「職人の姿」に接して、こちらの気持ちも引き締まる。幼い頃から絵を描くのが大好きで、映画も大好き。1970年代から手描きの映画看板で、台南の映画館「全美戯院」に数多くの映画ファンを呼び込んできた顔振発(イェン・ヂェンファ)氏にスポットを当てた一作だ。

 キャリアは50年以上、しかも台北映画祭(台北電影節)では貢献賞に輝いている。だが、少しも偉ぶらず、淡々としゃべり、黙々と描き続ける。新しい看板(キャンバス)を使っているわけでもないので、前の絵の上に書き足したりもするのだが、その「前の絵が、これから完成するであろう絵に変容していく過程」も実にスリリングだ。ただ、この仕事は視力に大きな負担をかけるらしく、網膜がひどく傷ついた末、現在の顔振発氏の右目はほぼ見えない状態であるという。しかし彼は現役の絵師としての道を今も歩んでいる。

画像: 台湾の手描き看板絵師・顔さんの肖像。「職人」の深淵に触れる一作『顔さんの仕事』

 監督は今関あきよし、ナビゲート役は今関と長い友人である三留まゆみが務める。彼女のフィルターを通して「顔さん」を感じる作品という印象も受けた。

映画『顔さんの仕事』

8月31日(土) より、新宿K’s cinemaほか全国公開

企画/制作/監督:今関あきよし
出演:顔振発 三留まゆみ  柏豪
撮影:三本木久城 録音・音楽:種子田博邦 制作:太田明子 / 杉山亮一 編集:鈴木理 編集助手:三宅優里奈 台湾地図挿絵・題字:ヤマサキタツヤ 協力:全美戯院 / 日本台灣新聞社 / 台湾師範大学 / Chingwen Hsueh / 国立音楽大学/ 山本周史 配給:MAP|配給協力:ミカタ・エンタテインメント 製作:映画「顔さんの仕事」製作委員会
2024/日本/カラー/64分/16:9 
(C)映画「顔さんの仕事」製作委員会

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