青春の要素をたっぷり含むトレンディな作品という印象を受けた。約140分という尺も、私の考えるインド映画のイメージの中では短めのほうだ。
主人公は、優雅と言うほどではないにせよ、けっこう満ち足りた独身ライフを送っているサティヤという青年。人柄はかなりシャイかもしれない。そこに姉が「もうそろそろ弟にも彼女ができてもいいのではないか」とばかりに、インフルエンサーの女性モニシャを紹介したことから物語は活気づく。とりあえず話してみたら、同郷であり、共に知っている場所もいろいろあった。ここで心理的距離がぐっと縮まり、外向的なモニシャは「学生時代に告白できなかった初恋の人に会いに行こう」と提案する。「あの時言えなかった気持ちを、今、伝えようではないか」というのだ。そのモニシャに半ば巻き込まれるうちに、サティヤは俄然、前向きになっていく。そこがこの物語の魅力と言っていいだろう。
そして私は、自分の考えるインド映画のイメージが、ずいぶんボリウッドに偏っていたことを痛感した。どの国にも青年がいて、男女がいて、恋がうまくいったりいかなかったりして、悩んだり喜んだりして、雨の日も晴れの日も生きている。その「普遍」の中にある、ちょっとした輝きと言うべきものを、この映画は掬いだして、我々に示してくれる。
またこの映画は、今年2月に日本公開された『ツーリストファミリー』とちょっとした姉妹関係にある。その監督であるアビシャン・ジーヴィンがサティヤを演じ、その助監督であったマダンが本作で長編監督デビューを果たしたのだ。スタッフ間の仲の良さも、画面に表れている違いない。
映画『冴えないボクと映えるキミ』
9月4日(金)より新宿ピカデリー ほか全国順次公開
出演:アビシャン・ジーヴィント、アナスワラ・ラージャン/シャシクマール(特別出演)、カマレーシュ・ジャガン(特別出演)
監督・脚本:マダン 音楽:ショーン・ロールダン 編集:スレーシュ・クマール 製作:サウンダリヤー・ラジニカーントほか 撮影:シュレーヤース・クリシュナ 製作会社:ザイオン・フィルムズ、MRPエンターテインメント
2026年/インド/タミル語/141分/ビスタ/5.1ch/カラー/原題:With Love/字幕:大西美保/字幕監修:小尾淳
配給:SPACEBOX/ラビットハウス/映倫:G
(C) Zion Films (C) MRP Entertainment


