ある地方都市を舞台に、現状や将来への不安の中、一歩踏み出せずにいる若者たちに焦点を当てた群像劇『ナマズのいた夏』が、いよいよ2月8日(土)より公開される。ここでは、過去の出来事に囚われながらも、その呪縛を乗り越えようと奮闘する、W出演の一人、佐伯結衣を演じた架乃ゆらにインタビュー。役作りの苦労から今後の目標などについて話を聞いた。

――よろしくお願いします。出演おめでとうございます。不思議なタイトルの作品ですが、最初に台本を読んでの感想はいかがでしたか。
 ありがとうございます。登場人物それぞれにいろいろな背景(事情)があって、特に私が演じさせていただく佐伯結衣は一段と複雑な役でしたから、その背景を考える必要があるのは有り難いと思いました。自分なりにいろいろと考えて、関連しそうな書籍を読んだりして、役へのアプローチをしていきました。

――佐伯結衣の印象と、その表現の方法については?
 複雑な背景を持ってはいますけど、ある意味等身大な女の子だと感じました。幼い頃に親からの愛をきちんと受けられなかったことが心の傷になっているので、そういう内面を考えながら、関連書籍を読むなどして役作りをしていきました。

画像1: 「架乃ゆら」がW主演の映画『ナマズのいた夏』が公開。複雑な背景を持つ女性を演じ切り、「私の代表作を言える作品になってほしい」

――なかなか本格的ですね。
 ありがとうございます。実は、そういうアプローチをしたのは今回が初めてなんです。お芝居のワークショップに参加した際に、“役に入る前に、きちんと下調べをすることが大事”ということを学んでいたので、よし今回それをやってみよう! という感じでやってみたんです(笑)。(役作りに関して)新しい見方ができたなと思いました。

――役に活かせましたか?
 はい! 役柄に必要なことを知識として知っておくことで、結衣の考えていることにより近づけたという感覚はあります。

――話は飛びますけど、架乃さんはとてもいい声をされていますね。(劇中の)発声も素晴らしくて、結衣に魅了されました。
 嬉しいです、ありがとうございます。これまで、舞台のお仕事を何回か経験させていただいたので、そのお陰かと思います。ただ、舞台のお芝居と映像のお芝居って違いますから、そのギアチェンジをもう少し上手くできるようになりたいというか、今はそれが課題です。

――さて、ようやく本題に入りますが(笑)、本作は冒頭からたくさんの情報が詰め込まれています。
 そうですよね。私も台本を読んだ段階では、正直、画の想像がつかなかったですし、結衣が出て来るまでの間にもいろいろな情報が提供されるので、観ていただく皆さんにはどのように感じとってもらえるかなと思いながら試写を観ていました。結果としては、すごくまとまっているように思います。

画像2: 「架乃ゆら」がW主演の映画『ナマズのいた夏』が公開。複雑な背景を持つ女性を演じ切り、「私の代表作を言える作品になってほしい」

――タイトルバックのあたりまでは、サスペンス的な劇伴もあって、お化けが出てくるのか、人が殺されるのかという緊張感がありました。やたら笑顔の川瀬さん(タクシー運転手役)もちょっと怖かったです。
 そうなんですよ。最初は謎が多いんですけど、北関東っぽい馴染みのある景色のお陰で、あまり引き離されすぎずに作品に入っていけました。

――さて、そんな始まりもあって、結衣も、当初は謎多き女性に見えました。その後、達生(中山雄斗)に呼ばれて釣り旅行に合流しますが、そこで少し(芝居の)ギアが変わったように感じました。
 そうですね。まだその段階では、結衣の背景も明らかになっていませんけど、1本の筋で繋がっていない役柄って、逆にすごくリアルに感じました。その繋がっていない感じは自分の中できちんと理解していましたから、急に性格が変わるというか、ギアチェンジするところは頑張りました。けど、観て下さる方はびっくりするでしょうね。

――初見では、もともと怖い人なのか、(達生が結衣の)抱えているものに触ってしまうことを言ったから怒ったのか? どっちなんだろうと思いました。
 その時点で達生に対して怒るのは、結衣にとっては人に触れてほしくないことだったことと、達生自身がそれに対して向き合えてないのが結衣にとってはすごく許せなかったから、そういう態度をとってしまうんです。

