マランツの新世代AVアンプラインナップの最後を飾る一体型フラッグシップモデル「CINEMA 40」が正式に発表された。価格は¥506,000(税込)で、3月下旬の発売を予定している。

 同社では昨年、AVアンプラインナップの再構築を発表し、スリムタイプの「CINEMA 70s」、一体型「CINEMA 50」、セパレートタイプのフラッグシップ「AV10」「AMP10」を順次リリースしてきた。今回のCINEMA 40はそのトリを飾る9.4ch一体型モデルとなる。

画像: 幅と高さはセパレートモデル「AV10」とまったく同じ。奥行のみCINEMA 40が9cm小さい

幅と高さはセパレートモデル「AV10」とまったく同じ。奥行のみCINEMA 40が9cm小さい

 担当者によると、過去のAVアンプではコストやスペックを重視した商品企画が行われることもあったという。しかし今回のラインナップでは “音質” を重視してコストを投入、カテゴリーの枠を超えたマランツサウンドへの挑戦を行っている。特にCINEMA 40はそれが顕著とのことだ。

 DSPチップにはGriffin Lite XPを搭載し、Dolby Atmos、DTS:X、Auro-3D、MPEG-H(360 Reality Audio)、MPEG-4 AACのデコードに対応。プロセッシングは最大11.4ch処理が可能なので、内蔵の9chパワーアンプに外付け2chパワーアンプを加えることで、5.4.6や7.4.4システムも楽しめることになる。5.1chなどのチャンネルベースのコンテンツであっても「Dolby Surround」や「Neural:X」で3Dサウンドにアップミックスして再生する。

 加えてIMAX Enhanced認定製品であり、デジタルリマスターされたIMAX Enhancedコンテンツの再生に最適化されたサウンドモード「IMAX DTS」「IMAX DTS:X」が使用可能という。これにより、Disney+などで配信されているIMAX Enhancedコンテンツを、作り手の意図に忠実に再現できることになる。

 回路面では、Hi-Fiコンポーネントに匹敵するチャンネルセパレーション、空間表現力を実現するために、9chのパワーアンプをすべて独立した基板にマウントした。さらに、それぞれのアンプをフルディスクリート回路で構成することにより、チャンネル間の音のつながり、立体的な音響空間への没入感を実現している。

画像: 9枚の独立基板が並ぶパワーアンプブロックは、中央がセンター、その両サイドがSL/SR、次がリアHL/HRといった具合に左右対称に配置されている。写真左が大型のEIコアトランス

9枚の独立基板が並ぶパワーアンプブロックは、中央がセンター、その両サイドがSL/SR、次がリアHL/HRといった具合に左右対称に配置されている。写真左が大型のEIコアトランス

 肉厚なアルミ押し出し材を使用したヒートシンクに9枚の独立したパワーアンプ基板を取り付け、放熱性と制振性に優れる構造を採用。実用最大出力は235W(6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動)で、低能率なスピーカーでも、余裕をもって駆動することができる。

 そのアンプを支える電源回路にはリスニングテストによって厳選された高音質パーツを贅沢に搭載した。ブロックコンデンサーにはCINEMA 40専用に開発されたカスタムコンデンサー(15,000μF ×2)を採用、電源トランスにも大型のEIコア(CINEMA 50から25%大型化)を採用することで、大音量再生時にも余裕をもった電源供給を実現している。

 また11.4chすべてのプリアンプ回路には、マランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」が採用された。従来モデルではAVアンプ用に最適化したHDAM回路が使われていたこともあるが、本機のHDAM-SA2回路は、Hi-Fi機器と同じ定電流回路を備えた構成になっている。その結果、HDAM-SA2の特長である広帯域にわたるフラットな周波数特性と安定した位相特性、低ノイズ、高いスルーレートに加え、より豊かな情報量とサウンドの密度感の向上を実現したという。

 入力セレクター、ボリュウム、出力セレクターもそれぞれの機能に特化した高性能カスタムデバイスを用いて信号経路を最短化。信号経路の引き回しを排除するショートシグナルパスにより、透明感が高く情報量の豊かなサウンドを目指した。

画像: HDAM-SA2搭載の11.4ch電流帰還型プリアンプ回路。同社ハイファイコンポーネントと同等の定電流回路も奢られている

HDAM-SA2搭載の11.4ch電流帰還型プリアンプ回路。同社ハイファイコンポーネントと同等の定電流回路も奢られている

 なお上記の通りCINEMA 40は11.4chのプリアウトを装備しており、さらに使用しないパワーアンプを信号ラインから切り離す「プリアンプモード」も搭載されている。9chすべてのパワーアンプの動作を停止できるだけでなく、チャンネル毎に個別にオン/オフの設定も可能という。

