驚異の音質改善効果を体感。Qobuzはここまで高音質だった!

 2024年10月、ハイレゾ&ロスレス音楽ストリーミングの本命と目されるQobuzが、日本で正式にサービスを開始した。音楽再生の歴史を振り返ると、1877年にエジソンが発明した蓄音機に始まり、1948年のLPレコード、1982年のCD、1999年のSACD、そしてデジタルファイルへと進化を遂げてきた。そして現在、ストリーミングサービスは、ダウンロードデータの再生と並び、最終的な音楽再生ソースとなる可能性が高いと僕は考えている。

 ストリーミングサービスやダウンロードデータを、ネットワークプレーヤー/トランスポートで高音質に楽しむためには、家庭内ネットワーク環境の品質も軽視できない。具体的には、同一ネットワークに繋がる他の機器から伝わるノイズへの対策が求められる。

 そこで今回は、巷で大きな反響を呼んでいるシナジスティックリサーチのオーディオグレードのネットワークスイッチ(ハブ)「Ethernet Switch UEF(※)」と、オーディオ用ルーター「Network Router UEF」を試す。

画像: 写真(左)Ethernet Switch UEF、(右)Network Router UEF

写真(左)Ethernet Switch UEF、(右)Network Router UEF

Switching Hub
Synergistic Research
Ethernet Switch UEF

●型式:スイッチングハブ
●接続端子:LAN端子5系統(RJ45)
●寸法/質量:W250×H67×D150mm/2.6kg
※編集部註:Ethernet Switch UEFは、取材・記事執筆後に、Ethernet Switch UEF MKII(¥628,000税込)にモデルチェンジしました

 

Network Router
Network Router UEF
¥726,000 税込

●型式:ネットワークルーター
●接続端子:LAN端子5系統(RJ45)
●寸法/質量:W250×H67×D150mm/2.9kg

●問合せ先:アイレックス(株) TEL. 042(312)2887

 

 

余分なネットワーク通信を遮断する「2重ルーター」設定を簡単に実現

 シナジスティックリサーチは、1992年にアメリカで創業されたオーディオメーカーで、エレクトロニクス機器からケーブル類のアクセサリーまで、幅広い製品を展開している。その一端を紹介すると、クリーンパワーサプライ「Galileo PowerCell SX」、アクティブアース「Active Ground Block SX」、アクティブ型オーディオボード「Tranquility Pod」、電源/ライン/USB/LANなどの端末向けにノイズフィルター効果を持たせた「UEF Performance Enhancer」などがある。

 さらに、ルームトリートメントアイテムやインシュレーターもラインナップされており、これらの技術を活かしたRoonサーバー「Voodoo」も展開している。

 Ethernet Switch UEFは、8ポートのRJ45有線LAN端子を搭載したオーディオグレードのネットワークスイッチだ。筐体には航空機グレードの高品質なアルミを削り出して使用し、天板とインシュレーターにはドライカーボンを採用。さらに、背面のアース端子を利用し、同社が販売する「Active Ground Block SX」や「Ground Block」と接続することで、ノイズの削減も可能となっている。

 大きな特徴の一つが、UEF(ユニファイド・エナジー・フィールド)テクノロジー だ。これは、Active Ground Blockなどで開発された“EMセル技術”を基にしたノイズ低減手法で、デジタル、電源、アナログ基板などで発生する異なる電磁界を「差動電磁界の誘導結合」によって制御し、音の雑味を排除する仕組みである。

 Network Router UEFは、5ポートのLAN端子を持つオーディオグレードのルーターだ。Ethernet Switch UEF同様のUEFテクノロジーを搭載した高品位なネットワークスイッチとしての機能に加えて、「ネットワーク環境をオーディオ専用にセパレートする」という、いままで類似した製品が存在しない画期的なネットワークルーターだ。

 使用方法としては、通常1台設置されるルーターの下流にNetwork Router UEFを繋ぎ『2重ルーター』環境を構築し、そこにネットワークプレーヤー/トランスポートやミュージックサーバーなどを接続する。

