VICTOR

4K Projector
ビクター DLA-Z5
¥880,000 税込
● 型式:4Kプロジェクター
● 投写デバイス:0.69インチD-ILAデバイス×3
● 解像度:水平4,096×垂直2,160画素
● 投写レンズ:1.6倍電動ズーム・フォーカス
● レンズシフト範囲:上下70%、左右28%(ともに最大値)
● 光源:BLU-Escent Laser
●光出力:2,000ルーメン
● コントラスト:40,000:1(ネイティブ)
● 接続端子:HDMI2系統、ほか
● 消費電力:280W(待機時0.3W・エコモード時)
● 騒音ノイズ:23dB(LDパワー最小時)
● 寸法/質量:W450×H181×D479mm/14.6kg
● 問合せ先:JVCケンウッドカスタマーサポートセンター TEL. 0120-2727-87
ビクターのDLA-Z5は、独自の0.69インチ・ネイティブ4K解像度の「D-ILAパネル」とレーザー光源「BLU-Escent」を搭載しながら、体積比で35%の小型化を実現した4Kプロジェクターのエントリーモデル。設置性も向上し、これからプロジェクターで100インチ超の大画面を実現しようとする人にとっての有力な候補である。そのDLA-Z5を使って大画面でアニメを見てみようというのが今回の趣旨。ふだんはDLA-V90Rを使っているぼくから見た映像の違いについてもまず触れておこう。
筐体を新設計としただけではなく、レンズや回路基板なども一から設計し直したこともあり、その映像はずいぶんと感触が違う。まず解像感の高い映像になった。ソフトな感触でありながら、きめが細かく密度の高いDLA-V90Rの映像とは違って、明瞭で高精細、カチっとしたクリスピーな印象が強まっている。フィルム映像の柔和な感触よりはデジタル制作の最新の映画に合う傾向で、そこには好き嫌いも分かれると思うが、アニメのようなくっきりとした映像にはよく合う画調だと感じた。
それでいて薄型テレビのような高精細だが硬い調子の映像ではない。ニュアンスが豊かでアニメのような平板な絵になりやすいソースでも、映像効果によるフォーカス感の違いをきちんと描き分ける、立体感のある大画面映像になるのはさすがビクターの最新モデルだ。輝度は2,000ルーメンとなるが、輝度ピークの輝き、深みのある暗部までしっかりと描き、ハイコントラストで見応えのある映像を楽しませてくれる。

ビクター製プロジェクターでは、スクリーンごとの偏差を補正する「スクリーン補正」という機能が実装されている。あらかじめ決められたスクリーンの番号を設定することで、スクリーン自体が持つ色味を加味してフラットな映像表現を目指す。ここではキクチDressty 4K G2の「211」を入力した

4Kデバイスを使って4K表示に徹するDLA-Z5は、UHDブルーレイの4K&HDR映像と極めて相性がよい。今回は、ビクター独自の映像モード「Frame Adapt HDR」を使って再生。本文にある通り、取材時点では、このモードをスタート点として、アニメ映像信号に最適な映像イコライジングを行なう予定だったが、調整なしで全く問題なかった
上級機に迫る4K&HDR映像。DLA-Z5で『鬼滅の刃』の凄みを実感
では、UHDブルーレイの『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』を観てみよう。本作は4K&HDR収録(フォーマットはHDR10)なので、「Frame Adapt HDR」モードで、4K/24p&HDR映像を再生している。また、HiVi視聴室リファレンススクリーンである「キクチ Dressty 4K G2」に合わせてスクリーン補正なども行なっている。
UHDブルーレイ
『劇場版「鬼滅の刃」-無限列車編-』4K Ultra HD Blu-ray 完全生産限定版
(アニプレックス ANZW-16001)¥7,700 税込
まずは炭治郎と嘴平伊之助が下弦の壱の鬼と戦う場面を見たが、列車から見える森の様子もよく見える。暗い夜の森でもそれぞれの肌の色の違いがよくわかる。水の呼吸によって出現する波しぶきのようなエフェクトは鮮やかな色で、時折見える刀が光を反射する様子もよくわかる。4Kプロジェクターのエントリーモデルとはいえ、決して安価な製品ではないが、アニメのような相性の良いコンテンツだと上級機に迫る映像を楽しめる。
そして、突如現れた上弦の参の鬼、猗窩座と炎柱・煉獄杏寿郎との戦いでは、動きのキレもよく、ハイスピードで展開する激しい戦いを鮮明に描いた。煉獄杏寿郎が流す血の色の感触もリアルで、凄惨なシーンではあるが、命をかけた戦いの凄みがよく出ている。
戦いが終わった後、昇り始める日光の光の加減も豊かな表現だ。明るくなりはじめた空のニュアンスもよく出ていて、その場面の美しさと哀しさが表れている。

