最小限といえるセリフの数、ごみごみしたクラスルームと時に不気味なまでに澄み切ったカナダ・カルガリーの大自然との対比、「ディア・ハート」など古き良き時代のポップスの採用(アンディ・ウィリアムスではなく、ロジャー・ミラーのヴァージョン)など、異彩を放つ描きが続出し、それが深みを生む。じっくりと画面に向かい合いたい作品だ。
主人公は3人の高校生。主に最初に描かれるのは気心の知れたカイルとコルトンが共に時間の流れを楽しんでいるかのような風景だ。が、最後の時は突然やってくる。そしてある日、コルトンはホイットニーという少女の書いた日記帳を拾う。彼女は捜索願を出されている状態だった。そこから物語はコルトンとホイットニーの間のそれへと移行する。この若さにして喪失や現状に対する違和感の苦みを知ってしまった少年少女が、それでもどうにか、この世から離れずに過ごしていく毎日。黒猫や黒犬が準主役のように存在感を放つのも見どころだ。あと、私にとっては、「峡谷」の大きさ、広さがなんともいえない怖さにつながった。
16ミリフィルム撮影による作品で、監督はグラハム・フォイ、撮影監督はケリー・ジェフリー。出演はジャクソン・スルイター、マルセル・T・ヒメネス、ヘイリー・ネス、カレブ・ブラウ、シエナ・イー等。
映画『メイデン』
4月19日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督・脚本:グラハム・フォイ 撮影:ケリー・ジェフリー 編集:ブレンダン・ミルズ 美術:エリカ・ロブコ 録音:イアン・レイノルズ プロデューサー:ダイヴァ・ザルニエリウナ、ダン・モントゴメール
出演:ジャクソン・スルイター、マルセル・T・ヒメネス、ヘイリー・ネス、カレブ・ブラウ、シエナ・_イー
原題:The MAIDEN 日本語字幕:上條葉月 提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
[2022年/カナダ/英語/カラー/16mm/ヴィスタ/117分]
(C) 2022 FF Films and Medium Density Fibreboard Films.