2024年の日本上陸以来、ユニバーサルディスクプレーヤー市場で確かな存在感を示しているマグネター。その背景には、単なる製品開発を超えた“物理メディア文化を継承する”という強い意志がある。今回は事業部長のShawn Xueさんと製品開発エンジニアチームを率いるハードウェア設計担当のTianPengさんに、ブランドの成り立ちから新フラッグシップ「ULTIMA」の狙いなどを聞いた。
フィジカルディスクはユーザーにとって「所有する財産」。だからこそマグネターは「ディスク再生機」を作り続ける
本本市場では、MAGNETARは「ユニバーサルディスクプレーヤーを継続して開発できる数少ないブランド」として評価されています。
Shawnさん(以下、Shawn) ありがとうございます。私たちはビデオディスクプレーヤーなど様々な製品を対象としたODM(Original Design Manufacturing/企画・開発・設計まで含めた他社ブランド製品の製造受託)事業を長年手掛けてきた企業グループを背景に持っています。製品製造はもちろん、製品企画、製品開発、さらにサプライチェーン管理やライセンス管理も含めて総合的な技術基盤を持っていることが強みです。
市場ではオッポデジタルが展開していた「ユニバーサルディスクプレーヤー」の後継ブランド的な存在として見られることもあります。
Shawn そうした見方をされることは理解しています。しかし私たちは単なるオッポデジタルの代替ブランドではありません。継続的に新製品や改良モデルを投入しながら、独自の進化を続けています。長期的な製品供給体制を構築し、重要な部品も十分に確保していることをお伝えしておきます。
物理メディア市場は世界的に縮小しています。その中でビデオディスクプレーヤーを作り続ける理由は何でしょう。
Shawn デジタルディスク、特にビデオディスク市場は世界的にみて、確かに縮小しています。しかし、多くのユーザーにとってディスクは単なるメディアではなく「所有する財産」です。インターネットを使ったストリーミング映像配信サービスでは代替できない価値があります。その再生環境、つまりビデオディスク再生を行なうコンポーネントを作り続け、ディスク再生の楽しみを維持する機器を作り続けることは重要だと考えています。
私自身、キャリアのスタートはDVDプレーヤーの販売をするビジネスを行なうことでした。ですが、DVDプレーヤーのメーカーの撤退など悔しい思いをすることがありました。冗談半分ではありますが、個人的な思いとして「最後のビデオディスクプレーヤーを売る人になりたい」という考えがあり、マグネターでビデオディスクプレーヤーを作り続けたいのです。大げさな言い方になるかもしれませんが、光ディスクによる映像再生を楽しむ文化が続く限り、その再生環境をマグネターブランドとして守りたいと思っています。
日本での展開からおよそ2年が経過しました。日本市場での反応、手応えはいかがですか。
Shawn 非常に良好です。評論家の皆さまやHiViのような専門誌、専門媒体さまから高い評価をいただき、多くの賞も受賞しました。その結果としてブランド認知も向上し、販売も順調に伸びています。

事業部長のShawn Xueさん
史上最高のビデオトランスポートを目指すULTIMA
今回、ウィーンの「ハイエンド」ショウでワールド・プレミアされ、日本でもOTOTEN2026で参考出品されたULTIMA(ウルティマ)は、従来モデルとは大きく異なる製品ですね。
Shawn ULTIMAは、UDP800 MKIIやUDP900 MKIIのような、一般的なオーディオビジュアルファン向けの製品ではありません。究極のホームシアターを追求する熱狂的なオーディオビジュアルマニアに向けた「ハイエンド・ビデオトランスポート」です。

まさに超弩級のビデオトランスポートといっても過言ではないマグネターのULTIMA。ラテン語で「最終」を意味するULTIMAは、それが転じて、「究極の」あるいは「決定版」のニュアンスが込められている
なぜトランスポートなのですか?
Tian Pengさん(以下、Tian) ULTIMAは、アナログ回路を持たず、デジタル信号出力のクォリティの高さを徹底的に高めるチャレンジを行なった製品です。DAC回路を省くだけでなく、DAC回路にまつわる電源部やそれに付随する回路を一切搭載しないことで、極限まで純粋なデジタル信号の出力を獲得することを最大の目標としています。
当然ながらDACを搭載すると、アナログ領域での音の方向性が決まってしまいます。また、デジタル信号を2chD/Aコンバーターで受け取るユーザーやHDMI信号としてデジタルビデオ信号を再生しているユーザーは、いくら高度で贅沢なDAC回路を内蔵させても全くの無駄になりますし、品位の点で逆に不利になるケースもあります。
現実の使われ方として、オブジェクトオーディオという仕組みが使われるドルビーアトモスが高度なホームシアターの中心になる時代では、アナログマルチチャンネル出力をお使いになるケースは稀ですし、高度な2chオーディオユーザーであれば、そもそも優れた単体D/Aコンバーターをお持ちでしょう。
アナログ信号出力を使わないのであれば、DAC回路自体を排除することで、トータルパフォーマンスとして圧倒的かつ大幅なノイズ低減を果たせます。アナログ音声出力を内蔵することによる利便性よりも、ビデオディスク再生機としてのデジタル信号出力の「純度」を優先したのです。ULTIMAは、現実のホームシアター環境で使われる、デジタル映像とデジタル音声出力の性能を最優先した合理的な考え方で最高品位を追求したのです。