 最近のマランツAVアンプの特長として、サブウーファー出力を4系統備えており、音量レベルとリスニングポジションまでの距離を個別に設定できる。また4系統のサブウーファーすべてから同じ音を再生する「スタンダード」と、各サブウーファーの近くにある「小」に設定されたスピーカーの低音を再生する「指向性」の2モードも選択可能だ。

 HDMI端子は、入力7系統、出力2系統(Monitor 1/2)のすべてで8K/60pや4K/120p信号のパススルーに対応した。ゲームユーザーへの配慮もなされており、HDMI2.1の新機能である「ALLM(Auto LowLatency Mode)」「VRR(Variable Refresh Rate)」「QFT(Quick Frame Transport)」の再生が可能。HDR信号は、HDR10、Dolby Vision、HLG(HybridLog-gamma)に加え、HDR10+およびDynamic HDRに対応済みという。

画像: CINEMA 40のリアパネルは、中央右寄りに11.4chのプリアウトが搭載されている。スピーカー端子は同社の流儀に従って横並びに配置

CINEMA 40のリアパネルは、中央右寄りに11.4chのプリアウトが搭載されている。スピーカー端子は同社の流儀に従って横並びに配置

 ネットワーク再生はHEOSテクノロジーで対応。Amazon Music HDやAWA、Spotifyといった音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオはもちろん、ローカルネットワーク上のミュージックサーバーやUSBメモリーに保存した音源を再生できる。

 空間オーディオで採用されているMPEG-H Audio(360 Reality Audio)のデコード機能も搭載しており、Apple TVやAmazon Fire CubeといったデバイスからのHDMI信号を通して再生できるとのことだ(HEOSは現時点では空間オーディオには非対応)。

 ハイレゾ音源については、DSDファイルは5.6MHzまで、PCM系ファイルは192kHz/24ビットまで再生する。DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessのギャップレス再生にも対応しているので、クラシック音楽やライブ音源でも曲間で音が途切れることはない。

 なおCINEMA 40はプレミアムキャビネット採用モデルで、セパレートタイプのAV10、AMP10同様に白河ファクトリーで生産されている。フロントパネルはAV10と同一デザインで、素材も同じものが奢られている(トラップドアのみ異なる)。容積はCINEMA 50比で約20%アップしている。

画像: マランツの視聴室で、CINEMA 40(写真手前左)のパフォーマンスを体験させてもらった。スピーカーはB&Wの5.2.4構成

マランツの視聴室で、CINEMA 40(写真手前左)のパフォーマンスを体験させてもらった。スピーカーはB&Wの5.2.4構成

 先に開催された説明会で、CINEMA 40のパフォーマンスを体験させてもらった。まずSACD/CDプレーヤー「SA-10」のアナログ出力をつないで、角田健一ビッグバンドから「シング・シング・シング」やダイアナ・クラールの「ライク・サムワン・イン・ラブ」、アンドレア・バッティストーニ&東京フィル「春の祭典」といったディスクを再生してもらう。

 どの楽曲も低音の迫力が顕著で、バランスの整った、密度の濃い音場が描き出される。楽器の描写も緻密で、ステージ上での配置、音源位置などがはっきりわかるほどの再現力だ。ダイアナ・クラールの声も伸びやかに響いてくる。

 UHDブルーレイからは、『グレイテスト・ショーマン』『トップガン マーヴェリック』のドルビーアトモス音声をチェック。『グレイテスト〜』の歌唱シーンでは、ヴォーカルが明瞭なだけでなく、声に力がこもっている。低域の迫力も充分で、ピラミッド型の安定した音場が構築されていた。

 『〜マーヴェリック』は冒頭からダークスターの発進シーンまで再生してもらった。冒頭の空母からの発進から「デンジャー・ゾーン」までのシークエンスは、クリアーさと迫力が両立したもので、映画への没入感も際立つ。ケイン海軍少将(エド・ハリス)の頭上をダークスターが飛んでいくシーンでは、まさに頭の真上を機体が通り抜けていく。上品で、力強い再現性を持ったサラウンド空間はとても貴重だと感じた。

「CINEMA 40」の主なスペック

●パワーアンプ数:9ch
●定格出力:125W×2(8Ω、20Hz〜20kHz、THD 0.05%)
●実用最大出力:235W(6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動、JEITA)
●周波数特性:10Hz〜100kHz(+1、-3 dB、ダイレクトモード時)
●接続端子:HDMI入力×7(8K対応入力)、HDMI出力×3(8K対応出力×2)、コンポーネント映像入力×1、コンポジット映像入力×2、アナログ音声入力×5、Phono入力(MM)×1、デジタル音声入力×4(光×2、同軸×2)、11.4chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドホン×1、ネットワーク×1、USB×1、他
●Bluetooth対応コーデック:SBC(受信、送信)
●消費電力:710W(待機時0.2 W、通常スタンバイ)
●寸法/質量:W442×H188×D413mm(アンテナを寝かせた場合)/15.1kg

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