『オール・アバウト・マイ・マザー』、『トーク・トゥ・ハー』など心に残る作品を多々生み出しているスペインの名匠ペドロ・アルモドバルの話題作、しかも彼にとって初の長編英語劇がついに日本上陸。第81回ベネチア国際映画祭では金獅子賞に輝き、第82回ゴールデングローブ賞主演女優賞のドラマ部門で主演のティルダ・スウィントンがノミネートされたことも記憶に新しい。

 ところで英語には“セプテンバー・オブ・マイ・イヤーズ”(わが人生の9月)というフレーズがある。人生そのものを1年間に換算して、すでに4分の3が過ぎてしまった(もう4分の1しか残っていない)という意味だ。この映画の中心となるふたり、マーサとイングリッドは人生の秋を充分に迎えている。ふとしたきっかけで久しぶりに会ったふたりは、しばらくごぶさただった時期を補うかのように活発な交流を始めるのだが、マーサは自身の余命がわずかであることを知っていた。最期の日々をイングリッドの許で暮らしたいと考えたマーサは、自ら借りた家で彼女と一緒に暮らし始める。そして、誰もが予想するであろう(センチメンタルともいえる)展開へとなるのだが、さらにそこからハードというか現実をナマで突き付けてくるような展開がやってきて、「1人の女性の死と、いま社会で起こされている悲しくなるような現実のモロモロが、こんなにオーバーラップしていくとは!」と、監督・脚本を手が得たアルモドバルの技の細かさにふるえた。

 とにかくラストまで気が抜けないし、単なる「シニアの友情物語」に浸るような気持で行くと返り討ちにあうのではと思えるほどの強靭な作品だ。原作はシーグリッド・ヌーネスの「What Are You Going Through」、出演はティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニボラほか。

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』

1月31日(金)公開

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
原作:シーグリッド・ヌーネス「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」(早川書房 刊行)
出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニボラ
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:The Room Next Door|2024年|スペイン
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(C)El Deseo. Photo by Iglesias Mas.

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