製品開発エンジニアチームを率いるハードウェア設計担当のTianPengさん
ULTIMAは、セパレート構成の筐体が特徴ですね。
Tian ULTIMAは、電源に徹底的にこだわりました。外観からおわかりになる通り、ドライブ+デジタル出力部から構成される「本体」と「電源部」のセパレートシャーシを採用しています。独立した電源筐体を備えた映像機器は非常に珍しい存在だと考えています。
電源部は、内部にはバッテリーを2つ搭載しています。片方が本体へのDC給電を行ない、もう片方がAC充電を行ない、DC給電が終わったら、役割を自動的に変えることを繰り返す仕組みで、本体は常にAC供給の電源からは切り離されており、電源のクリーンさとあわせて電源から回り込むノイズの影響を極限まで抑え込みます。
さらにバッテリー自体は発熱源ともなりえますが、その電源を本体から物理的に分離することで、熱の影響も低減できます。なお、バッテリー自体は電気自動車メーカー・BYD製の高効率かつ大容量仕様となっています。もともとBYDはバッテリーメーカーであり、ULTIMAには非常に優れたバッテリーとして採用しています。
デジタルトランスポートの品位追求に欠かせないクロックも、従来製品の10倍以上の精度を備えたミリタリーグレードの発振器を搭載していることも特徴のひとつです。少々細かい話になりますが、MCXO(Microcomputer Compensated Crystal Oscillator:マイコン補償水晶発振器)仕様の高精度クロックを搭載しています。従来のアナログ補償方式とは異なり、内部にデジタル温度センサーと専用補償アルゴリズムを用いて、リアルタイムで温度などを監視。温度変化によるクロック偏差を抑え、常に安定した高精度クロック動作の実現を目指します。

OTOTEN 2026の会場で参考出品されたULTIMA。写真は電源部の上に鎮座する本体の背面
HDMI出力についての技術的な特徴はありますか?
Tian ビデオトランスポートとして最も重要なHDMI出力回路には非常にこだわっています。映像系統と音声系統それぞれに対して、電源面でのノイズ対策を徹底しました。従来製品では搭載していなかったLDO(リニア電圧レギュレーター)によるノイズ対策も施しています。その結果、音声の品位向上を大きく果たしつつ、映像面での黒の表現力や色彩再現性も高まり、総合的な映像/音声の両面でのパフォーマンスの向上を追求しています。既存モデルを大きく超える映像/音声パフォーマンスの実現にご期待ください。
ハイエンド指向のビデオ・ディスクトランスポートは市場にもほとんど存在しません。なぜマグネターが「ハイエンド」ビデオトランスポートを作るのでしょうか?
Shawn 私たちにはその製品を作る技術力があります。作れる能力があるなら、最高峰の製品を作る責任、義務があると考えています。ULTIMAは、マグネター史上最高のビデオトランスポートとなることは間違いありませんし、他社を含めた「史上最高」のビデオ・ディスクトランスポートとなるべく、開発の最終段階として追い込んでいます。
ドライブメカニズムは、従来のソニー製から、パナソニック製へと変更されたそうですね。
Tian 品質、画質のパフォーマンス面でのメリットが非常に大きくありましたし、ドライブメカニズムの安定供給も考慮した結果として採用しました。このパナソニック製ドライブメカニズムは、SACD再生にも対応しており、UDP900 MKIIやUDP800 MKIIと同じディスク再生にサポートしていることをお伝えしておきます。現在、最終の画質/音声パフォーマンスの追い込みを行なっている最中で、音声面は当然として、画質面での品位向上にもご期待ください。

本体の端子は、非常にシンプル。LAN端子(RJ45)、2系統のHDMI端子、USB 3.0端子(TypeA)、同軸デジタル、バランス・デジタル(AES/EBU)、そして、電源部からの給電端子、10MHzクロック入力端子、制御用RS232端子となる
インタビューを終えて〜史上最高、世界最高のビデオ再生機の誕生を大いに期待する
今回のインタビューで最も印象的だったのは、マグネターが単なるプレーヤーメーカーではなく、「物理メディア再生文化を守る最後の砦」としての自覚を持っていることだった。映像ストリーミング全盛の現在、ユニバーサルディスクプレーヤー市場は決して大きな市場ではない。それでも新製品を投入し続ける姿勢には敬意を表したい。
一方で、日本市場は世界でも屈指の高画質志向市場である。音質面ではすでに高い評価を得ているマグネターだが、映像面においてはなお挑戦すべき領域が残されていると感じる。特に日本のAVファンは、単なるスペックや物量だけでは納得しない。信号処理技術や絵づくりの思想まで含めて製品を評価する文化がある。
今回発表されたULTIMAは、ドルビーアトモス時代の「ハイエンド・ビデオトランスポート」という新しいカテゴリーに挑戦した意欲作であり、並々ならぬ情熱が注ぎ込まれた製品だという。
だからこそ、ULTIMAが単なる高級ビデオトランスポートに留まらず、映像・音響の両面で「世界最高峰」と呼ばれる存在へと進化していくことを、期待せずにはいられない。ビデオディスクを愛するユーザーにとって、マグネターは今や数少ない希望のひとつなのである。
(取材・まとめ/HiVi編集部・辻 潔)