 ネタバレになるのであまり話せませんけど、結衣は結衣なりの悩みを持っているので、友達同士で遊んでいる時でも、ふと沈んでいるような表情してしまう。それを達生から見た時に、何か引っかかるものにしたい。そういう見え方・存在にしたいと思って、そうしたお芝居をしています。

――ところで、結衣は毎日衣装が変わっていて、心情・心境にリンクしているようにも見えました。
 実は、男の子たちも結構変わっていますよ。外出が長くなると思ったから、着替えをキャスターに詰め込んでいる、というのはさておき(笑)、服装(衣装)が変わることで、心境が変わったということを表現していますので、(衣装替えは)その力添えになったと思います。そこは中川監督のこだわりでもありました。

 結衣自身はいろいろな悩みを抱えていますけど、一方で、楽しめる場所では楽しんでいますから、等身大の女性っぽい表情は見せられたかなって思います。

――だから、子供と遊んでいる時は、本気でわーきゃーしているんですね。
 そうですね。まさに天真爛漫という感じで演じました(笑)。カイ君役の子が本当に可愛くて! 撮影中はずっと癒されていました。

――劇中では、タイトルにあるナマズ釣りのシーンもありました。
 中川監督は釣りに関しては一家言あるようで、ナマズは引きが強いから、もっと腰入れてなど、男性陣には結構指示をしていましたね。私はその間(待ち時間)、一人でカエルを追いかけていました。元々カエルが好きだったので、河原に大きなウシガエルを見つけて楽しんでいました。

――さて、中盤には、結衣の悩みの元が明らかになります。その際の表情はとても緊張しているように見えました。
 目的が叶うかもしれないという、結衣の核心に近い部分に触れる撮影でしたから、自然とそういう緊張感みたいなものが生まれてきたのだと思います。

――それ(悩み)についてはネタバレになるので話を変えますが、その後、達生と急接近していきます。
 そうですね。元々バイト先が同じで、友達みたいな間柄だったんですけど、今回の滞在中に知らなかった一面を見たことで、ちょっと距離が近づいたのかなっていう感じです。

――そこで見せる表情は、結衣の仕事(職業)を超えた女性的なものでした。
 結衣もやはり女性ですから、結衣なりに、普通の女の子っぽいアプローチをしたのだと思います。私自身も、すごく自然にできました。

――さて、終盤にはメインカットの写真の意味が明らかになります。その時の表情は、少し穏やかに見えました。
 結衣の中でずっと悩んでいたもの、ずっと引っかかっていたものが取れた(落ちた)からだと思います。撮影自体も、現場には私と子役(カイ役)の二人きりでしたから、よりリラックスした状態で撮影できたこともあって、それが表情に表れていたのだと思います。一発OKでした。少しどんよりとした背景の天候もあいまって、印象的なシーンになりました。

画像3: 「架乃ゆら」がW主演の映画『ナマズのいた夏』が公開。複雑な背景を持つ女性を演じ切り、「私の代表作を言える作品になってほしい」

――ところで、今回共演した達生役の中山雄斗さん(W主演)、哲也役の松山歩夢さんの印象をお願いします。
 達生役の中山さんは、撮影インするまでほとんどお話する機会がなかったので、どういう方なのかなって緊張していましたけど、結構元気で明るくて人懐っこい方で、達生とのギャップを感じました。けど、しっかりとした大人な面もお持ちで、現場では3人のバランスも取って下さいました。

 哲也役の松山さんは、自分から話しかけて下さるなど、率先してキャストの距離を縮めてくれる方だったので、役柄同様に、昔からの関係性や、3人の距離感を作るのに、とても大きな役割を果たしてくれました。

 あとは、残念ながら私は参加していないのですが、お二人は一緒にサウナに行くなど、男の付き合いもされていたようで、役同様な関係性を深める努力をされていたと聞きました。私も誘ってほしかったです(笑)。

