Speaker System
フィディリティムサウンド
NC7 V2
¥160,000(ペア、税別)
※NC7 V2 MW=コンビネーション(メープル&ウォールナット)モデル
¥168,000(ペア、税別)
※NC7 V2 WN=ウォールナットモデル
●型式:フルレンジ・バスレフ型●使用ユニット:フルレンジ・7cmコーン型●感度:86dB/W/m●インピーダンス:5.4Ω●寸法/重量:W190×H360×D250mm/5.8kg●問合せ先:(株)フィディリティムサウンド info@fidelitatem-sound.jp
メタル振動板によるフルレンジで評価の高いマークオーディオは、現在はコンサルティングの立場にあるマーク・フェンロン(Marl Fenlon)氏が1999年に設立。中国で丁寧にドライバーを製造する同社は、本国HPによると3人のオーナー体制で運営されているらしい。そのうちの1人である中島紀夫氏が主宰するフィディリティムサウンド(千葉県八千代市)から、画期的なMAOP振動板の7cm口径フルレンジ「MAOP7 V2」を搭載するシステムが登場。木材と表面仕上げの異なる2タイプが用意されている。
MAOPはマイクロアーク・オキシデイション・プロセス(Micro-Arc Oxidation Process)の略。アルミニウム合金の振動板を強電圧(700V)を加えたアルカリ電解槽に長時間(1〜2週間)浸漬させることで、無数の気泡を持つ多孔質の振動板に変化させる特殊処理である。某社のセラミック振動板も似たような処理と記憶しているので、MAOP振動板は硬く軽量で、しかも共振しにくいという理想的な物性を有していると推測できる。ボイスコイルには平角形状(エッジワイズ)の導体が使われているという。
試聴機器はアキュフェーズの単体DACであるDC1000を送り出しに、ウエスギのU・BROS280Rプリアンプと同U・BROS120Rパワーアンプである。オーディオ専用NASのfidataとのUSB接続でデジタルファイルを試聴音源とした。
最初に聴いたのは、ウォールナット無垢材を両サイドに、他の4面をハードメープル無垢材で仕上げたNC7 V2 MWコンビネーション。艶消しウレタンの塗装仕上げである。
一聴して想像していた以上のワイドレンジさに驚いた。ラルペッジャータの「ハレルヤ」では、クロスオーバー素子が介在しないことによる音のスムーズさが発揮され、カウンターテナーのヴォーカルとアコースティック楽器の伴奏が立体的な描写で眼前に現れる。スティングの新譜から「ラッシング・ウォーター」は、強烈なキックドラムも素早く応答する。変形楕円形状のポートのおかげか、ポートが効いているのだがバスレフ臭さを感じさせない。ジャズ・トランペットの類家心平「Haoma」は鋭角的な管楽器の響きを直接的に聴かせる、ストレスフリーの爽快感。設計の巧さも感じさせる広帯域フルレンジだ。
もう1台は全面がウォールナット無垢材で、フロントバッフルの両側にメープル材をあしらったNC7 V2 WNウォールナット。ウレタン光沢仕上げが施されている。こちらで聴く類家心平のトランペットは、エンクロージュアの響きが僅かに抑えられているのか、音がより視覚的に感じられた。スティングでは躍動感の豊かさに変化はないのだが、重心がやや低くなり安定感が高まったよう。「ハレルヤ」で聴く立体的な音の構築もやはり見事。
驚異的なワイドレンジさが魅力のMAOP7 V2の魅力が際立つ、小粋なシステムだ。