Qobuzの高品位をフルに引き出したい。その志に応える、2本の優秀LANケーブル
音質に優れ、オーディオ再生と相性のいい音楽配信サービスQobuzの正式ローンチにより、ネットワークプレーヤーの活躍の場は大きく拡がったが、同時に、その重要性が見直されているアイテムがある。そう、LANケーブルだ。
ルーター/ハブとネットワークプレーヤー/ネットワークトランスポート間を結び、データの送受信という重責を負うことになるため、単にデータを正確に伝えるだけでなく、徹底したノイズ対策が不可欠。その善し悪しで最終的な音質が大きく変わってしまうことになる。
技術的にもインピーダンスの安定性、ワイドな周波数帯域、ケーブル端子部の低クロストーク性能、低減衰特性、確かなシールド効果、導体毎の伝送速度の均一化などなど、LANケーブルに求められる難題が多岐にわたり、その一つ一つをクリアーしていくことが最終的なパフォーマンスに直結するというわけだ。
オーディオ、オーディオビジュアル関連の各種ケーブルを手がけるサエクは、こうした技術要素を取り込んだ高品質のLANケーブルの開発に意欲的だ。今回はスウェーデンのケーブルブランド、スープラと共同開発したSLA-500と、サエクのハイエンドラインSTRATOSPHERE(ストラトスフィア)シリーズとして誕生したSTRATOSPHERE SLA-1の2モデルを用意して、それぞれのQobuz再生のサウンドを検証してみたい。

写真(左)STRATOSPHERE SLA-1、(右)SAL-500
LAN Cable
SAEC
STRATOSPHERE SLA-1
¥176,000(2m) 税込
●型式:カテゴリー6A規格対応LANケーブル
●導体:PC-Triple /EX
●絶縁材:フッ素樹脂
●インピーダンス:90Ω(1kHz)
●端子:テレガートナー製金メッキ端子
●ケーブル径(mm):φ9.5
●ラインナップ:1m(¥132,000 税込)、1.5m(¥154,000 税込)
SAL-500
¥25,300(1.8m) 税込
●型式:カテゴリー6規格対応LANケーブル
●導体:OFC AWG22
●シールド:アルミニウム箔シールド+錫メッキ銅網組シールド
●インピーダンス:100Ω
●ケーブル径(mm):φ6.5
●ラインナップ:0.3m(¥15,730 税込)、0.7m(¥17,380 税込)、1.2m(¥20,460 税込)、3.0m(¥30,580 税込)、4.0m(¥35,200 税込)
●特注対応:0.5mに付き¥4,620
●問合せ先:サエクコマース(株)TEL. 03(3588)8481
気張りなく開放感に富んで、伸びやかな音を聴かせるSLA-500
まずSLA-500だがスープラのオリジナルOFC導体の採用が大きな特徴で、ロスのない安定したデジタル伝送を追求している。またケーブルの構成、絶縁体とシース(被覆)、端子部など、音質に強く関わる部分には長年の経験で培ったサエクとスープラ両者の技術、ノウハウを投入しているという。
ケーブルのシースはメッシュ編込みタイプで、ケーブル自体もしなやかで、扱いやすい。端子部は透明なモールド製として、ケーブルとの境目には、“SAEC”の金文字を刻んだ黒色の保護用熱収縮チューブでカバーしている。
試聴は山中湖ラボのシステムで行ない、バッファローのハブBS-GS2016/AとリンKLIMAX RENEW DS間とを繋いだ。楽曲は「海を見ていた午後/ハイファイセット」、「スカイフォール/アデル」、「ホテル・カリフォルニア/イーグルス」、「花束を君に/宇多田ヒカル」などを再生している。
そのサウンドは気張りのない、穏やかな音調で、開放感に富んだ伸びやかな聴かせ方だ。低域の力強さや空間の拡がりを必要以上に主張せず、あくまでも自然体で、ベース、バスドラムが軽快に響く。宇多田ヒカルの声は息づかい、高音のビブラートの描写が生々しく、独特の揺れ感も丁寧に描き出してみせた。
「海を見ていた午後」はアコースティックギターの優しい響きがスムーズに浸透し、そこに透き通った山本潤子の歌声が重なり、癒しを感じるような、なんとも馴染みのいい空間が作り出された。透明感溢れる彼女の声といい、その背景に拡がるコーラスの緻密さといい、このS/N感の良さ、清々しさはLANケーブル、SLA-500によるところが大きい。

豊富な情報量で躍動する音こそ、STRATOSPHERE SLA-1の大きな価値だ
続いてSTRATOSPHERE SLA-1は、銀と銅の複合導体となるPC-Triple C/EX、絶縁材にフッ素掛脂を採用した高級ケーブルだ。PC-Triple C/EXは、一般的な銅素材導体よりも伝送速度が速く、オーディオ用のデジタル信号伝送には格好の素材だという。端子はテレガートナー製の金メッキ仕様。インピーダンスは90Ω(1kHz)、ケーブル外径は9.5mmと太い。
LANケーブルとしては高級グレードであるが、個性を強く主張せず、ニュートラルな音調で全帯域にわたって、厚みのある音が気持ちよく吹き上がる。スモーキーな香りが伴なうアデルの歌声も、その魅力を素直に引き出し、語りかけるように歌うパートでも声が痩せず、明瞭度が高い。
「ホテル・カリフォルニア」の12弦ギターによるイントロでは、目の前の空間に、きらびやかで温かい響きスッと放出され、空気の層が幾重にも重なって、奥行方向にストレスなく拡がっていく。ベース、ドラムスの大振幅の信号は躊躇なく一気に吹き上がり、空間に放出される。このあたりの表現力は、絶対的な情報量の余裕があればこそ。音の出口がいかにも広い。
厚みのある音像がスッと立ち上がり、しなやかに躍動し、立体感溢れる空間を作り上げる様子を目の当たりにすると、高級LANケーブルの大きな価値を認めないわけにはいかない。相当高価なケーブルではあるが、この音を体験すると、後戻りするのは正直難しい。Qobuzのパフォーマンスをフルに引き出したい、そんな高い志を持った方におすすめしたい。

↑サエクが近年積極的に導入を進めているPC-Triple /EX導体を用いた「本格LANケーブル」がSTRATOSPHERE SLA-1。太く硬めのケーブルでありやや扱いに慎重さが必要になるかもしれないが、その効果は絶大。RJ45端子はテレガートナー製の金メッキ端子で、信頼性十分だ
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