 一般的なネットワーク環境では、ルーターは1台だけが使われる。そのルーターでパソコンやスマホ、タブレットに加え、冷蔵庫や洗濯機といったIoT家電など、ありとあらゆるネットワーク機器に対してIPアドレス(ネットワーク上の場所を示す値)がふられる。そしてそのネットワーク間のアクセスが頻繁に行なわれ、ネットワーク上での負荷が増す。具体的には、ある機器がそれ以外の機器に一斉に問合せを行なう「ブロードキャスト」という通信が頻繁に発生するのである。

 Network Router UEFを使って『2重ルーター』の環境を作ると、オーディオ専用の独立したネットワーク環境が構築され、負荷の少ない状態で音声データをネットワークプレーヤー/トランスポートまで送り届けることができる。

 なお、2重ルーターの設定は、高機能な家庭用ルーターやネットワークスイッチの管理画面で設定変更することでも可能である。だが専門知識が必要となるため、一般ユーザーには難しい。Network Router UEFの利点は、プラグ・アンド・プレイ(=正しくケーブルを繋ぐだけで)で簡単に設置できる点にある。ある程度のネットワーク関連の知識があれば、高度な専門知識なしで、オーディオ向けの最適なネットワーク環境を構築できるのである。ただし、余計な通信を遮断する仕組みであるため、スマホ等で機器を操作する場合は、無線LANのアクセスポイントをNetwork Router UEF配下に追加する必要がある。

 

画像1: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

スイッチングハブEthernet Switch UEFとルーターNetwork Router UEFの正面からの外観は同一。航空機グレードのアルミニウム削り出し素材をベースに、天板とインシュazレーターにドライカーボンを用いている。幅25cmで筐体自体はコンパクトだ

 

 

「オーディオ用ハブ」の大効果で表現力、感情伝達力が大幅アップ

 試聴を始める前にお伝えしておくと、ネットワークインフラの品質向上による音質改善効果には、大きく分けて三つの段階があると認識している。まず高音域の抜けが良くなり、透明感が向上する段階。次は情報量が増大する段階。そして最終的には、音量が上がったように感じられるエネルギー感が明らかに増大する段階だ。今回の試聴では、どこまでの改善が見込めるだろうか。

 デラのミュージックライブラリーN1A/3をネットワークトランスポートとして使用し、デノンのSACD/CDプレーヤーDCD-SX1 LIMITEDにUSB接続した。アンプはデノンPMA-SX1 LIMITED、スピーカーはBowers & Wilkins 802 D4を使う。

 

画像2: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

 

 まずHiVi視聴室常設のWi-FiルーターにN1A/3をLANケーブルで直挿ししてQobuzを聴く。選曲にはLINNアプリをインストールしたMacBook ProをLANケーブルでWi-Fiルーターと繋いでいる。ロマン・シモヴィッチ「ローザ:ヴァイオリン協奏曲」をQobuzで再生した。高音域がロールオフしており、音の粒立ちが非常に悪い。弱音部の明瞭度も低く、クレッシェンドに伴なうダイナミクスの変化もほとんど表現できていない。レディー・ガガ&ブルーノ・マーズ「Die With A Smile」も、センター定位する二人の音像とバックの楽器演奏が分離せず、曖昧模糊であり、声の感情表現も希薄だ。ネットワークオーディオの黎明期には、Wi-Fiルーター直挿しという接続方法は一般的だったが、改めて聴くと、ここまで音質が悪いとは驚きだった。

 続いて、ルーターの配下にEthernet Switch UEFを設置し、そこにN1A/3を接続、同時にQobuz操作用のLINNアプリをインストールしたMacBookProもLANケーブルで繋ぐ。

 過去の経験から、ある程度の音質向上を期待していたが、その予想を裏切らない素晴らしいクォリティアップをすぐに実感した。高音域の抜けが良くなり、SN比やダイナミックレンジの表現が向上。ロマン・シモヴィッチは、一聴してノイズフロアーがグッと低減、オーケストラを構成する楽器の分解能も高まった。弦を擦る音や、弱音と強音の描写がより繊細になり、楽器の音色やアコースティックな表現が際立ってくる。弱音部の空気感も豊かになり、起伏の表現力が格段に向上している。

