アンカーのプロジェクター?

 そう聞いて首を傾げる人が居てもおかしくないだろう(かくいう私がそうだった)。アンカーといえば、モバイルバッテリー大手として知られるなど、PC周辺機器メーカーとして認知されている。だが改めて同社ホームページを覗いてみると、同社のホームシアター向けプロジェクターのラインナップは5機種以上あり、「Nebula(ネビュラ)」というブランド名にて多角的に展開しているではないか。

 今回テストしたのは、そのトップエンドに位置付けられる「Nebula X1」だ。ステレオスピーカーとセットになった3ピース構成。私も初めて接したモデルだが、これが予想だにしない、侮れない実力を有していたのだ。今号のトム・クルーズ映画特集の一環としてUHDブルーレイ『オブリビオン』を観ながら、このノーマークだった(失礼!)プロジェクターのパフォーマンスをお伝えしたい。

画像1: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

DLP Projector
Anker
Nebula X1
¥449,900 税込

●光源:3色(RGB)レーザー
●光出力:3,500ANSIルーメン
●投写デバイス:0.47インチDMD
●デバイス解像度:水平1,920×垂直1,080画素
●表示解像度:水平 3,840×垂直 2,160 画素
●コントラスト比:5,000:1(ネイティブ)
●色域:BT.2020 色域110%カバー
●投写倍率:0.9:1〜1.5:1
●投写距離:80インチ/160〜260cm、100インチ/200〜330cm、120インチ/240〜400cm、150インチ/300〜500cm
●搭載 OS:GoogleTV
●CPU:クアッドコア ARM Cortex-A55
●GPU:ARM Mail-G52 MC1
●ストレージ:32Gバイト
●本体内蔵スピーカー:トゥーイーター5W×2、ウーファー15W×2
●接続端子:HDMI入力2系統(うち1系統eARC対応)、USB2系統(Type A、Type C)、ほか
●寸法/質量:本体・約W186×H246(ハンドル除く)×D282mm/約6.2kg、スピーカー部・約W265×H113(脚部除く)×D78mm/約1.5kg/台
●備考:3D対応、Wi-Fi5 準拠、Bluetooth5.1対応(SBC、AAC対応)
●騒音レベル:26dB
●問合せ先:アンカー・ジャパン(株) Eメール サポート support@anker.com

 

 

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クーポンコード:HIVI15OFF_WEB
使用期限:2025年1月16日(金) 23:59まで
※ Anker Japan 公式オンラインストア / アプリ限定
※ セール時併用不可
※ スピーカーセット / プロジェクター単品両方対象
※ お一人様につき、クーポンの使用回数は1回まで

 

5,000:1のコントラストを備えた3,500ANSIルーメンの4Kレーザー機

 まずはNebula X1のベーシックな特徴や仕様を大まかに解説しよう。本機はDMDパネルを使った4K表示解像度のレーザー光源モデルで、輝度3,500ANSIルーメン/コントラスト比5,000対1(ネイティブ)。レンズは14枚・オールガラスレンズ構成で、短焦点/光学ズーム機構を備え、最大300インチまで投写可能。OS(基本操作ソフト)はGoogle TVでネットコンテンツに本機だけで再生可能。HDRには、HDR10のほか、ドルビービジョンにも対応する。

 注目に値するのは、ユーザーにストレスを強いない「AI全自動スクリーン調整」機能。完全オートマチックで台形補正やフォーカス調整が可能だ。しかも最適位置で投影サイズを最大化してくれる。また最大25度の投写角度調節可能な電動ジンバル機構の内蔵も見逃せない。

 付属のサテライトスピーカーはL/Rそれぞれに4つのドライバーユニットを搭載(正面2基/側面1基/上面1基)。充電池内蔵で、接続はワイヤレス。さらに本体内蔵の2基のサブウーファーが「サブウーファーモード」時に起動して4.1.2構成のサラウンド音場を展開する仕組みだ。

 

幅約19cm、高さ約25cm(可動式ハンドルを収納した場合)、奥行約28cmのコンパクトボディでありながら、3,500ANSIルーメンの光出力とネイティブコントラスト比5,000:1を備えた4K映像を映し出す。曲線を巧みに使った外観デザインもプロフェッショナルの技を感じさせる

 

画像3: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

HDMI入力端子は、2系統の装備。HDMI2端子はeARC対応となり、外部のHDMI対応サウンドシステムとの連携も可能だ。電源はACアダプターから給電する仕様だ

 

画像4: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

本機の技術的なハイライトが、「U型レーザー光学エンジン」。RGBレーザー光源から発せられた光をU字を描くように内部で導くことで、光学エンジンサイズを半減しつつ、輝度を約15%高めて3,500ANSIルーメンを実現した

 

画像5: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

「U型レーザー光学エンジン」から導かれた光は、非球面レンズやED(超低分散)レンズなどのオールガラス14構成レンズで映像を投写する仕組み。メカニカルな絞りも内蔵されている

