今春発表されたオーラのステレオパワーアンプLCP 1とペアとなる、待望のコントロールアンプLCC 1がデビューとなった。本品は金属加工に定評のある新潟県の燕三条でハンドメイドされる。
LCC 1のコンセプトは、ピュア・アナログ思想。それはアナログ増幅回路とリニア電源によるもので、MOS-FETをL/Rにそれぞれ2組、合計8個のパワーデバイスで駆動するアンバランス構成アンプ+特注トロイダルトランスで完成されている。
メイン基板はディスクリート構成の表面実装仕上げで、上部リッドから吊り下げられており、基板裏には磁気シールドを図った銅箔シートが貼付され、ノイズ対策も万全だ。リッド素材はピュアカーボン製で、振動対策を意識した内部コンストラクションとなっている。6.3mmアンバランスと4.4mmバランスの2系統を備えるヘッドホンアンプは、フルバランス構成の贅沢な仕様だ。
フロントパネルはアルミ押出し材で、中央にはブランドロゴをあしらったステンレス製パネルが勘合されている。このクロームメッキ処理ステレンス材こそオーラのアンプの象徴であり、本機ではフロントの一部と天面後方に用いられている。入力セレクターは押しボタンとLEDによる視認性の高いものだ。

写真(奥)LCP 1、(手前)LCC 1
Power Amplifier
Aura LCP 1
¥396,000 税込
●型式 : パワーアンプ
●出力 : 75W+75W(8Ω)、150W(BTL接続時、8Ω)
●接続端子 : アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)、他
●寸法/質量 : W430×H71×D332mm/8.2kg
Control Amplifier
Aura LCC 1
¥495,000 税込予価 10月発売
●型式 : コントロールアンプ
●接続端子 : アナログ音声入力3系統(RCA×2、XLR)、フォノ入力(MM)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、ヘッドホン出力2系統(6.3mmアンバランス、4.4mmバランス)、他
●寸法/質量 : W430×H71×D332mm/6.5kg
●問合せ先 : (株)ユキム TEL. 03(5743)6202
S/Nが非常に優秀。音楽性が高く、有機的な質感にも注目
今回組み合わせたステレオパワーアンプLCP 1も、同社の伝統といえる1組のMOS-FETによるシングルプッシュプル出力段で構成される。ヴィシェイ抵抗、ニチコンMUSEをはじめとした高品位パーツを多用している点はLCC 1と同様だ。BTL接続によるモノーラル・パワーアンプとしても使用可能な設計である。
LCC 1とLCP 1間の接続をアンバランス接続とし、まずはQobuzのハイレゾ音源を使ってBowers & Wilkins 802 D4スピーカーを鳴らした。一聴して感じるのはS/Nが非常に優秀で、瑞々しさや透明感を抱かせる音の佇まいを有していること。いかにも日本製という感じの律儀さと真面目さを感じさせる音だ。

LCC 1はMM対応のフォノ入力、アンバランス2系統、バランス1系統の合計4系統の入力端子を装備、プリ出力はアンバランスとバランスの各1系統が備わる。端子間隔が広く、極太コネクターのケーブルも無理なく接続できるだろう

LCP 1は、シンプルなステレオパワーアンプでありながら、75W+75Wの出力を叩き出す。背面のスイッチでBTL接続によるモノーラルアンプとして使用可能で、その場合は150Wに出力となる。天板側に増幅基板などの主要基板を吊り下げるように取り付け、効率的な放熱システムを構成している

LCC 1コントロールアンプの内部。底面から内部を撮影している。天面に基板が取り付けられているのがわかるだろう。LCC 1はアンバランス構成のコントロールアンプであるが、ヘッドホンアンプはフルバランス構成で、4.4mmバランスと6.3mm標準の2端子の装備となる
そうかといって融通のきかない生真面目過ぎる音ではない。サマラ・ジョイのヴォーカルは心地よい温度感と湿り気を湛えた質感で、有機的なミュージカリティを感じさせる。4管が並ぶアンサンブルとリズムセクションの距離感もほどよく、ステレオイメージの見通しは抜群によい。
上原ひろみのHiromi's Sonicwonderは、機敏な反応とトランジェントのよさを感じる。分解能やワイドレンジ感でアピールする傾向でなく、楽器の鳴りのよさ、音楽の躍動感をしっかり伝えてくれる音だ。ベースのグルーヴ感、速いパッセージでメロディを紡いでいくピアノ、キーボードの乗りがいい。
802 D4に屈することなく十全にドライブする様子は、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲で感じ取れた。バイバ・スクリデの独奏ヴァイオリンの旋律を滋味深く再現しながら、それを後ろから支えるオーケストラの重厚かつスケールの大きな伴奏を豊かな響きをもって展開してくれたのだ。
LCC 1とLCP 1の接続をバランス接続にしてみると、基本的なトーンや質感再現は変わらずも、エネルギーバランスがより安定し、どっしりと腰の座った表現になる。私だったら、このバランス接続を常用セッティングとするだろう。
この接続のまま、BD『TAR/ター』をステレオ再生で視聴。主人公が教え子のチェリストを追って廃墟に入るシーンでは、暗騒音の気配の再現に冒頭記したS/Nのよさが効いている。映し出された情景の音を誇張せず、ありのまま再現している印象だ。セリフの実体感はいうにおよばず、スプレー薬を吹く音、楽譜をめくる音など、微細な効果音が画面にピタリと寄り添っているのが実感できた。
結論
スリムなスピーカー、そして大型テレビと組み合わせたい
ミニマリズムを標榜するオーラの製品は、存在感を主張しない。オーナーはそうしたコンセプトを理解して、シンプルなシステムを組むべきだろう。大型直視型ディスプレイとスリムなスピーカーの組合せがマッチしそうだ。
>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』