 レディー・ガガ&ブルーノ・マーズは、ヴォーカルとバックの演奏の分離が明瞭になり、音像の立体感も増す。ヴォーカルの表現力が高まり、より感情が伝わってくるという言い方もできよう。定位が精密になり、ベースの力強さが増した点は特筆すべきだ。

 

画像3: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

Ethernet Switch UEFは、いわゆるスイッチングハブであり、電源以外の端子はRJ45端子5系統と、「SR Ground Block」という、同社が展開する仮想アース機器「Active Ground Block SX」とのコネクターが備わるだけと非常にシンプルだ

 

画像4: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

Network Router UEFはハブ機能を備えた有線接続用ルーター。前段に繋がれたルーター配下にある機器(パソコンやテレビ、IoT家電、ゲーム機器、スマホなど)とは別のネットワークグループを構築することで、オーディオ的な意味での低ノイズ環境を構築する発想だ。本ルーターを介して接続した機器をWi-Fi経由で行なう場合は、Wi-Fiアクセスポイントを使用する必要があるなど、一般的なネットワーク構築とは違うスキルが要求される。このため、本機は、輸入元が認定した、ネットワーク知識を持った特約販売店経由での販売となる

 

 

圧倒的な音質改善効果を実感した「2重ルーター」の低ノイズ環境

 Ethernet Switch UEFの上流にNetwork Router UEFを設置し、「2重ルーター」を試す。音が鳴った瞬間にさらなる音質向上を実感!! ロマン・シモヴィッチで、ダイナミクスの異なる複数の楽器が同時に鳴る際の描き分けが改善し、音場の広がりや奥行が明瞭になり、空間の広がりも見事に表現された。「Wi-Fiルーター直挿しの、あの曇った音は一体何だったのか?」と疑問に感じるほどのへ変化だ。音質改善効果が高く、高音の抜け、透明感向上、情報量の増大、そして音量も上がって聴こえた。

 

画像5: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

 

 レディー・ガガ&ブルーノ・マーズの音質向上ぶりも凄い。ヴォーカルの実体感が増し、空間に自然に浮かぶような立体感と透明感を獲得。音の出だしから消え際に至るまでの空気感まで変わってくる。この変化、音質向上は強烈だ。この音は、Qobuz、いやストリーミングサービスが備えている音質の根源的な可能性を認識させる、それくらいのインパクトがあった。

 Qobuz再生の音質向上のコツは、ネットワークインフラの改善にあるのは、冒頭に説明した通り。具体的には、まずパソコン用でも構わないので、LANケーブルやネットワークスイッチを新品にリフレッシュすることから始めても良いと思う。そして次のステップとして、僕はオーディオグレードのネットワークハブの導入をおすすめしてきた。オーディオグレードのハブはいままで様々な製品を試してきたが、その中でもEthernet Switch UEFの音質改善効果は際立って高く、さらにNetwork Router UEFとの併用による「2重ルーター」の状態では、いままで経験したことのない圧倒的なノイズフロアーの低減を実感できた。

 音楽ストリーミング再生で、これほどの改善効果があるのであれば、動画配信サービスでも大きな品質改善効果があるはず。いつかこの構成を使い、Apple TV端末を用いた映像ソースのクォリティも確認してみたい。

 

画像6: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

同社の最新クリーン電源PowerCell14 SX(¥3,157,000税込)。合計14系統の3ピン電源端子を装備、内部は3系統に隔離しており、デジタル機器とアナログ機器などを分離して給電できる

 

画像7: 『Synergistic Research Ethernet Switch UEF/Network Router UEF』Qobuz再生の注目グレードアップアイテム《ルーター+スイッチングハブ編》

アクティブアースActive Ground Block SX(¥704,000税込)。現在、オーディオ界では仮想アース機器が人気だが、本機はそれらとは発想が異なり、「本体のIECコネクタのグラウンド端子からACコンセントのアースへと繋がる」グラウンドシステム(同社Webサイトより)。同社製の全ての機器との連携が可能なほか、スペード端子付きケーブルなどを使って、同社以外の機器も含めて最大32系統の機器に接続できる

 

 

 

>総力特集!音楽はいい音で聴く。Qobuzのすべて【HiVi2025年春号】目次ページ はこちら

>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』

This article is a sponsored article by
''.