 

 

「映画」モードをベースに微調整。『オブリビオン』の世界を的確に描く

 

UHDブルーレイ
『オブリビオン 4K Ultra HD+ブルーレイ』
(ハピネットMM GNXF-2098)¥6,589税込
●片面2層
●映像:2160p、シネスコ、HDR10
●音声:ドルビーアトモス(英語)、ドルビーデジタル5.1ch(日本語)

DATA
『オブリビオン』Oblivion
●2013年アメリカ
●124分
●スタッフ:監督・製作・原作・ジョセフ・コシンスキー、脚本・カール・ガイダシェク、マイケル・デブリュイン、撮影・クラウディオ・ミランダ、音楽・M83、アントニー・ゴンザレス、ジョセフ・トラパニーズ、サウンド・デザイナー・Ren Klyce
●キャスト:トム・クルーズ、モーガン・フリーマン、オルガ・キュリレンコ、アンドレア・ライズブロー、メリッサ・レオ

『トロン:レガシー』(2010)で知られるジョン・コシンスキー監督が初めてトム・クルーズと組んだ2013年製作のSF大作。この相性の良さで『トップガン マーヴェリック』もタッグを組んだ。映画は、コシンスキー自身の原案をベースに、2077年の荒廃した地球の監視業務にあたる、ジャック・リーパー(トム・クルーズ)の奇妙な物語をクールに描く。撮影当時最先端だったソニーのシネマカメラCineAltaF65の高性能を活かした暗部表現と、緻密なサウンドデザインが大きな話題となった。2013年にBD(音声はDTS-HDMA5.1ch)が、2016年にはUHDブルーレイがリリースされた

 

 視聴にあたっては、自動調整も試したのち、より最適な条件で実力をチェックするべく、各種設置設定はすべてマニュアルで行なった。UHDブルーレイ『オブリビオン』のHDR10映像を視聴した映像モードは「映画(HDR10)」で、まずは全てデフォルト値でチェックしたうえで、映像パラメーターを確認していこう。音声はとりあえず本体内蔵スピーカーで再生する。設定メニューはたいへんわかりやすく、日本語表記も違和感なく、各種設定は調整しやすい。

 SFアクション映画『オブリビオン』は、敵対する「スカヴ」からの侵略を食い止めたものの、荒廃してしまった地球を監視する役割を担った、トム・クルーズ演じる元海兵隊司令官ジャック・ハーパーの物語。核兵器によって地表が荒廃したという設定のため、主なシーンで色鮮やかな描写がほとんどない。白・灰色(グレー)・黒が支配的で、映画前半で赤や緑、青の鮮やかな色が出てくる場面はわずかだ。

 そこで今回は、人物の肌色(フェイストーン)に重きを置きながら、コントラストや明るさを加減するとともに、ノイズリダクションを軸に調整を試みた。

 チャプター5、謎の発信音の所在を調査すべく、バブルシップに乗ってジャックが崩落した建物に向かうシーン。このシーンもほとんど色彩、色調がない。初期設定でのNebula X1は、顔の肌の質感の粗さと色が濃過ぎると感じられたため、メニューの詳細設定の以下の項目をそれぞれ次のように調整した。

「ブラックポイント」『50』→『62』
「コントラスト」『50』→『65』
「彩度」『50』→『47』
「DNR」『中』→『低』
「MPEG NR」『中』→『低』
「MEMC」『中』→『オフ』

 以上の調整によって肌の粗さが取れ、金属質の光沢感やコンクリートの崩れ落ちた風合い等がうまく出るようになった。なお、ここでの「MEMC」は動き応答性、「ブラックポイント」とは一般でいう「明るさ」と「コントラスト」が連動するものと思われる。

 ジャックの少し伸びた髭の蒼さ、バブルシップの風洞のクリアーさやそのステップ部の金属質がうまく出たし、地表や建物内の土っぽさや埃っぽさが稠密に再現されたように思う。

 また、放射能区域外の湖畔の隠れ家では、緑の木々の様子、汚れた本やステレオ機器、レコードの具合がリアルに伝わってきた。陽の当たっている部分と影の部分の陰影感、ジャックの着る青いフランネルシャツのチェック柄のディテイル等もきめ細かく再現された。

 それにしても、ここまでのテストで確認できたNebula X1の実力は大したものだ。『オブリビオン』のややクールな世界観とも絶妙にマッチしており、やや殺伐としたシーンの白やグレーの微妙なグラデーションが巧みに再現されている。特に砂漠と化した地表の様子と朽ち果てたエンパイアステートビルの表層、折れ曲がった鉄骨の様子、砕けたガラス片や建物内に体積した埃や塵の様子が生々しい。汗を掻いたジャックの顔色と薄汚れた感じがとても細やかに再現されていて驚いた。取材に同席した編集者とともに「これで充分に作品の世界観に没入できる」と異口同音に誉め称えたほどである。

