甘く切ない138分、そう呼ぶ以外にない力作だ。「背徳」はこんなにも人を生き生きと、危険なほど輝かせるものなのか。本年度のアカデミー賞 国際長編映画賞部門の韓国代表に選出、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞したのもうなずける。
舞台は韓国。本当にシンプルに言うと容疑者の中国人女性(夫を崖から突き落としたという容疑)と韓国人男性刑事が惹かれ合う物語だ。先にどんどんのめりこんでいくのは刑事のほうなので、見方によっては女性が彼を色じかけにかけた-----という解釈も成り立つはずだがなあ、と見ていったのだが、「そんな単純なものではないな」と思うまでにさほど時間はかからない。結果として私の心に強力に伝わってきたのは、濃厚な“同志としての敬愛”である。容疑者と刑事の間に、どうしてそのような心のつながりが生まれたのか。それが気になると、物語にさらにのめりこまざるを得なくなる。
刑事の妻、容疑者の新たな夫もスパイス役となり、話は広がり、劇的なエンディングへとたどりつく。少女のように生き生きした表情から、隈だらけのような疲れ切った表情まで見事に演じきったのは、ハリウッド進出を果たしているタン・ウェイ。刑事を演じるパク・ヘイルはアクションスターでもあるだけあって、軽々とした身のこなしで事件に立ち向かう。カメラワークも十分個性的、とくに取り調べ室の撮り方には「かっこいい」と声をあげたくなった。
脚本・監督はパク・チャヌク。BTSのメンバーRMが繰り返し鑑賞したことをSNSやYouTube、自身のTV番組などで何度も報告したことで、韓国では一躍人気に火が付いた。2月17日から全国ロードショー。
映画『別れる決心』
2023年2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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