20世紀に現れた、最大の影響力を持つ音楽アイコンのひとりといっていいだろう。レゲエ・ミュージックの魅力を世界に広め、愛と平和と団結を音にこめたカリスマ、ボブ・マーリーの生涯を描いた物語『ボブ・マーリー:ONE LOVE』が5月17日より全国上映される。リタ夫人や子供たちが製作に深く関わり、ジャマイカの首相や文化省もサポートしているという、超オフィシャルなドラマだ。監督はレイナルド・マーカス・グリーン、英国の俳優であるキングズリー・ベン=アディルがボブを演じる。

 主に描かれているのは1976年に銃撃を受けてから、悪性腫瘍の転移で亡くなるまでの約5年間。ライヴ・パフォーマンスは「当時を体験してみたかった」とよだれが出そうになるほど真に迫り、キングズリーは相当にすさまじい熱量でボブを自らに乗り移らせている。途中で時が戻り、1960年代の逸話も登場するが、そこで描かれるコクソン・ドッド(怖い)や彼の経営するスタジオ・ワンの描き方には、まるでタイムマシンで往時に連れていかれたような気分になるし、若きアイ・スリーズの存在感、“ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ”に鬼才ギタリストのジュニア・マーヴィンが加入するシーンなどからも目が離せない。傑作アルバム『エクソダス』(77年)のタイトル曲が生まれたきっかけや、なぜ、あの、決して派手とはいえないジャケット・デザインになったのか等が描かれるシーンも心に染みた。このあたり、音楽ファンにとっては核になる箇所だと思うので詳細は省くが、私にとっては「ジューイッシュ・メロディ」の強さを再認識した気分である。

画像: 全米および14の国と地域で初登場No.1を記録。音楽界のヒーロー、ボブ・マーリー奇跡の生涯を描く『ボブ・マーリー:ONE LOVE』

 さらに嬉しかったのはセリフだけではなく、登場する楽曲の歌詞もしっかりと翻訳されていること。「いいことを歌ってるな~」と、より鮮明にしみじみできる。「ラスタファーライ(日本語ではラスタファリ)」、「ハイレ・セラシエ1世」、「ジャー」などの専門用語(といえばいいだろうか)も飛び出すけれど、このあたりは、レゲエを好きになれば遅かれ早かれ知ることになると思うし、私は「いい歌を聴きたい」的な気持ちで劇場に通うファンが多いぐらいのほうが洋楽受容のファンが増えるのではないかと感じている。

 サウンドトラックは、第96回アカデミー賞にて短編ドキュメンタリー賞を受賞した『ラスト・リペア・ショップ』でも名音楽監督ぶりを発揮していたクリス・バワーズが担当。ベースの図太い響き、軽やかなドラムのリム・ショットを、音響の良い映画館で味わえるのは至高の喜びだ。

映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』

5月17日(金) 全国公開

出演:キングズリー・ベン=アディル、ラシャーナ・リンチ
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:テレンス・ウィンター、フランク・E・フラワーズ、ザック・ベイリン、レイナルド・マーカス・グリーン
全米公開:2月14日|原題:Bob Marley: One Love|配給:東和ピクチャーズ
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