂表現と壮大な空間描写を確保しながら、導入の敷居を一気に下げる。それがT-01の開発にチャレンジした最大の理由なのだ。
モーターを内蔵することで懸念される振動の影響を抑えるために、振動吸収機構をT-01専用に開発。電源はT1と同様にセパレート筐体としているが、サイズを大幅に抑えることで設置スペースを抑える工夫を凝らした。本体シャーシの造形は一般的なターンテーブルシステムに近いスタイルになったが、独自構造のフットをはじめ、基本的な振動対策に妥協はない。
T1がもたらす別次元の静寂表現を何度か経験している。T-01がその領域にどこまで近付けるかを確認することが今回の試聴のテーマのひとつだ。物量で勝るT1にはさすがにかなわないのでは? と最初は考えていたのだが、ペルトコスキ指揮 香港フィルのワーグナーを聴いた途端、その懸念が不要なものだったことに気付いた。深い静寂表現はマグネドライブに由来するもので、その利点はT-01にもそのまま受け継がれているのだ。

ムローヴァが独奏を弾くヴィヴァルディ「四季」ではエコーが広がる空間の濃密な空気感を味わい、ヴァイオリンの音色の瑞々しさにも息を呑んだ。小編成の協奏曲とはいえ、ピアニシモの静けさが異次元なので、フォルティッシモの力強さが際立ち、想像したよりもワンランク上のレベルで広大なダイナミックレンジを実感することができるのだ。レコードにそなわる無限の可能性をここまで引き出すことができるターンテーブルは数えるほどしか存在しない。
エソテリックはアンプなど他の分野でも精力的に製品開発に取り組んでいるが、2026年はディスク、ネットワーク、アナログレコードの3つの分野にソースコンポーネントの重要な製品が集中した。種類の異なるメディア再生の頂点をほぼ同時期に目指した意義は大きく、著しい成果を上げている。

今回の取材はエソテリックの社内試聴室で行った。プリアンプは「Grandioso C1X solo」、パワーアンプが「Grandioso S1X」で、スピーカーシステムはB&W「800 D3」を使用。「T-01」にはフォノイコライザー「Grandioso E1」とマスタークロック「Grandioso G1X」も組み合わせた







