井土紀州監督作『痴人の愛』の、DVDリリースを記念した舞台挨拶が5月9日(金)、池袋の新文芸坐で行なわれ、主演の奈月セナと井土紀州監督の両名が登壇、作品にまつわる想い出話を披露していた。

さて、舞台挨拶は上映後の21時20分過ぎからスタート。ナオミを演じた奈月は、劇中のラスト、真っ赤な衣装で行方をくらましたナオミがフラッと劇場に立ち寄った、という雰囲気の少し露出も多めのピンクのドレス姿にて登場。会場からの大きな声援に、笑顔で応えていた。

舞台挨拶ではまず、司会より本作(痴人の愛)の映画化への経緯について聞かれた井土監督は、「もともと谷崎作品が好きで、ずっと(映像化の企画を)温めてきたんですけど、前作『卍』が好評だったこともあり、制作会社さんに“ぜひ、次も谷崎作品で”というオファー受け、実現した形になります」とコメント。

そこで求められたのは、これまで幾多の女優が演じてきたナオミを演じる21世紀のミューズであり、今回、監督をはじめ製作陣のお眼鏡に叶ったのは、今日も登壇している奈月セナ、となる。そのナオミを演じることについて聞かれた奈月は、「みなさんから、ナオミにぴったりですと言っていただいたのですが、当初は、(ナオミの性格が)自分とはあまりにもかけ離れていたので、悩みも大きかったです。まずは、原作を読み込んでみましたけど、100年も前の時代で、あの男女が存在していたことに衝撃を受けましたし、なおさら、ナオミを私が演じていいのかっていう不安も大きくなってしまいました」と、正直な感想を吐露していた。

しかしながら、実際の演技は素晴らしく、中でも物語に転機を与える“馬になれ”のシーンを絶賛する司会の言葉を受け、素直に「うれしいです」と安堵の表情を見せていた。
続いて、原作のエッセンスを活かしながらも、現代風な脚色を施した点について聞かれた監督は、「原作そのままを映像化するのはね、中々に難しい面がありますので、現代風にバシッとやる方がいいよっていうことになったんです。譲治とナオミの関係性についても現代風にしてみたり、劇中劇の構造をとる、という形にもしてみました」。
そして今回、卍に続いて脚本を担当した小谷香織氏についても話が及び、監督は「小谷さんは卍の時は結構、乗ってたんですよ。けど、痴人の愛は、原作を読んでうーんって悩んじゃって。要は、女が男に頼り切っていていいのか、ということで。そこについては彼女がいろいろと考えてくれました」と、仕上がりを称賛していた。
そんな現代風の解釈を含めた新たなナオミ像について聞かれた奈月は、「そうきたかって思いましたね」。しかし、それをどう演じるのかには悩んでいたそうで、監督と相談した結果渡された「Wの悲劇」のDVDが、大きなヒントを与えてくれたという。「三田さんの立ち姿を見て、腰に手を当てるのにも、(傲慢さを出すには)順手ではなくて逆手だっていうことに気付いて。そこからナオミの人物像が少しずつ見えてくるような感覚がありましたね。その後、衣装合わせの時に、奇抜というか派手なものが多かったので、これがナオミなんだと思い、(役を)掴むことができた! と感じました」と、役作りの経緯を述懐していた。

監督も「ナオミって一番堂々としていて、女王様でなければいけないので、まずは型――傲慢なぐらいな女性の立ち方など――をやってもらうようにして、その後で内面を充実させてもらおうと考えたんです。奈月さんは勘がいい方なので、DVDをお渡しして、もう次の本読みの時には、会場に堂々と入って来られたので、あっ(ナオミを)掴んだなと思いましたね」と、奈月の感受性の良さをほめていた。
話は変わり、印象に残ったシーンを聞かれた二人は、「譲治がカレーを食べさせてくれるところです。譲治役の大西さんが実際に人参を切っているんですけど、(撮影が長くなって)こんなに小さくなるまで切り続けているんです。その姿がもう、脳裏に残っています」(奈月)、「やはり、最初の馬になれ、のところですね。この作品の見せ場でもあるので入れ込みすぎてしまって、その後の濡れ場ではもう、魂が抜けたみたいな感じになっていましたよ」(監督)と、振り返っていた。
話も大いに盛り上がり、楽しい時間もあっという間で、最後に二人から、「昨年の11月に池袋シネマ・ロサさんで上映が始まって、半年経ってまた、池袋に帰ってくることができました。これもずっと観て下さったみなさまのお陰です。本当に感謝を述べたいと思います。ありがとうございました」(監督)、「約6ヵ月のロングラン。みなさまのお陰でまた池袋に戻ってくることができました。本当にうれしいです。今年の花見の時期には、桜を見ながら痴人の愛のラストシーンを思い浮かべていました。それだけ、私の人生に残っている作品でもあります。今日からDVDも発売されましたので、これからも作品を愛していただけるとうれしいです。今日はありがとうございました」と、それぞれの感謝の言葉を以て、記念の舞台挨拶は終幕となった。

DVD『痴人の愛』商品情報
【発売日】2025年5月9日(金)
【価格】¥4,180(税込)
【映像特典】
・予告編
・フォトスライドショー
発売元:レジェンド・ピクチャーズ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
(C)2024「痴人の愛」製作委員会
●「痴人の愛」 公式サイト
https://www.legendpictures.co.jp/movie/chijinnoai/
●「痴人の愛」 公式X
https://x.com/naomi_2024x
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