麻倉怜士 × 山之内

Lumina Ⅰはクォリティとバランスの良さが際立つ(麻倉)

── 新企画『Audio & Audio Visual Anatomy』は、同じブランド、同じジャンルの製品を、同じ環境、同じコンテンツで視聴し、それぞれの製品の個性や特徴を、解剖学(Anatomy)的に把握していく連載企画です。第1回となる今回は、イタリアの人気スピーカーブランド、ソナス・ファベールの小型ブックシェルフ2ウェイスピーカー4機種にフォーカスします。まずはLuminaシリーズのLuminaⅠとLumina Ⅱ Amatorの2機種をお聴きいただきました。CDとQobuzで音楽コンテンツを再生しました。

山之内 「Lumina(ルミナ)」はラテン語で「光」を表す言葉で、この名前がシリーズの音の特徴をよく表しています。つまり、明るくて音がよく見える。どちらもそのコンテンツが何を聴かせたいのかを分かりやすく提示してくれます。

麻倉 Lumina Ⅰ は小さな見た目からは想像できないクォリティの高さとバランスのよさ、そして大袈裟な化粧をしない素顔の美しさがよく表れていたと思います。一方、Lumina Ⅱ Amatorには「イタリアの美」とでも言うべきこのブランドらしい音色の美しさが加わり、ソナス・ファベールというブランドの懐の深さや引き出しの多さを改めて認識しました。Lumina Ⅰ で聴いた「チーク・トゥ・チーク/情家みえ」(Qobuz)は、歌い出しの“Heaven〜♪”と2コーラス目の“Heaven〜♪”で歌のニュアンスを変えているところまで細かく再現されていましたね。このサイズでも音像のエッジが立っており、音楽本来のサイズ感を表現できていることに感心しました。

山之内 ビッグ・バンド編成の「I Won't Dance/ジェーン・モンハイト、マイケル・ブーブレ」(CD)で聴けた、非常に適切な温度感に感心しました。管楽器は温まってくると音が大きくなり、鳴りっぷりが良くなります。そういった変化まで上手に聴かせてくれました。自分がライヴ会場にいるかのような空気感の再現も見事でした。小型スピーカーだからといって、音楽の表現も小ぶりになるといったことがありません。

 ソナス・ファベールは「よく歌うスピーカー」を作り続けているブランドだと思っていて、それがかけがえのない美点と感じていますが、人によっては「ちょっと歌いすぎではないか」と思う人もいるかもしれません。しかしスピーカーも一種の楽器ですから、「聴かせるぞ」というスタンスが伝わると聴き手も楽しいものです。その点は両モデルに共通する魅力ですね。そのうえで、Lumina Ⅱ Amatorは同じブックシェルフ型でもLumina Ⅰよりエンクロージャーやウーファーのサイズが大きいので、より低音が充実しており、細部の描写も繊細。さらに踏み込んで音楽に接したいという方にはLumina Ⅱ Amatorをおすすめしたいところです。

麻倉 「I Won't Dance」は、ジェーン・モンハイトとマイケル・ブーブレとのデュエット曲ですが、両モデルともモンハイトとブーブレのヴォーカルの質感の違いを分かりやすく鳴らしていました。Lumina Ⅰのように小さなスピーカーでここまでニュアンスが聴けるのは凄い。Lumina Ⅱ Amatorでは、これに彩度の高さが印象として加わります。まるで色数が増えたかのように感じます。

山之内 そうですね。もうひとつ両モデルに共通して言えるのは、音が窮屈にならないところ。「ラヴェル:道化師の朝の歌/バレンボイム指揮ウェストイースタン・ディヴァン管弦楽団」(Qobuz)のピチカートには弾力感と開放感があり、小さくまとまることがない。そして「モーツァルト:夜の女王のアリア/サビーヌ・ドゥヴィエル」(CD)を聴くと、ソナス・ファベールはつくづく「歌」が得意なスピーカーブランドだと感じます。とりわけLumina Ⅱ Amatorでは歌の説得力が一段階増して、この歌い手のコロラトゥーラを堪能することができる。スピード感や解像感を重視するものが多い現代のスピーカーにあって、ソナス・ファベールのスピーカーはそれだけでなく声の温もりやボディ感、ソプラノの声の密度感などを実にうまく聴かせてくれます。

麻倉 「夜の女王のアリア」を聴き比べると、やはり音場の広がりはLumina Ⅱ Amatorのほうが豊かに感じられますね。しかもただ音場が広いだけでなく、この楽曲の音楽的な快感や情緒性も伝わってくる。

