MAGNETAR(マグネター)の「UDP900」(市場想定価格¥550,000、税込)と「UDP800」(市場想定価格¥297,000、税込)は、久々に日本市場に登場した本格派ユニバーサルプレーヤーだ。両モデルとも4K UHDブルーレイからブルーレイ、SACD、CD、さらにはUSBメモリーに保存したハイレゾファイルまで一台で楽しめるということで、オーディオビジュアルファンの注目を集めている。
・UHDユニバーサルプレーヤー:マグネター UDP800 オープン価格(市場想定価格¥297,000、税込)

●再生可能ディスク:UHDブルーレイ、ブルーレイ、DVDビデオ、DVDオーディオ、AVCHD、SACD、CD、ピクチャーCD、CD-R/RW、DVD±R/RW、DVD±R DL、BD-R/RE
●対応信号:最大PCM 192kHz/24ビット、DSD2.8MHz(DLNA/USBメモリーからのデータ再生)
●接続端子:HDMI✕2(メイン/音声専用)、2chアナログ音声出力✕2(XLR/RCA)、デジタル音声出力✕2(同軸/光)、USB Type-A✕2、LAN
●寸法/質量:W430✕H90✕D312mm/約6.7kg
●消費電力:30W(待機時0.5W)
そんなユニバーサルプレーヤーに心惹かれているのが、サウンドエンジニアのえびなやすのりさんだ。えびなさんはStereo Sound ONLINEにもたびたび登場いただいているホームシアター愛好家。ご自身のシアタールームには、120インチサウドスクリーンと13.2.10イマーシブオーディオ再生環境を備え、UHDブルーレイはもちろん、ハイレゾファイル、アナログレコードまで高品質に楽しんでいる。
えびなさんからマグネター製品についての相談があったのは、2024年秋口のこと。現在えびなシアターでは、パナソニック「DP-UB9000」でUHDブルーレイやブルーレイを、SACDやCDはオッポ「BDP-105DJP」といった具合に、2台のプレーヤーを使い分けている。この2台をUDP800に統合できれば、設置スペースや操作性も改善されるのでは、という発想だ。

蝦名恭範 (えびなやすのり)さん
音響制作会社 サウンドチーム・ドンファンのメンバーで、自身も音響監督/ミキサーとして活躍している。自宅の近くに120インチスクリーン&立体音響を完備したホームシアターを設け、日々最新作品のサウンドデザインを研究している
実は、昨年Stereo Sound ONLINEでガレージシアター構築リポートを紹介させてもらった櫻井 崇さんはえびなさんの仕事仲間で、その桜井シアターに導入されたのがマグネターUDP800だった。櫻井さんのシアター構築記事を呼んでいるうちに、えびなさんもマグネターが気になり始めたというわけだ。当然最新モデルとしての画質・音質にも興味津々というわけだ。
そういうことならと、UDP800の視聴機をえびなシアターに持ち込んで、UHDブルーレイやSACDを体験いただいた。参考までに、UDP800はDACチップにバーブラウン製のPCM1795を2基、さらにソニー製ドライブメカやメディアテック製クアッドコアプロセッサー「MT8581」といった定評あるパーツを採用している。セパレートHDMI出力、2chアナログ音声出力(XLR/RCA)を備えるなど、様々な接続方法にも対応している。

えびなシアターの再生機器。現在はオッポ「BDP-105DJP」とパナソニック「DP-UB9000」の2台でディスクメディアを楽しんでいる
ちなみにえびなさんはもともとBDP-105DJPでブルーレイやSACD、CDを楽しんでいて、UHDブルーレイが登場した際にパナソニック「DMP-UB900」を導入してUHDブルーレイ再生に対応したそうだ。その後、より高画質・高音質を目指してDP-UB9000にグレードアップしている。もちろんその際もUHDブルーレイを含めたユニバーサル機のオッポ「UDP-205」を検討したが、こちらは既に販売が終了していたという。
なお、えびなシアターの再生ソースはほぼパッケージメディアで、録画機は考えていない。そのうえで、反応のよさや快適な操作性も重視しているとのことで、そこについても実機で確認してみたいという希望もあるそうだ。
UDP800は、HDMIケーブルでAVプリアンプのストームオーディオ「ISP 3D.16 ELITE」に接続。この状態でUHDブルーレイ『CIVIL WAR』や『マッドマックス:フュリオサ』、SACDの『Miles Davis In A Silent Way』といったえびなさんのお気に入りを再生してもらった。