画像7: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

設置は非常に簡単。メニューから「全自動スクリーン調整」機能を活用することでほぼワンタッチで画面の設置が可能だ。取材では、できるだけ最高の画質を得るべく、電気的補正が最小になるように手動で設置した。台形補正も行なっていない

 

映像モード(=画像モード)も豊富。今回は、映画再生において最もベーシックなモードと思われる「映画(HDR10)」を基本に映像イコライジングを行なった

 

「ブラックポイント」と「コントラスト」「彩度」で、まず明るさとシャープネスと色味を調整したうえで、「DNR」と「MPEG NR」でノイズリダクションの効き具合をアジャスト。動き補完機能「MEMC」はオフにした

 

 

別体型サテライトスピーカーを使ったサウンドシステムの音質もお見事

 ここまでの視聴では前述した通り、内蔵スピーカーを使ったが、以降は付属のサテライトスピーカーをワイヤレス接続して4.1.2のサラウンド再生で実施した。まず観たのはチャプター9、スカヴに捕らえられ、真っ暗闇の中でリーダーのマルコムの尋問に合うシーンだ。

 名うてのプロジェクターでも難儀するこの真っ暗なシーンでも、Nebual X1は黒浮きし過ぎず、そうかといって暗部がベッタリ潰れず、ほぼペデスタル(最暗部)といってよいシーンを絶妙に再現した。一言で云うと、立派な絵である。背景の暗部が若干浮き気味ではあるが、マルコム扮するモーガン・フリーマンの縮れた頭髪や髭の様子、サングラスをして葉巻を燻らせながら喋る表情がほぼしっかり見て取れる。汗と煤等で薄汚れたジャックの肌のディテイルも克明だ。背景にぼんやり映っている構造物の様子もわかる。

 いやはや、このクラス、この価格帯のプロジェクターでここまで再現できるとは驚いた。

 では、サウンドパフォーマンスはどうだろう。別体型サテライトスピーカーを前方に置いた視聴室常設のスピーカースタンド上に設置。ずしりと重く、筐体は非常にしっかりしている。質量は1台約1.5kgだ。

 ドルビーアトモス対応は謳っていないが、しっかりイマーシブサウンドだ!

 このシーンの閉塞感、立体的な暗騒音、隙間風をうまく再現している。セリフの明瞭度も高く、シーンのフレーム外の音の移動、ドローンの飛行音の流れもスムーズ。本格的なサラウンドシステムとは同等とはいえないが、贅沢を言わなければ、このサテライトスピーカーでも作品の世界観にどっぷり浸れるのが確認できた。これまた音声面でも驚かされるとは、まったく想定外だ……。

画像10: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

独立したサテライトスピーカーを付属したプロジェクターというのが本機の画期的な部分でもある。取材は、まず本体だけで音を再生し、さらに視聴室常設のスピーカースタンドを使って、サテライトスピーカーを組み合わせた

 

画像11: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

4.1.2再生のイメージ。センタースピーカーレスの4.1chシステムに反射型スピーカー2基を加えた格好だ

 

画像12: 『アンカー Nebula X1』×『オブリビオン』驚きの新星プロジェクター。緻密な映像と音響に仰天【厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生】

本体は2ウェイ+パッシブラジエーター2基を搭載。サテライトスピーカーは、正面にフルレンジユニット2基、サイドと天面に楕円型ユニットを配置。駆動アンプも合計で最大200Wアンプと強力だ

 

 

プライスバリュー抜群。Nebula X1の実力に驚愕

 チャプター16は、ドローンの襲撃を受けて敵味方の総力戦となる場面。縦横無尽に機関銃や爆発音が鳴り響くが、サブウーファーレベルを少し上げてもまだ迫力や臨場感がほしいところではある。他方、撃ち合いの立体感は十二分に感じ取れた。

 宇宙ステーション「テット」に侵入し、計画を遂行しようとするチャプター18は、おびただしい数のジャックたちのクローンが眠る場面で、明暗の調子がコントラスト感豊かに再現された。本作のハイライトといえるシーンだが、不気味な静けさを醸し出すテット内の暗騒音と、クローンの入ったカプセルの明るさが象徴的な場面で、絵と音に見入った。

 さてもNebula X1。どうしてどうして、思いもよらぬ優れたマシンであった。今年の本誌グランプリや今季のベストバイにはエントリーが間に合わなかったが、ひょっとしたらひょっとしていたかも……。そのぐらい驚きのポテンシャルを有した、非常にプライスバリューの高いプロジェクターであると断言してペンを置くとしよう。

 

リファレンス機器
●スクリーン:キクチ Dressty 4K /G2(120インチ/16:9)
●4Kレコーダー:パナソニックDMR-ZR1

 

【Stereo Sound ONLINE 読者限定】「Nebula X1」が割引価格で購入できるコード付き

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使用期限:2025年1月16日(金) 23:59まで
※ Anker Japan 公式オンラインストア / アプリ限定
※ セール時併用不可
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>本記事の掲載は『HiVi 2026年冬号』

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