山之内 そうですね。Lumina Ⅰも音場が狭いわけではありませんが、Lumina Ⅱ Amatorはより開放感があります。バスレフポートが底面に設けられていることもあり、壁の影響を受けにくいこともあるかもしれません。

麻倉 外観の美しさもこのブランドの魅力ですが、Lumina Ⅱ Amatorのグロッシーな仕上げは特に目を引きます。その外観が表す通り、音もグロッシーです。艶があり、明るく輝いているような印象がある。

画像1: ソナス・ファベールの小型2ウェイ4機種を徹底比較。「共通する魅力」と「個性の違い」とは【同一ブランド、同一ジャンルの兄弟モデル徹底解剖】

今回の取材では、Sonetto G2シリーズに用意されている別売スピーカースタンド(Stand Sonetto G2、¥148,500 ペア税込)を用いて4機種を再生した。その他の使用機器は次の通り。

● 有機ELディスプレイ:パナソニックTV-65Z95A
● ネットワークトランスポート:デラN1A/3
● CD/SACDプレーヤー:デノンDCD-SX1 LIMITED
● ユニバーサルプレーヤー:マグネターUDP900
● プリメインアンプ:デノンPMA-SX1 LIMITED
● スイッチングハブ:バッファローBS-GS2016/A

 

 

表現の巧みなLumina Ⅱ Amatorは映像作品との相性も抜群(山之内)

── Lumina ⅠとLumina Ⅱ Amatorで聴いた映像コンテンツの音の印象はいかがでしたか?

麻倉 今回は65インチの有機ELディスプレイと組み合わせて再生しましたが、小型スピーカーゆえに存在感が強すぎず、感覚的に「映像から音が出ている」という印象を醸し出す絶妙なバランスでした。また、2chの音楽再生に優れたスピーカーは、必ずしも映像再生にフィットするというわけではありません。しかしこの両モデルは映像とも親和性が高い。『To Save a Child』というチャリティライヴBDでの「クロスロード/エリック・クラプトン」は、彼のギター音色が伸びやかで気持ちよく、歪みやヴィブラートがしっかり音楽に活かされていることが実感できます。Lumina Ⅰはそういった音楽の勘所をとてもよく押さえている印象。加えてLumina Ⅱ Amatorは、フェス会場の空気感までも生き生きと再現していました。

山之内 このサイズのスピーカーの導入を検討している方が気になるのは、低音の量感や重さがどれくらい出るか、ということではないでしょうか。クラプトンのライヴでは、Lumina Ⅰはベースラインそのものは明確に再現されていますが、キックドラムも含めてやや軽め。Lumina Ⅱ Amatorではその印象がガラッと変わって、ベースやドラムのリズム隊が演奏をグイグイ牽引しているように感じました。

麻倉 一方で映画作品『グレイテスト・ショーマン』(UHDブルーレイ)のチャプター10、レベッカ・ファーガソン扮する歌姫ジェニー・リンドに、ヒュー・ジャックマンとザック・エフロン演じる、興行主のバーナムとフィリップが声をかけるシーンを観ると、Lumina Ⅰの再生も魅力的でした。登場人物それぞれの思惑が、音からもよく伝わってくるんです。画面の真横にスピーカーを置くメリットを実感できます。チャプター11のジェニー・リンドによる歌唱シーンでは、コンサート会場の広さもよく再現されていました。このシーンではLumina Ⅱ Amatorの色彩感の豊かさが活かされていたと思います。俳優たちの声の個性の描き分けがより明瞭で濃厚。「画音一致」ぶりが、より際立っていました。

山之内 確かに。Lumina Ⅱ Amatorのほうが、声が分厚く感じられました。ただ、声がクリアーで聴き取りやすいのは両モデルに共通するソナス・ファベール製スピーカーの美点だと思いました。発音がにじまず、声の浸透力がとても強い。

麻倉 映画音響は、D/M/S(ダイアローグ=声、ミュージック=音楽、サウンドエフェクト=効果音)で構成されますが、両モデルはDとMだけでなくSの再現性も素晴らしかったですね。UHDブルーレイの映画『フォードvsフェラーリ』のチャプター22、フォードGT40の走行シーンでそれが実感できました。Lumina Ⅰで観て、なるほどサウンドデザイナーの意図はこうだったかと、よく伝わってきます。Lumina Ⅱ Amatorではそこに濃密な空気感が加わり、自分も映画の世界観に取り込まれてしまう、そんなイリュージョンに導いてくれました。

