2020年のCESリポートで、ローランドの未来型デジタルピアノを報じた。「“これぞ未来のデジタル・ピアノだ” ローランドの近未来コンセプトモデル「GPX-F1 Facet」が素晴らしい」( https://online.stereosound.co.jp/_ct/17332623 )というタイトルで、多面体で構成された、クリスタルのようにキラキラ光るコンサート・グランドピアノ型のコンセプト・モデル『GPX-F1 Facet』を紹介した。

 今回のCES2023でのデジタルピアノも刮目。「ローランド創業50周年記念モデル」という平凡な名前の試作機だが、中味はもの凄くユニークで、未来的だ。

画像: これがドローン・スピーカー。現在様々なタイプの静音ドローンをテストしている

これがドローン・スピーカー。現在様々なタイプの静音ドローンをテストしている

画像: いまは気球スピーカーで実験中

いまは気球スピーカーで実験中

 なんとドローンを鳴らすのである。ドローンにスピーカーを取り付け、いやスピーカーにドローンを取り付け、ピアノの上から下に向けて鳴らすのである。何と斬新! CES会場ではドローンは釣られていたが、音は出ず。まずはヘリウム風船の下にスピーカーを取り付けるという実験が進んでいるという。

 CESのデモンストレーションはイメージで、将来的に静音ドローンを飛ばすという。音源的にはホールトーンやコンチェルトのオーケストラ音などが考えられるが、デジタルピアノ用のサブスピーカーという位置づけでなく、もっと広くホームシアターシーンでも活用できそうだ。

 いつもは数十のドローンスピーカーが床に待機しているが、これから6本のハイトスピーカーを使ったコンテンツを聴くとしたら、6つのドローンが飛び上がり、上映中はずっと空中に留まり、音を出し、終わったら、元の位置に戻って格納。ちょうどロボット掃除機が充電のためにベースに戻るイメージだ。

画像: 「ローランド創業50周年記念モデル」。キャビネット部は国産ナラ材を使用し、カリモク家具が製作した。コンセプトは宝石箱

「ローランド創業50周年記念モデル」。キャビネット部は国産ナラ材を使用し、カリモク家具が製作した。コンセプトは宝石箱

画像: このエッジ部分に全面拡散スピーカーを搭載

このエッジ部分に全面拡散スピーカーを搭載

 このローランドのデモンストレーションを観て、感じたのは、既成概念に囚われてはだめだということだ。ドローンスピーカーなら、取り付け場所、配線や電源(もちろんバッテリー)などの問題が皆無だ。今後の静かに浮遊するドローン開発に期待したい。

 それはともかく、このピアノは現時点でのローランドのデジタルピアノ用の技術を結集し、最新のモデリング音源が搭載されている。現場で弾いてみたが、とても自然なタッチで、強弱が奏者の思うままという感じ。音のグラデーションも繊細で、いかにもデジタル的な強弱のコントラストではなく、アナログ的なテクスチャーが、指と耳と、そして脳に心地好かった。

 残念ながらドローンスピーカーの音は聴けなかったが。この最新音源の音と、鍵盤フィーリングには大いに感心した。ローランドの過去のデジタルピアノの名機、EP-10、RD-1000、JD-800、V-Piano All Silver、Supernatural Pianoの音と音場がサンプリング再生できるのも、ファンにはちょっとした魅力だ。

 本モデルは5台試作し、これから世界を回ってデモンストレーションするという。みなさんにも聴く、弾くチャンスがあるかもしれない。その時、果たして、ドローンは飛ぶか?!

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