お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之が監督した長編最新作『かなさんどー』が、1月31日(金)に沖縄で先行公開、そして本日、全国公開を記念し、キャスト3名と照屋監督による舞台挨拶が行なわれた。
本作はモスクワ国際映画祭などの国際的な映画祭に出品され、日本映画監督協会新人賞を受賞した『洗骨』(2019)の照屋年之監督の6年ぶりの最新作。「かなさんどー」とは沖縄の方言で“愛おしい”を意味する言葉で、本作は沖縄県の伊江島を舞台に、実力派キャストにて情緒豊かに紡がれる“家族の愛と許しの物語”となっている。
1月31日(金)には沖縄で先行公開され、初日からの3日間で累計動員4,403人、興行収入5,927,880円を記録し、前作を超える好調なスタートを切り、昨日(2/21)から全国公開となった。本日2/22、全国公開を記念し、キャスト3名と照屋監督による全国公開記念舞台挨拶が行なわれた。
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本日2月22日(土)全国公開を記念し、TOHOシネマズ 新宿にて舞台挨拶が開催された。本作で監督を務めた照屋年之監督と主演の松田るか、堀内敬子、浅野忠信が登壇。撮影秘話や作品への思いを語り、またキャッチコピーの「愛おしい秘密」にかけ、今まで話したことのない秘密を披露し、会場は感動と笑いに包まれ、大いに盛り上がった。
映画上映前、大勢の観客が集まった会場内にやってきた照屋監督とキャスト陣。主演の松田るかが「はいたい ぐすーよー 松田るか やいびーん(皆さんこんにちは 松田るかです)。ちゅーや いんちゃさる時間やいびーしが ゆたしくうにげーさびら(今日は 短い時間ですが、よろしくお願いいたします)」と沖縄の方言で挨拶し、照屋監督は標準語の訳をお願いされると、「私は沖縄出身の俳優をやっています。普段は生でヤギ肉を食べます」と冗談めかして答え、会場は笑いに包まれた。
そして堀内は「みなさん朝早くからありがとうございます。よろしくお願いします。」と早朝から足を運んでいただいたお客さんにお礼と共に挨拶をし、浅野忠信は「僕は沖縄が大好きで、沖縄で撮影できたことや、沖縄の方たちと一緒に仕事ができたのがとても楽しかったです」と笑顔で振り返り、照屋監督は「映画は2年前に出来上がっていたのですが、もう皆さんに観てほしくて。作品は我が子のようにかわいいので、出産という苦しみを経ての我が子がもう2歳になりました。やっと観ていただけることがとても嬉しいです」と感慨深げに挨拶をした。
沖縄に続いて全国公開を迎えたことについて、照屋監督は「スタッフの汗と努力が混ざった作品がようやくみなさんに観てもらえます。さらにそれが(公開前の)良いタイミングで浅野さんがゴールデングローブ賞を授賞し、本当にいい追い風で、乗っかり商売させてもらいます(笑)」と浅野に深々とお辞儀し、ジョークを放つ。
また松田は主人公・美花を演じたことについて「方言を使えたのがやはりすごく嬉しくって。まさかこれが力になって、しかも故郷・沖縄で撮った作品で真ん中に立たせていただけるというのが、すごく光栄に思います」と喜びを語った。
映画のタイトルにもなっている沖縄民謡の「かなさんどー」を劇中で歌唱したことについては、「沖縄民謡を歌ったことがなかったですが、耳が慣れていたみたいで、自分が気づかなかった沖縄県民性に改めて気づかされました。でも普通の歌い方と少し違うので、やっぱりそこは難しかったです」と振り返った。
浅野演じるダメな夫・悟を明るく献身的に支えている町子を演じた堀内は、役柄について「照屋監督のお母様をモデルにされているとお話を伺ったので、とてもプレッシャーもありました。でも家族をすごく愛そうという気持ちを強く持ちながら演じさせていただきました」と語る。演じる上で特に難しかったシーンについては、「美花と町子が喧嘩をする大事なシーンで、リハーサルでかなり涙が出てしまって、その後の本番で急に涙がピタッと止まってしまいました。それから少し時間をもらい、1人の時間を作らせていただいて、気持ちを盛り上げました。その時もるかちゃんが目の前にいてくれて、本当に心強かったです」と町子の演技に苦悩するも娘役の松田に救われたことも告白。
また浅野が本作に出演を決めた理由について聞かれると、「僕は沖縄が大好きで、何か沖縄に恩返しできるようなことはないかと考えていました。沖縄のテレビ局でドラマがあったら、ぜひ出演させてもらえないかなって思っていたら、ちょうど本作の台本が届いて、ストーリーがものすごく面白かったので、ぜひやらせてくださいと返事させていただきました」と明かすと、照屋監督が「沖縄のドラマに出たいなんていうと、数分後に沖縄のテレビ局から電話きますよ」とツッコミ。そして撮影中に浅野のエピソードについて、監督は「余命宣告されている病人役なのに、“監督、ホテルの前が海だから泳いじゃいました。”と言われて……。また目の前にスーパーがあるって言ったら、入院服のままスーパーに行っていました。現地の人からしたら映画の撮影していると知らないから、“浅野忠信が沖縄で入院しているんだ!”って思いますよ(笑)。浅野さんはすごく自由人なんです」と当時のエピソードを語り、会場は浅野の行動に爆笑が起こる。