画像4: 「架乃ゆら」がW主演の映画『ナマズのいた夏』が公開。複雑な背景を持つ女性を演じ切り、「私の代表作を言える作品になってほしい」

――今回、本作に出演しての気付きはありましたか?
 結衣という人物に対して、今まで以上に、人間の核みたいな部分に対して考える時間が長かったので、これまでとは違ったアプローチができて、自分自身とても勉強になりました。あと共演したベトナム人のお二人は、本職の役者ではないこともあって、そのお芝居の雰囲気がとても瑞々しくて、素敵に感じました。私もそういうところを取り入れていきたいと思い、勉強になりました。

――ご自身の演技は?
 どうでしょう。自分では、これまでの出演作とはまた違う表情、芝居をお見せできたのではないかと感じています。役者としての名刺(代表作)と言える作品に、この『ナマズのいた夏』がなってくれたらいいなと思っています。

――ちなみに、お芝居をやりたいと思ったきっかけは?
 中学生の時は、とにかく目立ちたくて(笑)、何をすれば目立つのかって考えた時に、演劇部に入ればいいやって思ったんです。そこで初めてお芝居に触れて、すごく楽しい経験ができました。その後、セクシー女優になった時に、舞台やドラマへ出演する機会をいただくようになって。その時に、中学生の頃の原体験を思い出して、やっぱりお芝居って楽しいなって、より感じるようになったんです。それから自分でワークショップに通ったり、いろいろな作品を観るようになって、楽しさを倍増させていく中で、自分自身の課題もたくさん見つかるようになって、やればやるほど楽しくなるし、道が拡がるし、どんどん(芝居の)奥が見えてくるようになって! その感覚が新しいし、楽しかったので、すっかりお芝居に魅了されてしまいました。それで、もっとお芝居を深めていきたいと思ったことから、セクシー女優の引退を決意しました。

画像5: 「架乃ゆら」がW主演の映画『ナマズのいた夏』が公開。複雑な背景を持つ女性を演じ切り、「私の代表作を言える作品になってほしい」

――今後の目標は?
 女優をメインに、お芝居にどっぷり浸かった人生を過ごしていきたいです。加えて、特撮ものも大好きなので、ゆくゆくは特撮作品にも出演したいです。

――ところで、特撮好きはどこから芽生えてきたのですか?
 高校生の時に、特撮好きの友達に巻き込まれる形で、特撮ショーを見に行ったのがきっかけです。そこで、変身前のイケメンではなく(笑)、仮面を被ったヒーローの方に魅了されてしまって。以後は、一人でヒーローショーに行って、ちびっ子に交じって握手してもらったりしていました(笑)。お陰様で最近、特撮作品に出演することもできました! 顔は出ていますけど、きちんとスーツも着ていていますし、特撮の聖地での爆破シーンも経験してきました!

映画『ナマズのいた夏』

2025年2月8日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開!

<キャスト>
中山雄斗 架乃ゆら
松山歩夢 渡辺紘文 河屋秀俊 グエン・ティ・ザン グエン・ティ・バオ 山岡竜弘 川瀬陽太 西尾信也 古林南 岡村洋一 林田麻里 高崎二郎 清なおみ まなこ 平岡明純 大瀬勇希 細谷隆広 柴田愛之助

<スタッフ>
プロデューサー:宮西克典 中川究矢 監督:中川究矢 脚本:平谷悦郎 中川究矢 撮影:金碩柱 照明:市川高穂 録音:横山萌 助監督:國谷陽介 制作担当:天野修敬 スタイリスト:富丸晏菜 ヘアメイク:桑原里奈 美術:葉佐文香 VFX:東海林毅 スチール:中野愛子 カラリスト:大渕友加 アクションコーディネーター:柴田愛之助 セカンドユニットディレクター:佐藤周 セカンドユニット撮影:滝澤智志 ヘアメイク助手:中原優菜 演出応援:滝野弘仁 制作応援:牛丸亮 田原イサヲ 助監督見習い:仁藤颯太 車両応援:松下竜之介 宮下勇次 音楽:吉村和晃 主題歌「川辺にて」歌・作詞・作曲:寺尾紗穂 製作:ファブトーン 制作プロダクション:Power Arts Production 配給・宣伝:MAP 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
2024/日本/カラー/88分/シネスコ/5.1ch
(C)FABTONE

▼架乃ゆら 公式X

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