先ほどお知らせした通り、マランツは同社製プリメインアンプとSACD/CDプレーヤーのフラッグシップモデルを10月下旬に発売する。

●SACD/CDプレーヤー:SACD 10 ¥1,980,000(税込)
●プリメインアンプ:MODEL 10 ¥2,420,000(税込)

画像: 左が「MODEL 10」で右が「SACD 10」。どちらもシャンパンゴールドとブラック仕上げをラインナップする

左が「MODEL 10」で右が「SACD 10」。どちらもシャンパンゴールドとブラック仕上げをラインナップする

 そもそもマランツはSACD、CDのオリジネーターであり、フィリップスの伝統を受け継いだオリジナルDACを所有しているという自信と誇りを持っている。また自社開発したSACDドライブを世界中のハイエンドブランドに供給しているサプライヤーでもある。新製品のSACD 10は、それらの技術すべてをアップデートした、“コンパクトディスク再生機の集大成” として開発されたそうだ。

 そのためにはディスクに記録された信号を安定して読み取ることが必要という判断から、SACDドライブメカには自社製のSACDM-3を採用し、さらにCDデコーダー基板の部品を再選定することで音質改善を図っている。さらに回転による振動を他の回路に伝えないようにアルミ無垢材のメカベースを3層構造のボトムシャーシに固定している。またUSB DAC機能を使う場合には、ドライブメカの電源をカットして低ノイズ化も図っている。

画像: オリジナル・メカエンジンの「SACDM-3」を搭載。新たに、同社サウンドマスターによるチューニングも加えられている

オリジナル・メカエンジンの「SACDM-3」を搭載。新たに、同社サウンドマスターによるチューニングも加えられている

 デジタル信号処理には、オリジナルディスクリートDACのMMM(Marantz Musical Mastering)最新版が使われている。前段となるMMM-Streamに内蔵されたオーバーサンプリングフィルターで入力されたPCM信号を11.2MHz DSDに変換し、さらにノイズシェーパー処理も行う。

 後段のMMM-Conversionでは、そのDSD信号をアナログFIRフィルターでダイレクトにD/A変換するというシンプルな回路を構築。これによって原音に忠実なアナログ信号を再生できるという仕組みだ。そのアナログフィルターについても、これまではバッファICに8ch用を1基使っていたが、SACD 10では1ch用を8基に変更したことで、出力電流は3倍、逆に抵抗値が3分の1になり、ノイズ抑制を実現できたという。

 アナログ変換した信号を扱う回路もぬかりはなく、新型のHDAM、HDAM-SA3を用いたディスクリート構成のフルバランス回路で構成されている。他にもSACD10、MODEL 10には共通の電流帰還型ヘッドホン回路が搭載された。

画像: 「SACD 10」の内部構造。写真右側手前がDACのMMM-Conversion基板で、その上側がL/Rで分離したアナログ基板。その間にはシールドケースを設置して低ノイズ化を図っている

「SACD 10」の内部構造。写真右側手前がDACのMMM-Conversion基板で、その上側がL/Rで分離したアナログ基板。その間にはシールドケースを設置して低ノイズ化を図っている

 電源部はアナログ用とデジタル用を完全独立させ、それぞれに専用のトロイダルトランスとカスタム・ブロックコンデンサーを搭載して、安定した電源供給を実現している。トロイダルトランスは銅メッキされたシールドケースでカバーすることで不要輻射を抑え、外部からの飛び込みノイズも排除している。

 USB DACとして使う場合は、最大11.2MHz DSDと384kHz/32ビットのリニアPCMが再生可能。DSDはASIOドライバー(ウィンドウズ用)とDoPの両方式が使える。SACD 10のマスタークロックで制御を行うアシンクロナスモードにも対応済みという。さらにUSB Type-B入力にはPCからの高周波ノイズを排除するアイソレーション回路も採用するなど、高品質ハイレゾ再生への配慮も満載だ。

 その他、同軸/光デジタル入力からは最大192kHz/24ビットのPCMが、またUSBメモリーからも最大5.6MHz DSDと192kHz/24ビット PCMが再生できる。

 本体はMODEL 10と共通のデザインテイストで、横幅と高さも同一(奥行は3cmほど小さい)、LEDライトを上下左右に配置する構成も同じだ。アルミ削り出しのフロントパネル(最大45mm厚)とサイドパネル(最大15.8mm厚)も同様だ。MODEL 10との違いとしては、トップパネルが12mm厚のアルミ製(非磁性体)になっている。

画像: 出力端子はアナログバランスXLR/アンバランスRCAと、デジタル同軸/光、ヘッドホン端子を備える。その他にUSB DAC用としてUSB Type-B、同軸/光を搭載する。USB Type-Aからのメモリー再生も可能

出力端子はアナログバランスXLR/アンバランスRCAと、デジタル同軸/光、ヘッドホン端子を備える。その他にUSB DAC用としてUSB Type-B、同軸/光を搭載する。USB Type-Aからのメモリー再生も可能

 新製品説明会でSACD 10、MODEL 10とB&Wの「801D4」という組合わせの音を聴かせてもらった。

 まずMODEL 10を1台使った状態(スピーカーはバイワイヤリング接続)でウッドベースのSACDを再生してもらうと、無音から音が立ち上がり、その静寂さとキレのよさが印象的だ。弦の響き、低音の豊かさも心地いい。

 藤田恵美さんのヴォーカル曲では、ヌケ感が綺麗で、生々しい声が飛び出してくる。マイケル・ヘッジスのギター&ヴォーカルも高域までの伸びがよく、すっきりした音場再現が魅力的だ。さらにCD「ワルキューレの騎行」では、若干抑えた空気感ながら、輪郭がクリアーでスピード感のある再現に気持ちが高揚する。教会音楽の響きの自然さ、ストレスなく高域まで伸びていく女声が素晴らしい。

画像: マランツの試聴室で、MODEL 10とSACD 10の組み合わせで、B&W 801D4を再生してもらった

マランツの試聴室で、MODEL 10とSACD 10の組み合わせで、B&W 801D4を再生してもらった

 さらにF.C.B.S.モードでは、すべてが別次元の再現になる。801 D4それぞれをMODEL 10で駆動しているわけで、単純にお値段も2倍になるわけだが、音質の変化は2倍以上という印象だ。

 どの音源を再生しても、まず空間再現が広くなり、ダイナミックレンジもゆとりが出てきて、まだこれだけの情報がディスクに入っていたのかと驚いた。ヴォーカルのささやくような細かいニュアンス、唇の湿り具合まで見えるかのようだ。ジャズのビックバンドもライブ会場で聴いているかのような生々しさで再現される。DSD 5.6MHz音源では、ギターの響き、演奏の素早さをしっかり描き出すし、弦のふくよかな響きも力強い。S/Nがよく、ハイスピードな再現が楽しめた。

画像: USB DAC機能としては11.2MHz DSDの再生も可能

USB DAC機能としては11.2MHz DSDの再生も可能

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