撮影で印象的だった出来事について照屋監督は、「先ほど堀内さんが言われた大事なシーンで涙が出ないっていうところが結構苦労されていて。本読みの時はボロボロ泣いていたので安心していたのですが、本番急に涙が止まってしまって。堀内さんの気持ちを作ってもらっている時、スタッフがその場に何十人といる中だったので、かなりのプレッシャーだったと思います。それから何回もカットを重ねて、やっと涙が出た時は全スタッフで拍手してっていう現場が、すごく映画みたいで感動しました」と振り返る。そして本作に込めた想いについて聞かれると、「僕自身が辛い時とかにエンタメに救われてきたので、明日また1歩勇気を出して、前に出てみようと思えるような作品作りを常に意識はしています。そして今作は『許し』をテーマにしていて、ほとんどの人が人間関係で苦しんでいるはずです。でも苦しい時に手を差し伸べてくれるのもいつも人間です。そういう中で『許し』とはどういうことなのだろうっていうのを、この3人なりの答えを出してくれると思うので、そこを楽しんでいただけたらと思います」。
そして今作のキャッチコピーの『愛おしい秘密』にちなみ、誰にも言ったことのない秘密を披露することに。浅野は、「ゴールデングローブ賞でスピーチをさせていただいたのですが、実はちゃんとしたスピーチを考えていました。皆さんに感謝の言葉を述べようと、いろんなスピーチをちゃんと考えて、毎日のように練習していたのですが、呼ばれた瞬間に全部セリフが飛んでしまってあのスピーチになったんです」と答え、会場には驚きの声が上がった。
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松田は「オーストリアのクウォーターとウソをついた事がある」、堀内は「るかちゃんとスーパー銭湯で会った!!」とたまたまプライベートで出会い、1日の行動が一緒だったという秘密のエピソードを披露。そんな中一番会場の笑いをかさらったのが照屋監督で「パンツのポケットが破れており、裾まで携帯が落ちてしまい、さらに落ちた瞬間に携帯から着信が来て、そのまま電話に出ました。ところがるかちゃんには、携帯を誰かを笑わすために普段からパンツの裾にしまっていると思われていた」という面白エピソードを披露し、イベントは時間が迫り最後の挨拶に。
松田は「観終わった後に顔が思い浮かんだ人に、『かなさんどー(愛おしい)』と伝えるきっかけになれるといいなと思っております」と語り、堀内は「疎遠になっている家族や友人に勇気を持って、『今度会おう』と声をかけられるきっかけになるような映画になっていると思います。ぜひ楽しんでご覧ください」とコメント。浅野は「皆さんと本当に仲良く現場でも過ごしていましたし、僕も安心しきって家族の一員としてその場にいることができました。この現場から溢れる笑顔がそのまま映画の中に入っているので、そこをぜひ観てほしいなと思います」と語り、照屋監督は「オンデマンドなどで映画を観る時代になってきている中、わざわざ足を運んで劇場に来てくれるっていうのが、作り手としては報われます。皆さんの人生の大事な90分間を『かなさんどー』にいただき、感謝しております。是非ともその90分、裏切らない内容になっていると思いますので、ぜひ楽しんでいってください」とメッセージを送った。
映画『かなさんどー』
全国公開中
<ストーリー>
妻・町子 ( 堀内敬子 )を失った父・悟 ( 浅野忠信 ) は、年齢を重ねるとともに認知症を患っていた。娘の美花 ( 松田るか )は、母が亡くなる間際に助けを求めてかけた電話を取らなかった父親を許せずにいる。そんな父・悟の命が危ないと知らせを受け、苦渋のなか故郷・沖縄県伊江島へ帰ることに。父との関係を一向に修復しようとしない美花だが、島の自然に囲まれ両親と過ごしたかけがえのない時間を思い返すなか、生前に母が記していた大切な日記を見つける。そこで知ったのは母の真の想い、そして父と母だけが知る< 愛おしい秘密 >……。
<キャスト>
松田るか、堀内敬子、浅野忠信、
Kジャージ、上田真弓、松田しょう、新本奨、比嘉憲吾、真栄平仁、喜舎場泉、うどんちゃん、ナツコ、岩田勇人、さきはまっくす、しおやんダイバー、仲本新、A16、宮城恵子、城間盛亜、内間美紀、金城博之、前川守賢、島袋千恵美
<スタッフ>
監督・脚本:照屋年之(ガレッジセール・ゴリ) 製作総指揮:福田 淳 製作:福永真里、藤原寛 プロデューサー:石田玲奈、鳥越一枝 協力プロデューサー:金森 保 撮影:大城 学 照明:鳥越博文 録音:横澤匡広 美術:吉嶺直樹 装飾:梅原文 ヘアメイク:荒井ゆう子 衣装:むらたゆみ 助監督:石田玲奈 フードスタイリスト:中村真琴 編集:初鹿紗梨 音響効果:佐藤祐美 DIT&データ管理:小野寛明 題字:おやまゆき 音楽:新垣 雄 歌唱指導:古謝美佐子 主題歌:『かなさんどー』作詞・作曲:前川守賢 協賛:くらしの友、沖縄セルラー電話、沖縄タイムス 配給:パルコ 宣伝:FINOR 制作協力:キリシマ一九四五 制作プロダクション:鳥越事務所 制作:スピーディ 製作:「かなさんどー」製作委員会
2024年/日本/日本語/86分/G
(C)「かなさんどー」製作委員会