Bowers & Wilkins(B&W)から、「707 Prestige Edition」(¥330,000、ペア、税込)スピーカーが発表された。同ブランド史上もっともコンパクトなスペシャル・エディションで、専用のサントス・グロス仕上げをまとった限定モデルとなる。9月末の発売予定で、日本国内向けの入荷は1,000ペアを予定している(2025年12月までの入荷は約400ペアの見込み)。

型番からもおわかりの通り、B&Wの人気スピーカー「707 S3」をベースにした特別仕様だ。そもそも、日本のオーディオファンの間では、伝統的にコンパクトで高性能なスピーカーが人気が高いという。
B&Wの700シリーズは、2006年に発売された「CM1」を原点にしている。このモデルはコンパクトなサイズと音の良さで人気を集め、日本国内で6,000〜7,000ペアもの販売実績を達成した。2014年には「CM1 S2」に進化、こちらも2,500ペアを超える販売数を実現している。現在でも、日本国内で一番人気が高いのはシリーズ最小サイズの707 S3とのことで、新製品の707 Prestige Editionはこういった日本のオーディオファイルの嗜好に合わせて生み出されたモデルということになる。
なおB&Wではこれまでも「801 D4 Signature」に代表されるような特別仕様のモデルをリリースしている。それらは、「トゥイーター・オン・トップ」テクノロジーを採用するハイエンド製品をベースにしたもので、707 S3のように箱型スピーカーをベースにしたラインナップは初めてだという。「Signature」ではなく「Prestige」の称号が与えられているのもそのためのようだ。

特別仕様としての変更点は、まずエンクロージャーの仕上げにある。これまでの700シリーズ(グロス・ブラック仕上げ)はMDF材に9回のクリアラッカー塗装行っていたが、707 Prestige Editionでは、MDF材に突板を貼り、さらに12回の塗装を繰り返すことにより、深く美しく輝く光沢を実現している。これによりエンクロージャーが堅牢になり、その結果、特別な外観にふさわしいクリアネスと深みを持ったサウンドを実演できたと、ディーアンドエムホールディングスの澤田龍一さんも解説してくれた。
またツイーターには、上位モデルと同じ開口率の高いグリル・メッシュが組み合わせられている。これは「801 D4 Signature」「805 D4 Signature」で初採用されたもので、これまで以上に開放的で、解像度と空間表現の両方に改善をもたらすそうだ。スピーカーターミナルは「700 Series Signature」と同様、真鍮削り出しにニッケルメッキを施した端子を採用する。

今回、新製品発表会で707 Prestige Editionの音を体験させてもらった。マランツ「SACD 10」と「MODEL 10」の2台使い(バイアンプ駆動)という豪華なシステムで、ベースモデルの707 S3、707 Prestige Editionの順番で音を鳴らしてもらう。
JAZZトリオでは、707 S3も充分にステージの奥行きが感じられるし、ピアノの細かな指のタッチはなどもきちんと聴き取れる。低域も130mmウーファーとは思えないほどの量感を備えている。
続いて707 Prestige Editionにつなぎ変えてもらう。こちらでは音が華やかな印象になり、ピアノやギターの音色がより立って、細やかな再現が楽しめる。バイオリンとピアノによる楽曲でも、ディテイル再現に優れたていねいな音色だ。
女性ボーカルでは、ステージの広がりの再現、演奏の残響の再現といった情報が細やかに表現され、声の定位も明瞭。Uruが歌う、映画『雪風 YUKIAKZE』の主題歌「手紙」も声の伸び感、かすれたニュアンスなどの表現が秀逸で、思わず引き込まれてしまった。

707 Prestige EditionはW165✕H300✕D284mm(グリル、端子部含む)というコンパクトな本体ながら、本格的なハイファイサウンドを楽しめる貴重なスピーカーだと感じた。コンパクトで高品質なシステムをお考えの方は、一度707 Prestige Editionの音を聴いてみてはいかがだろう。