えびなさんはAVプリアンプからの出力内容をモニターできるアプリを導入しており、各チャンネルにどんな音が配置されているかを検証しているとのこと
まずUHDブルーレイについては、4K映像の鮮明さ、コントラスト感など高いレベルで満足してもらえた様子だ。『CIVIL WAR』の夜の市街戦も明るい部分と暗い部分の描き分けが明瞭で、HDRらしい絵作りも充分確認できた。
サウンドはドルビーアトモス音声を選んでみたが、こちらもすんなり再生され、狙撃手が放つ銃弾のスピード感から爆撃やヘリのローターの重低音まで迫力たっぷりに再現されている。
『マッドマックス:フュリオサ』では、冒頭の緑の地の木々の葉っぱや果実の表現が美しい。フュリオサ(子役)の瞳の力強さ、細かな表情の変化などもていねいに描き出してくれた。

13.2.10(!)という夢のようなサラウンド環境でパッケージソフトを楽しんでいるえびなさん
「最近仕事が忙しくて、なかなかこの部屋でゆっくり映画を見ることができなかったんです。それもあって『マッドマックス:フュリオサ』は今回が初見なんですが、UDP800は凄くクリアーな映像という印象ですね。砂漠の中をバイクで走っていく際の砂粒ひとつひとつが見えるような解像感がありました。『CIVIL WAR』の夜の戦争シーンでも、砲撃の閃光が眩しいくらい。4Kの情報をすごく素直に再現してくれているようです」とえびなさんもUDP800の4K映像が好印象のようだ。
次に『Miles Davis In A SilentWay』をHDMIによるデジタル伝送で再生してみた。ちなみにこのディスクはSACDマルチでも収録されていたので、5.1ch音声も選んでいるが、UDP800とISP3D.16 ELITEの組み合わせではすんなりとマルチチャンネルで再生できた。
「SACDもHDMIでつないだだけで簡単に音が出るのは、さすがユニバーサルプレーヤー。この操作性はやっぱり快適ですよね。音も楽器のリアルな感じなどとてもよかったです。

今回視聴した主な12cmディスク
あと、SACDをマルチチャンネルで再生できたのには、ちょっと驚きました。最近はSACDをマルチで聴くことがほとんどなかったんですが、改めてこういった世界もありかなという気がしました」と音楽再生でもUDP800が活躍しそうな感想を聞かせてくれた。
最近は動画も音楽も配信で楽しむという方も増えているが、それでも信頼性やビットレートの容量などでパッケージソフトの優位性もある。映画や音楽が好きという方には、ぜひそれらの作品をパッケージメディアで楽しんでみていただきたい。その際には “どの12cmメディア” でも再生できるUDP800は有力な選択肢になるはずだ。(取材・まとめ・撮影:泉 哲也)
中学生の頃の思い出が詰め込まれた『銀河鉄道999』のサウンドトラックSACDを、
えびなさんがマイシアターで改めて聴いてみた
ステレオサウンド社では、オリジナル音楽ソフトとしてSACD/CDハイブリッド『交響詩 銀河鉄道999』(¥4,950、税込)を発売中です。日本コロムビアが保管してきたオリジナルの1/4インチ・アナログマスターテープを使い、本サウンドトラックの魅力をそのまま記録した一枚です。その『銀河鉄道999』に熱い思いを持っているのが、えびなやすのりさんです。中学生時代に本作に出会い、その後の人生にも大きな影響をうけたかもしれないというえびなさんに、ご自身のホームシアターでこのSACDを聴いていただきました。

『銀河鉄道999』が封切られた時、世の中は松本零士ブームで、その時中学一年生だった僕はまさにその中にいました。この映画は家族で1回、友達と1回見ました。同じ映画を2度見たのはこれが初めてで、それくらい松本零士映画の真骨頂と言えるものでした。
その思い出が詰め込まれたSACD/CD『交響詩 銀河鉄道999』はとても広がりがあり、力強さを感じるディスクでした。まさにあの頃の空気、いやそれ以上に新鮮に聞こえてきます。一曲目が流れた時、思ったよりポップスだなと感じたのは、ドラムを使っているのが印象的で、そのドラムのリズムがとても生々しく聞こえてきたから、そういう印象を受けたのかもしれません。ダイナミックレンジもとても広く、クレッシェンドの部分もとても刺激的です。
当時は気付かなかったこともちらほらありました。ゴダイゴの挿入歌「テイキング・オフ!」からのオーケストラアレンジで、歌のエンディングから同じキーでストリングスに突入するところは鳥肌ものです。なんの因果か、アニメ業界に身を置くことになった僕の原体験はこの頃に深層に叩き込まれているのかもしれません。
調べてみたら、『銀河鉄道999』はUHDブルーレイも出ているじゃないですか! しかも音はドルビーアトモスで。買っちゃおうかな。(えびなやすのり)