Qobuzのハイレゾ音源をデジタル出力。手持ちのDACを活かすネットワークトランスポート
ベース、バスドラムの低音の躍動をもっとダイレクトに感じたい、女性ヴォーカルの声をニュアンス豊かに楽しみたい、あるいはオケの多彩な楽器による豊かな響きを全身に浴びるような感覚が欲しいなど、日々、手間とコストをかけながら、自分のシステムのパフォーマンスの向上に取り組んでいるオーディオファンは少なくない。
そこまで愛情を注いで仕上げてきたオーディオシステムであれば、当然、Qobuz再生でも可能な限り、その持ち味を生かしつつ、本来のクォリティを引き出したい。1台完結型のネットワークプレーヤーを加えるのも悪くはないが、地道に仕上げてきた自前のサウンドを積極的に生かしたいのなら、DAC回路を持たないネットワークトランスポートの方が好ましいというケースもあろう。
すでにシステムにUSB対応D/Aコンバーター、あるいは192kHz対応の同軸/光デジタル入力付きのD/Aコンバーターをお持ちであれば、そこにネットワークトランスポートを接続するだけで、ハイレゾ音源も含めてQobuzの再生が可能。もちろんDAC機能を備え、外部からのデジタル入力が可能なAVセンター、プリメインアンプ、SACD/CDプレーヤー、あるいはアクティブ型のスピーカーシステムでも、同等の使いこなしが約束される。
またネットワークトランスポート再生の場合、使い慣れたDACシステムがそのまま活用できるため、CDやSACDの音楽メディア、さらにUHDブルーレイ、BDといったビデオメディアとの音質面の整合性が確保しやすく、慣れ親しんだサウンドテイストが期待できるのも、大きな強みだ。

Tablet
iPad with LUMIN App
SACD/CD Player
DENON
DCD-SX1 LIMITED
Network Audio Transport
LUMIN
LUMIN U2 MINI
ルーミンのトランスポートからSACD/CDプレーヤーのUSB端子に入力
そこで今回はルーミンのネットワークトランスポートU2 MINIと、HiVi視聴室のリファレンスとなるデノンDCD-SX1 LIMITEDのDAC入力を活かした組合せで、そのパフォーマンスを検証していく。接続はUSB Type B。

人気モデル、U1 MINIの後継機となるルーミンU2 MINIだが、より高速なプロセッサーの採用、信号処理回路の刷新により、リサンプリングの柔軟性を高めているのが大きな特徴だ。具体的には、すべてのフォーマットからPCM 384kHz/24ビット、DSD 11.2MHzまでのアップサンプリング/ダウンサンプリングしての出力が可能。デジタル音声出力は、USB Type Aが2系統、同軸2系統(RCA、BNC)、光、AES/EBU(XLRバランス)など各種端子を装備していることもポイントだ。
今回は専用のアプリ「LUMIN App」をインストールしたiPadから操作を行なった。初期設定からQobuzのタブをタップするとログイン画面が表示され、アカウント/パスワードの入力を行なうと、Qobuzの画面に切り替わる。Qobuzの純正アプリで保存したプレイリストは「マイミュージック」セクションから再生可能だ。

アナログ信号として出力するのか、デジタルのままで出力するのかの違いが、Qobuz再生時のネットワークプレーヤーとトランスポートの違いとなるが、優秀なD/Aコンバーターを持っている場合は後者のほうがシステム構築上ベターなケースが多い。実際の操作自体は、ネットワークプレーヤーと同様で、スマホやタブレットなどにインストールしたオーディオブランドが作りアプリで操作する流れだ。写真はルーミン謹製の「LUMIN」アプリだ
「ビッグ・ショット/ビリー・ジョエル」、「The Rose(2015 Remaster)/ベット・ミドラー」、「ショパン:24の前奏曲/チョ・ソンジン」などのハイレゾ楽曲を中心に再生したが、空間の静寂感、響きの細密さと、基本的な情報量に余裕があり、音そのものの鮮度の高さが印象的だ。声の息づかいにしても、弦楽器の倍音にしても、音の粒子まで感じさせるような繊細な感触が心地良く、高級オーディオ機器ならではの精緻な表現力が確認できる。ダイナミックな躍動、パワーでグイグイと押してくるような強引さはないが、その表現力は一級品だ。
DAC回路に備わる音の魅力、個性はQobuz再生でも十分に引き出せる
2015年ショパン・コンクール優勝時での演奏となるチョ・ソンジンのショパンでは、フワッと空間に放たれるピアノの繊細な響きにハッとして、前のめりになる。解像度の高さを感じさせつつ、その音調は硬質にならず、音楽の旋律をしっかりとしたタッチで描き出していく冷静さは見事だ。
ベット・ミドラーは、まずスローテンポで入るピアノの響きの優しさに引きつけられ、静かに、落ち着いた空気のなかに、彼女の優しい歌声が響き、浸透していく。時間の経過とともに、その声は優しさに強さが加わり、明確な意志を伴なった、熱いメッセージとして訴えかけてくる様子が、実にリアルだ。
持ち前の解像力はQobuzのハイレゾ音源の再生でも健在。心の機微、感情の抑揚まで感じさせてくれる情緒豊かなサウンドを体験することができた。
手持ちのDACシステムを活かしながら、Qobuz再生の魅力をフルに引き出すネットワークトランスポート。その確かな仕事ぶりには、目を見晴るものがあった。
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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』