この時代に、この映画が作られ、日本で上映されることに尊さを感じる。もっとも、物語の舞台は現代ではなく、「1991年のポーランド」だ。現代にしてしまうとSNSやスマホは不可避である。また第2次世界大戦に関連するテーマで、登場人物にその経験者を含む物語にしようとする場合、もう、歳月は流れに流れてしまったので、「時代劇」として創造していくしかない。そうしたなかで、この力作が生まれたのだと思う。

 繰り返すが、時代背景は「1991年のポーランド」。ざっと“民主化が具体的に始まっていた頃”と考えると物語がよりクリアに見えてくるかもしれない。主人公はホロコーストを生き抜いて(つまりユダヤ系)約50年ぶりに祖国へ戻った父と、ニューヨークで生まれてある程度の恵まれた毎日を送っている娘。いうまでもないことだが、アウシュヴィツ収容所はドイツではなく隣国のポーランドにある。

 この父娘が久々に会ったのはいいが(父にとっては帰郷、娘にとっては父の故郷への初訪問)、育ったところや時代背景が全然違うので、当初こそ息は本当に合っていない。ノンシャランこのうえない父に娘はかなり怒り気味だ。しかし一緒に旅をし、痛みを共有し、“血脈”を再認する。その過程に、我々が、いわば立ち会うことになるのだ。父には英国の俳優で「ナイト」の称号を持つスティーヴン・フライ、娘にはゴールデン・グローブ賞受賞経験のあるレナ・ダナムが扮する。原作はホロコーストを生き抜いた父を持つオーストラリアの作家、リリー・ブレットの「Too Many Men」。監督はホロコースト生存者の孫であるユリア・フォン・ハインツが務めた。

映画『旅の終わりのたからもの』

2026年1月16日(金)kino cinema新宿 ほか全国ロードショー

監督:ユリア・フォン・ハインツ 原作:「Too Many Men」 リリー・ブレット著
出演:レナ・ダナム、スティーヴン・フライ
2024/独、仏/英語、ポーランド語/112分/カラー/5.1ch/スコープ/字幕翻訳:渡邉貴子/原題:TREASURE
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
(C) 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAIKU FILMS

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