山之内 『フォードvsフェラーリ』で再生したのは、主人公がテスト走行中のGT40がクラッシュして大爆発するという、衝撃的な映像と音が繰り広げられるシーンですが、タイヤのスキール音やエンジン音のテンションの高さ、温度感の表現が巧みです。特にLumina Ⅱ Amatorではクラッシュする寸前、ブレーキがフェードする場面。事故に繋がる現場の緊張感、そして死と隣り合わせの恐怖感が大きく増しました。

麻倉 音楽、映画。どんなコンテンツにおいても、それぞれの魅力や聴かせどころを的確に拾い上げてくれる。どちらもそういうスピーカーであることは間違いありません。

 

画像: 写真(左)Lumina Ⅰ、写真(右)Lumina Ⅱ Amator

写真(左)Lumina Ⅰ、写真(右)Lumina Ⅱ Amator

Lumina Ⅰ
¥148,500(ペア)税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、120mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:84dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W148×H280×D220mm/4.5kg
●カラリング:ウォルナット、ウェンゲ、ピアノブラック

2020年に登場したソナス・ファベールの新コンセプト製品群「Lumina」は、シンプルながらイタリアン・メイドらしい美しい仕上げとソナス・ファベール流儀のサウンドを両立しながら、手頃な価格を実現。大ベストセラーとなったことは記憶に新しい。本機は、その最小モデルで、29mmトゥイーターと120mm口径ウーファーを幅148mmの小型ボディに収めた。MDF構造の本体に前面バッフルに7層構造プライウッドを用いている。バスレフポートは底面から前面に放射する仕組み

 

Lumina Ⅱ Amator
¥272,800(ペア)税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2.6kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W180×H304×D263mm/5.8kg
●カラリング:レッド、ウォルナット、ウェンゲ

2024年にLiminaシリーズのスペシャルグレードとして伝統の「Amator(アマトール)」の名を冠した2モデルが加わった。ブックシェルフモデルが本機で、日本未導入のLumina Ⅱをベースに、前面キャビネットを中央部で木目を45度の角度であわせたうえで美しいグロス塗装で仕上げている。外装以外にもユニットやクロスオーバーも特別仕様となり、Luminaシリーズ開発後に備わった同社の最新スピーカー技術が盛り込まれている。なお、トールボーイ型のLumina Ⅴ Amator(¥638,000 ペア税込)も用意されている

 

 

 

格調の高さを感じるSonettoシリーズ。Sonetto Ⅱ G2は特に音色が美しい(麻倉)

── 続きまして同じくソナス・ファベールのSonettoシリーズから、Sonetto ⅠとSonetto Ⅱをお聴きいただきました。

山之内 Sonetto G2はLuminaよりも新しいシリーズです。測定やシミュレーションの精度が従来よりも高くなり、設計エンジニアの世代も若くなっているのが特徴で、より現代のハイファイスピーカーらしい思想を基につくられたシリーズと言っていいでしょう。両モデルの音の違いは、先ほど聴いたLuminaシリーズの2機種ほどは大きくなかったように私は感じました。もちろん、ドライブユニットやエンクロージャーのサイズの差に由来する音の違いはあるけれども、方向性としてはほぼ同じだったと思います。

麻倉 一聴して感じたのは音の格調の高さです。「情家みえ」では、左右スピーカーの中央に立って本人が歌っているような自然な空間感がしっかり描かれ、実に素晴らしいと思いました。その良さは、SonettoⅠ G2でもSonetto Ⅱ G2でも共通していましたが、Sonetto Ⅱ G2になると、音像と音場の再現性により余裕が感じられた印象です。

山之内 Sonettoシリーズの2機種は、私はどちらも音離れの良さが非常に印象に残りました。ピアノやウッドベースの音がスムーズに立ち上がるんですね。特にピアノの音色の美しさは素晴らしい。分析的にいえば、ピアノの和音の響きのバランスやウッドベースの低域の伸びについては、やはりサイズの大きいSonetto Ⅱ G2のほうが豊かではありますが。

麻倉 確かに、Sonetto Ⅱ G2のピアノに関していえば、どのコンテンツでも音色の美しさが際立っていました。『グレイテスト・ショーマン』のチャプター11の歌唱冒頭でのバックのピアノも素晴らしかった。

山之内 そうですね。微妙な話なのですが、エンクロージャーが大きく共振しているわけではないのに、音に木の質感が感じられるんです。ピアノもウッドベースも木で作られた楽器ですから、スピーカーのかすかな響きが絶妙に絡み合い、音色の美しさに繋がっているのかもしれません。

