Qobuzに真摯かつしなやかに対応した、ナチュラルなラックストーンに大いに納得!
今年創業100周年を迎えるラックスマン。安物をつくらず、自らが理想とする音を追求し続け、会社を維持して1世紀。たいしたものだと思う。
さて、これまで管球式/半導体式アンプを中心に様々なオーディオ・エレクトロニクスを開発してきた同社だが、ここにご紹介するNT-07は同社初のネットワークトランスポート。好みのUSB端子付D/Aコンバーターと組み合わせれば、Qobuzを用いてCDスペック以上の音楽ファイルが1億曲以上楽しめるというわけだ。

Network Audio Transport
LUXMAN
NT-07
¥594,000 税込
●型式:ネットワークオーディオトランスポート
●接続端子:デジタル音声入力2系統(USB Type A、HDMI)、デジタル音声出力4系統(同軸、光、USB Type A、HDMI[ARC対応])、LAN端子1系統(RJ45)ほか
●主な対応ストリーミングサービス:Qobuz、Spotify、TIDALほか
●対応アプリ:LUXMAN Streamアプリ
●備考:Roon Ready対応
●寸法/質量:W440×H92×D398mm/10.3kg
●問合せ先:ラックスマン(株)TEL. 045(470)6991
そのほか本機で注目すべきは、HDMI端子を2系統用意していることだろう。一つはARC対応HDMI出力で、もう一つはUHDブルーレイプレーヤーなどとダイレクトにつなげるHDMI入力である。高度なオーディオシステムに大画面テレビやプロジェクターを使ったホームシアターを融合させたいとお考えの方にとって、とても興味深い製品ではないかと思う。
ここでは、同社製D/AコンバーターのDA-07Xと組み合わせて、Qobuzのハイレゾファイルを聴いた印象を述べよう。アンプはデノンPMA-SX1 LIMITED、スピーカーはBowers & Wilkins 802 D4である。ちなみにDA-07Xは、ローム社のトップエンドDAC素子BD34301EKVをデュアルモノーラル構成で採用している点に注目したい。純正操作アプリ「LUXMAN Stream」の操作感も極めて良好だ。ちなみに本機は昨年春のファームウェア・アップデートで、Roonの出力デバイスとして動作するようになった(Roon Ready対応)ことも特筆しておきたい。


NT-07とは、2024年登場の最新D/AコンバーターDA-07X(¥638,000税込)を組み合わせた。ローム社製「MUS-IC」シリーズの最高峰DAC素子「BD34301EKV」をデュアルモノ構成で用いたモデルだ
ロスレスとハイレゾの違いを高分解能で明確に描き分ける
「Qobuzおすすめ楽曲100」のページでご紹介した、Qobuzで聴ける最新ジャズ関連のアルバムを中心に様々な音楽ファイルを聴いてみたが、これみよがしの尖ったハイファイ・トーンではなく、総じてとてもナチュラルで聴き味のよい大人っぽいサウンドを楽しむことができた。ぼくらが慣れ親しんだラックスマン・トーンがNT-07&DA-07Xの組合せにも生きていることが実感でき、とても興味深かった。ちなみにデジタルフィルターは2種類から選択できる(MQAバイパス時のみ選択可能)。ぼくには「ノーマルFIR」がフィットする印象だったので、この設定で試聴を続けることにした。ジェイミソン・ロス「ドント・ゴー・トゥ・ストレンジャーズ」(96kHz/24ビット)は、たおやかな情感に満ちた音調で、なぜかテンポがゆったりと聴こえる。ピアノの余韻がたっぷりと響くからだろうか。
グレゴリー・ポーターの「ブラウン・グラス」(96kHz/24ビット)は、彼の慈愛に満ちたヴォーカルの味わい深さが最高だ。「ノーマルFIR」設定で聴くと、コクのあるサウンドに切れ味の良さが加わる印象。ちなみにこの曲が収録されたアルバム『Liquid Spirit』は、Qobuz上で96kHz/24ビットの他、44.1kHz/24ビット、44.1kHz/16ビットのファイルを聴くことができるが、この音質差がとても興味深い。サウンドステージが広く、中低域が充実し、ニュアンスの豊かな96kHz/24ビットの優位性に誰もが気づくはずだ。
「ア・フール・イン・ラヴ」(96kHz/24ビット)で聴けるサマラ・ジョイのヴォーカルもすばらしい。彼女の声に独特の艶が乗ったフレッシュな歌声で、とてもコケティッシュ。ホーンセクションの厚みのあるアンサンブルも聴き応え十分だ。また、この楽曲で本機のバランス/アンバランスそれぞれのアナログ出力の音を比べてみたが、出力レベル、音質ともに大きな違いがないことがわかった。
操作アプリはiPhone/iPad/Android用の「LUXMAN Stream」が用意されている。音楽ストリーミングを含む楽曲選曲操作のほか、再生楽曲情報表示、再生キューが整理され、非常に使いやすい。レスポンスにも優れて快適操作が可能だ
静寂の気韻が深く表情が豊か。強靭な演奏も写実的に描写する
本機とDA-07Xの組合せで聴いて驚かされたのが、韓国人ジャズ・シンガー、ユン・サン・ナの歌う「Shenandoah」(88.2kHz/24ビット)だった。彼女の声から張りと艶が伝わり、表情がとても豊か。マイクロフォンのダイヤフラムに息を吹きかける感じがリアルにわかるのである。これはローレベルのリニアリティが優秀で、静寂の気韻が深いからだろう。
一方ユセフ・デイズの「ブラック・クラシカル・ミュージック」(48kHz/24ビット)で聴けるリズム・セクションの力強く強靭なプレイを写実的に描写する懐の深さにも感心させられた。
創立100周年を迎える老舗が、これからのHi-Fiオーディオの最重要テーマである高音質音楽ストリーミングサービスQobuzに真摯かつしなやかに対応したことに強く納得させられた試聴取材だった。

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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』