「こんなアプローチもあるのか!」と頻繁に驚かされると共に、「まさに日本の風土を踏みしめている、この国ならではのホラー作品だ」と感服させられた。同時にカメラ・ワークは洗練されていて、こじゃれていると表現したくなるほどだ。

 日本ホラー界の重鎮として知られる清水崇が総合プロデュースを務め、監督は、これが商業映画としてはデビューとなる下津優太が担当(2021年に同名タイトルの短編映画で「第1回日本ホラー映画大賞」の大賞を受賞)。つまり、場数を踏んだ者と気鋭がタッグを組んだわけだ。主演の少女は、昨今、目覚ましい活躍をみせている古川琴音。いち早く彼女に注目し、フィーチャーした制作陣の先見の明もたたえたい。

 古川が演じる“孫”は都会の看護学校に通っている。ある日、祖父母が暮らす村へやってきた。久しぶりの再会だったのであろう、一見、なごやかにも見える交流ぶりだが、しだいに“孫”の頭は妙な疑問でいっぱいになっていく。恐怖に目覚めれば目覚めるほど、それに正比例するかのように彼女のまわりの危機が加速してゆく。そのうち、見ているこちらも、カオスに巻き込まれていることがわかる。スクリーン越しとはいえ、一度鑑賞してしまえば、もう、われわれも傍観者ではないのだ……そんな、いやおうなく巻き込んでくるような生々しさが、この作品にはある。たびたび挿入される食事シーン、祖父母の張り付いたような笑顔の、なんと不気味なことか。

画像: 「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマを下敷きにした意欲作。下津監督の長編第一弾『みなに幸あれ』

 「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマが下敷きであるという。最後に幸せになるのは誰か、気の抜けないパッセージが続く。

映画『みなに幸あれ』

1月19日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

主演:古川琴音
出演:松大航也 犬山良子 西田優史 吉村志保 橋本和雄 野瀬恵子 有福正志

原案・監督:下津優太 総合プロデュース:清水崇 脚本:角田ルミ 音楽:香田悠真 主題歌:「Endless Etude (BEST WISHES TO ALL ver.)」 Base Ball Bear 製作:菊池剛 五十嵐淳之 企画:工藤大丈 プロデューサー:小林剛 中林千賀子 下田桃子 助監督:毛利安孝 川松尚良 統括:古賀芳彦 撮影:岩渕隆斗 照明:中嶋裕人 録音:紙谷英司 美術:松本慎太朗 スタイリスト:上野圭助 メイク:木戸友子 CG:橘剛史 宣伝プロデューサー:小嶋恵理 製作:KADOKAWA ムービーウォーカー PEEK A BOO 制作プロダクション:ブースタープロジェクト 配給:KADOKAWA
2023/日本/89 分/5.1ch/ビスタ/カラー
(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会

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