麻倉 「ジェーン・モンハイト」では、男女の声の違いがよりよく描き分けられていました。しかも2人の歌手がきっちりセンターに定位するのではなく、わずかに左右に並んでいるように音像を定位させていますが、そうしたSonetto Ⅱ G2は音像の描き方がより明確でした。スピーカーのキャラクターやグレードの違いは、こうした精細な音楽表現の違いに表れます。ソナス・ファベールのような本格スピーカーで音楽を聴く面白さは、このような微細な表現をまったく疎かにせず、明確に描くところにあると私は思っています。

山之内 かすかな音のにじみや歪みを徹底して軽減するように様々な技術を結集した結果が、はっきりと音に表れていますね。金管楽器のエネルギー感が力強くダイレクトに伝わるのは、音の純度が高いからでしょう。ただ、「バレンボイム」ではLuminaシリーズで特徴的だった、ラヴェルの音楽に特有の明るさや煌めき、光沢感のような表現はやや落ち着いた印象でした。

麻倉 輝きというよりは、耳を凝らすといろいろな楽器の音色が聴こえてきて、その総和としての合奏を実感することができるともいえますね。解像力とリニアリティの高さ、そしてレスポンスの早さが高次元で実現できているからでしょう。

山之内 よりハイファイスピーカー的な鳴り方を指向している、といってもいいかもしれませんね。

麻倉 Sonetto Ⅱ G2で印象に残った部分としては、弱音の美しさも挙げておきたい。「夜の女王のアリア」は、声の強靭さや尖り具合が凄かった。それは両モデルに共通していました。コロラトゥーラを正確に再現するための弱音からの情報量がしっかり備わっている。

山之内 この演奏は古楽器を使用しているのですが、力強いソプラノと立ち上がりの早い弦楽器の音色がぴたりと揃うことで勢いのある再生が実現しているわけです。

 

画像: 写真(左)Sonetto Ⅰ G2、写真(右)Sonetto Ⅱ G2

写真(左)Sonetto Ⅰ G2、写真(右)Sonetto Ⅱ G2

Sonetto Ⅰ G2
¥363,000(ペア)税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、125mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2.1kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W200×H377×D304mm/8.4kg
●カラリング:ウォルナット、ウェンゲ、グロスブラック

Sonettoシリーズの末妹が本機。シリーズ最小モデルではあるが、ユニットやキャビネット、クロスオーバーなどのあらゆる要素でソナス・ファベールの最新技術がふんだんに盛り込まれている。スピーカーユニットは全て新設計であり、とりわけ低域ユニットをよく見ると振動板の外周部5箇所をカットして、花弁形状として使っていることに注目したい。これは振幅時の振動モードを拡散することで干渉を防ぐ加工で、最高峰「SUPREMA」の開発で培われた技術を活用した格好だ

 

Sonetto Ⅱ G2
¥473,000(ペア)税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、165mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:3.1kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W227×H414×D355mm/10.4kg
●カラリング:ウォルナット、ウェンゲ、グロスブラック

高さは414mm超と、2ウェイスピーカーとして余裕あるキャビネットに165mmウーファーユニットを搭載した、Sonett G2シリーズの中核機。スピーカー端子はバイワイヤリング接続に対応している。バスレフポートを底面に備えたボトム・バスレフ方式を採用している。この方式では低音のエネルギーを受け止める底面の素材や形状などが音質に直結するが、Sonetto G2シリーズでは、石灰石パウダーを主成分とする特製のコンクリートベースを底面に使うことが一大特徴である

 

 

「よく歌うスピーカー」の伝統が確かに受け継がれていることを音で実感(山之内)

麻倉 Sonetto Ⅱ G2では「エリック・クラプトン」のヴォーカルのニュアンスもよく出ていると感じました。ジャンルに関わらず、とにかく声が素晴らしいと思います。『グレイテスト・ショーマン』のチャプター10では、傍若無人なバーナムと小心なフィリップ、猜疑心の強いリンドといった登場人物の声の描き分けがLuminaシリーズよりもさらに明確に表現され、言葉の裏にある各人の思いまで透けて見えるようだった。チャプター11での歌の場面では、クレッシェンドからフォルティシモへ駆け上がるダイナミズムに、ミュージカル映画の楽しさを感じさせてくれました。

山之内 『フォードvsフェラーリ』は、クルマが発する多種多様なノイズの鳴らし分けが見事でした。効果音の表現力は、Sonetto Ⅱ G2は、今日聴いた他の3機種よりも圧倒的に上手だと思います。

