ソニーは、360 Reality Audioの音楽制作が可能な背面開放型モニターヘッドホン「MDR-MV1」を5月12日に発売する。

MDR-MV1 市場想定価格¥59,000前後(税込、5月12日発売)
●型式:オープンバックタイプ●使用ユニット:40mmダイナミック型●音圧:100dB/m/W●再生周波数帯域:5Hz〜80kHz●インピーダンス:24Ω(1kHz)●最大入力:1500mW●質量:約223g(本体)

画像: ソニーが、背面開放型モニターヘッドホン「MDR-MV1」を5月12日に発売。360 Reality Audioの3D音場を、ホームスタジオで体験できる

 同社ではこれまでも、音楽制作現場に向けたモニターヘッドホンをラインナップしてきた。しかし最近は音楽制作の主流が大規模なスタジオからホームスタジオに移行しているという。ソニーではこれを踏まえて、音響制作に技術で寄り添った製品展開をスタートしている。

 特に最近は音楽配信で空間オーディオ、イマーシブオーディオが話題を集めていることもあり、立体的な空間表現に優れ、自社が持つ360 Reality Audioの技術を活かしたモニターヘッドホンを送り出すことで、クリエーターを盛り上げようという狙いだという。

 ソニーはスタジオ向けに、360 Reality Audioの制作ツールとして「360 Walk MixCreator」を提供済みだが、そのミックスには13基のスピーカーが必要で制作環境としてはハードルが高い。特にホームスタジオでは立体音響制作ツールとしてのヘッドホンが求められることになる。

 この問題を解消する技術として「360 Virtual Mixing Environment」(360VME)を開発、MDR-MV1に搭載した。360VMEはマイクを使った測定を行うことで個人に最適化したデータを盛り込み、ヘッドホンで実音源に近い3Dサラウンド空間を再現する技術だ。こちらについては以前麻倉怜士さんの連載で紹介しているので、興味のある方はチェックしていただきたい。

 MDR-MV1には汎用的な360 Reality Audioのパラメーターがプリセットされており、360 Walk Mix Creatorのユーザーであれば、システムにつなぐだけでヘッドホンでの立体音響制作環境が手に入ることになる。

 製品としては、プロの現場での使用にも配慮し、長時間使用を可能にする快適な装着性(スエード調人工皮革イヤーパッドと、側圧を感じにくい構造を採用)や、ねじ式の着脱式ケーブル(長さ2.5m)、6.3mm→3.5mm変換ケーブルも付属するといった配慮も行われている。

画像: イヤーパッドにはスエード調の人工皮革素材が使われている

イヤーパッドにはスエード調の人工皮革素材が使われている

 ヘッドホン自体は背面開放のオープン型で、制作者の意図を正しく再現できるよう、正確な2ch再生に配慮している。ドライバーユニットは専用に開発されたもので、5Hz〜80kHzという幅広い帯域をカバー。低音域での再現性が高く、超高音域の再生と高感度再生を実現している。

 またドライバー背面には独自の音響負荷ダクトを直結することで振動板の動作を最適化、低域の過渡特性を改善し、充分な量感を備えた低域と中音域の分離感を両立、リズムも正確に再現してくれる。

画像: 専用開発された40mmドライバーユニット。下の写真で3箇所突き出ている部分が音響負荷ダクト

専用開発された40mmドライバーユニット。下の写真で3箇所突き出ている部分が音響負荷ダクト

 なおMDR-MV1は配信コンテンツの360 Reality Audio音源を楽しんだり、ハイレゾ音源のモニター用としても充分なクォリティを備えている。しかもインピーダンスは24Ωなので、ウォークマンなどのDAPでもドライブ可能だ。実際にMDR-MV1とNW-WM1ZM2の組み合わせで音を確認してみたが、心地いい広がり感や、力強いヴォーカルを楽しむことができた。

 今回はソニーミュージックのクリエイターと協業して音質を改善、クリエイターが求める音をソニーが技術として再現することを目指した。そのため、従来の音楽鑑賞、リスニング用途とは作り方から違っているとのことだ。

画像: メディア・インテグレーションの渋谷LUSH HUBでは、MDR ~VM1を使ったスタジオ制作環境の展示も

メディア・インテグレーションの渋谷LUSH HUBでは、MDR ~VM1を使ったスタジオ制作環境の展示も

 また今回、MDR-MV1のユーザーに対して360VMEを最適化する測定サービスもスタートする。こちらはメディア・インテグレーションが担当するもので、同社のMIL STUDIO(目黒区)で測定を行い、バーチャライザーソフトのパラメーターを提供してくれる。

 このパラメーターを360 Walk Mix Creatorにインストールすれば、測定したMILStudioの音場がMDR-MV1で再現できるという。サービスの開始時期などは未定だが、代金は500ドル前後を想定しているそうだ。

画像: 同じく渋谷LUSH HUBには13chスピーカーを備えた360 Reality Audio体験コーナーもあり

同じく渋谷LUSH HUBには13chスピーカーを備えた360 Reality Audio体験コーナーもあり

 

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