BDなどの2K&SDR映像をマスターモニターライクに、演出なしの状態で再生したいときは「ナチュラル」もしくは「FILMMAKER MODE」がふさわしいが、今回は、SDR映像をより色鮮やかに描き出す「ビビッド」モードを活用して、BDのアニメーション作品の色再現を鳥居さん好みにフィットさせる試みを行なった

「ビビッド」モードは、配信コンテンツやゲームなどをターゲットにした映像モード。それをベースに今回は様々な調整を試した結果、「明るさ」を『-15』、「色のこさ」を『25』にした(ともに初期値は『0』)。色の鮮やかさを積極的に引き出す調整を施した

鮮鋭感を調整する「MPC(Multiple Pixel Control)」設定では、2K映像からの4Kアップコンバート処理で眠くなるのを防ぐため「グラッフィックモード」を『強』としたうえで、さらに斜め線のジャギー(ガタガタ)を抑える目的で「スムージング」項目を『5』とした
セルアニメの金字塔『マクロス』での絵の具の感触すら実感する強烈映像
次に『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』を「Frame Adapt HDR」モードで観た。今観ても驚く渾身の作画の凄みをほぼ全て引き出した、35mmフィルム制作のアニメーションからのUHDブルーレイのお手本と言っていい作品である。
UHDブルーレイ
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 4Kリマスターセット (特装限定版)』
(バンダイナムコフィルムワークス BCQA-0020)¥9,900 税込
まずはなによりタイトルバック。暗い闇に無数の星が光っている。すでにそこにマクロスの艦影があることがわかる。艦影にわずかに浮かぶ光と背景の星との光り方の違いが、宇宙空間の奥行と艦の巨大さを感じさせる。やがて艦首から光が当たってその姿が現れるが、その様子が極めて丁寧に描かれているのがわかる。
その後の戦闘機の発進シーンも圧巻の作画が楽しめるが、DLA-Z5は描き込みの全てを精密に描く。UHDブルーレイも凄いが、それを全て描き出したビクターDLA-Z5も凄い。色再現も明るく鮮明になっているが、セル画らしい絵の具のタッチが残っているのもいい。作画は現代の作品では信じられないほどの入念さだが、現代的なデジタル映像ではなく、フィルムの感触が残っているのもいい。
ヒロインであるリン・ミンメイのコンサートシーンもレーザー光による演出の光は輝度ピークをしっかりと伸ばして、見栄えのある映像になっており、まさしく作り手がイメージした映像が蘇っているかのような感触になる。
なお、取材では、必要に応じてアニメならではの映像を堪能できるよう、画質調整も行ないリポートする予定であったが、4K&HDR収録のUHDブルーレイソフトならば、「Frame Adapt HDR」モードで問題なしという結論になった。
「ビビッド」モードから調整。2K&SDR作品から好みの色を探る
今回の特集のテーマは「UHDブルーレイでにほんアニメ」を観るというものだが、当然ながら、それ以外のフォーマットでもアニメ作品を観ることがあろう。ということでテレビアニメなどを前提として2K&SDRの映像をDLA-Z5でチェックしてみる。
DLA-Z5には、SDR映像用には、「フィルム」、「ナチュラル」などがあり、さらに「ビビッド」という新しいモードが加わった。この「ビビッド」モードで現代アニメの映像をより見応えのある映像に仕上げていこう。
視聴したタイトルは『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』のブルーレイ。マクロスシリーズの最新作の劇場公開版だ。主にクライマックスでのワルキューレのコンサートと戦闘機VF-31AXの戦いが交錯するシーンを確認している。「ビビッド」モードは色彩をより明るく鮮やかに見せるモードだが、アニメでは肌の色が変わってしまうなど、気になるところもいくつかある。そのあたりをどう考えるかがポイントだ。