麻倉 やはりソナス・ファベールの最新技術が結集しているモデルですからね。なお、LuminaシリーズとSonettoシリーズにはいずれもセンタースピーカーがラインナップされています。その音をホームシアターのサラウンドでさらに深く味わえる環境が整っていることはたいへん喜ばしいですね。

 

声の再現性の高さはさすがソナス。総合的な音の響きを尊ぶ姿勢に感動(麻倉)

── 最後に4機種を聴いた総括をお願いします。

麻倉 すべてに共通しているのは「声」の再現性の高さ。振動を抑えてユニットの出音だけを聴かせようとする近代のスピーカーとは明らかに違う、木も含めたトータルな響きを尊ぶという流れから突き詰められた、ソナス・ファベールならではの音づくりには感動しました。

山之内 クールに分析的に鳴らすのではなく、聴きどころをちゃんと聴かせてくれる。それはLuminaやSonettoだけでなく、ソナス・ファベールのスピーカーすべてに言えることです。そして創業者のフランコ・セルブリン氏がElecta Amatorを発表したのは1987年のことで、すでに40年近い年月が経過していますが、思えばこのモデルから一貫してソナス・ファベールは「よく歌うスピーカー」をつくってきました。セルブリン氏は同社を去り、人も環境も変わりましたが、その哲学が脈々と受け継がれているのは音を聴けば分かります。

麻倉 先ほどお話ししたように、今日聴いた2シリーズはどちらもマルチチャンネル展開が可能です。ソナス・ファベール=オーディオ用というイメージをお持ちの方は少なくないと思いますが、AVでもこのブランドらしい音づくりは活かされており、なおかつ映像コンテンツの再生に必要なスピード感や情報量もしっかり備えている。環境に合わせて最適なモデルを選べば、上質な映像体験、音楽体験をもたらしてくれることは間違いありません。

 

取材を終えて

Lumina Ⅱ Amatorが奏でるDolce Vita的な音色美に惚れた

── 麻倉怜士

画像2: ソナス・ファベールの小型2ウェイ4機種を徹底比較。「共通する魅力」と「個性の違い」とは【同一ブランド、同一ジャンルの兄弟モデル徹底解剖】

ソナス・ファベールの小型4機種の比較は、個々の製品の違い、魅力が明確で、本企画の発進にふさわしい取材結果となった。ベーシックモデルにこそ、そのブランドの本質が色濃く表れる。今回視聴した2ラインは、ソナス・ファベールの基本的美質を備えながら、個性が際立っていた。音楽再生はもちろんのこと、AV再生でもソナス・ファベール的な文脈で、コンテンツを彩る。個人的にはLumina Ⅱ AmatorのDolce Vita(甘い生活)的な音色美に惚れた。

 

音色の美しさで聴き手を魅了しつつ忠実再生を目指すソナス・ファベール

── 山之内正

画像3: ソナス・ファベールの小型2ウェイ4機種を徹底比較。「共通する魅力」と「個性の違い」とは【同一ブランド、同一ジャンルの兄弟モデル徹底解剖】

音色の美しさで聴き手を魅了するのは現代のスピーカーの主流と少し違うのかもしれないが、独自の美的感性を活かしつつ忠実再生を目指すという設計思想が最近のソナス・ファベールのスピーカーには感じられ、そこが強みになっている。LuminaとSonetto G2もその例にもれないが、今回、後者はよりハイファイ志向が強いことがわかった。一方のLuminaは姉妹機同士で個性に差があるので、好みに合わせて選びやすい。

 

 

視聴したソフト

●Qobuz(ハイレゾ/ロスレスストリーミング)
「チーク・トゥ・チーク/情家みえ」(192kHz/24ビット)、「道化師の朝の歌/バレンボイム指揮 ウェスト・イースタン・ディヴァン管弦楽団」(44.1kHz/16ビット)

  

●CD
「I Won't Dance/ジェーン・モンハイト、マイケル・ブーブレ」、「夜の女王のアリア/サビーヌ・ドゥヴィエル」

 

●BD
「クロスロード/エリック・クラプトン」(48kHz/24ビット/2chリニアPCM)
※『To Save A Child』より

 

●UHDブルーレイ
『グレイテスト・ショーマン』チャプター10、11、『フォードvsフェラーリ』チャプター22 
※UHDブルーレイ2作品は、ドルビーアトモス音声をUDP900で2chダウンミックス再生

 

Qobuz/CD音源で再生した楽曲はこちら

 

 

>本記事の掲載は『HiVi 2025年夏号』

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