オレオレ詐欺師に騙された老婆が、お金を取り戻すべく犯人のアジトに突撃する。

 シンプルすぎるほどシンプルなストーリーである。が、細かな起伏に富んでいて、「だます方」と「だまされた方」と「ふりまわされる周りの人々」の人間模様もしっかり描かれているから1分も退屈しない。犯人が「なぜ老人をだますのか」についても弁解がましくなく加害者の口から説明される。ハラハラさせられたと思ったら、ワクワクさせられて、ホッと一息つくところもしっかりある。笑顔のままスクリーンをあとにできる作品なのだ。

 主人公・テルマは93歳のおばあちゃん。ちょっと人生の壁にあたっている孫のことを気にかけている。ある日、警察から孫が不祥事を起こした、保釈金としていくらいくら必要だとの電話が来た。電話口には孫も出て、いつもとは声が違う感じがしたが、尋ねてみるとどうやら体調を崩しているらしい。大切な孫のためにとテルマは大金を投函してしまう……が、こちらから孫に連絡してみるとまったく普段通りで、そんな事実はないという。自分は騙されたのだ、とテルマは理解するのだが、ここからの反撃がすごい。「こちとらダテに長く生きてるわけじゃない、なめんじゃないわよ」ということだ。

 テルマと絶妙コンビを組むのは、介護ホームにいる旧友のベン。演じるのは、あの『黒いジャガー』や『ルーツ』に出ていたリチャード・ラウンドトゥリーだ。かつて文字通りパンサーのような眼光の鋭さを誇った彼の、すっかり円熟した、だが依然としてかっこいい「おじいさんぶり」もこの作品の大きな見どころ。彼は2023年10月に逝去したので、これは最晩年の姿ということになる。

 テルマ役は、ジャズ・ファンにも知られる1960年のブロードウェイ・ミュージカル『ジプシー』にも登場したジューン・スキッブが扮する。とてもおもしろいおばあちゃん像を生き生きと演じているが、このテルマさんにはモデルがいて、それはジョシュ・マーゴリン監督の祖母であるそうだ。

映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』

6月6日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

監督・脚本:ジョシュ・マーゴリン
出演:ジューン・スキッブ、フレッド・ヘッキンジャー、リチャード・ラウンドトゥリー、パーカー・ポージー、クラーク・グレッグ、マルコム・マクダウェル
2024年/アメリカ・スイス/英語/99分/シネスコ/5.1ch/カラー/原題:Thelma/日本語字幕:種市譲二
配給:パルコ ユニバーサル映画
(C) Courtesy of Universal Pictures

公式サイト
https://www.universalpictures.jp/micro/Thelma

This article is a sponsored article by
''.