BD
『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!! / 劇場短編マクロスF ~時の迷宮~ 特装限定版』
(バンダイナムコフィルムワークス BCXA-1756)¥9,680 税込
「ビビッド」モードに対するビクターの考え方は不変だと思うが、精細感やディテイル方向に舵を取ったDLA-Z5では、以前に見たDLA-V900Rの「ビビッド」モードとは若干感触が異なる。より精細になった映像に合わせて、色の明るさや鮮やかさもよりくっきりとしたものになっているようだ。海外のフルCGのアニメや家庭用ゲームの映像などに、より相性の良さが高まったと感じるイメージである。ここではその良さを活かす方向で調整した。
精細感やディテイル感を高める「グラフィック」は『強』。もともとくっきりと精細な印象の映像が、さらにカチっとした明瞭さで再現される。リンギング(輪郭強調)等の悪さはほとんど感じないが、少し映像が硬い印象があったので、「MPC」項目内の「スムージング」を『0』→『5』とした。「色温度」は「ビビッド」モードの初期値の『7500K』のままでよしとしたが、肌の色が変わる一番の大きなパラメーターなので、そこが気になる人は『6500K』にしてもいいだろう。
このほかは、「明るさ」は『0』→『−15』へ。「色のこさ」を『0』→『25』へと変えた。設定通りの正しい色ではなく、より見栄えのする色を再現できる方向に調整した格好だ。
『〜マクロスΔ〜』では歌姫であるワルキューレは5人組のユニットで、イメージカラーも5色。デジタル作画ならではというか、色数が実に多いのが特徴だ。その豊かな色が一目で認識できるように、今回は鮮やかさを高めた調整を行なったが、これで派手すぎる映像になってしまわないのは、DLA-Z5本来の実力がしっかりしているからだろう。微妙な調整がやりやすいし、パラメーターの最大値を試しても破綻するようなことがないのも使いやすい。
このおかげで、ワルキューレたちのそれぞれのキャラクターの視認性が高まるだけでなく、戦闘機によるバトルでもその奇抜な動きを追いやすくなり、バトル・アクションが存分に楽しめた。
マクロスは時代とともに映像表現がさらに進歩していて、3DCGを駆使したメカやロボットの描写はますます情報量が増えているしスピードも速い。乱戦になると敵と味方の区別がつきにくいほどだが、色を乗せていくことでその識別がしやすくなってくる。しかも、背景となる宇宙がきちんと黒く沈むので鮮やかな色が映え、派手な映像になるどころかむしろ見やすくなるのだ。
ここまで調整をしたうえで、当初好ましいと感じた「ナチュラル」モードの画質を再び確認すると、色は忠実だがやや薄味な印象になる。ぼくの考えでは、アニメ作品の色はきちんと設定されているのだから、好みで変えていいものではない。単に色を変えるような調整は邪道とも感じるし、否定的な意見を持つ人もいるだろう。
しかし、アニメだからこそ、もっと自分の観たい色彩で、より大胆な色で楽しみたいとする方向性ももちろんあってもよいだろう。DLA-Z5には、そんな楽しみ方ができる器の大きさ、基本特性の優秀さがある。
幸せにもユーザーとなった人はアニメに限らず自分の色、自分の映像美を追求してみてほしい。

取材ではパナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1を使ってUHDブルーレイとBDを再生した。スクリーンはHiVi視聴室常設のキクチDressty 4K G2(120インチ/16:9)を用いた
>本記事の掲載は『HiVi 2025年夏号』






