マランツから、先般告知のあったAVセンターの新ラインナップ「CINEMA series」が正式に発表された。価格、カラリング、発売時期は以下の通り。

CINEMA 50 ¥286,000(税込、ブラック、12月上旬発売)
CINEMA 70s ¥154,000(税込、ブラック/シルバーゴールド、12月下旬発売)

画像: 「CINEMA 50」

「CINEMA 50」

 同社ではこれまで一体型の「AV8805A」を筆頭に4モデルのAVセンターをラインナップしていた。新しいCINEMA seriesではフラッグシップモデルが「AV 10」「AMP 10」のセパレート型となり、その下に一体型のトップモデル「CINEMA 40」がラインナップされる。

 そして今回登場したのが、一体型の中堅機「CINEMA 50」と薄型・最廉価モデルの「CINEMA 70s」だ。両機とも、イマーシブオーディオのドルビーアトモス、DTS:Xや4K/8K放送で使われているMPEG-4 AAV(2ch/5.1ch)の再生に対応し、8K/40Gbps対応のHDMI入出力を備えている。

 それぞれの特長としては、CINEMA 50は9chパワーアンプを内蔵した一体型で、本機だけで5.1.4や7.1.2での再生が可能。加えてCINEMA 50は11.4chのプロセッシングに対応しているので、外部パワーアンプを追加することで、最大5.4.6や7.4.4でのサラウンドが楽しめることになる。

画像: 6系統のHDMI入力はすべて8K/60pに対応する。プリアウトは11.4chを装備

6系統のHDMI入力はすべて8K/60pに対応する。プリアウトは11.4chを装備

 ちなみに4系統のサブウーファープリアプトはそれぞれ独立しており、各出力で音量レベルと試聴距離を個別に設定できる。4つの出力からすべて同じ音を再生する「スタンダード」とそれぞれのサブウーファーの近くにある<スモール>判定されたスピーカーの低音を再生する「指向性」の2モードの切り替えも可能とのことだ。

 例えば部屋の四隅にサブウーファーを設置して「指向性」を選んだ場合に、サラウンド右やトップリア右スピーカーが<スモール>判定されたとしても、それらの低音を右後方に置いたサブウーファーで再生できるので、これまで以上に低音の移動感が明瞭に再現できることになる。最近はリアやトップスピーカーに重低音を割り当てるサウンドデザインも増えているので、そういった作品を再生する場合には有用だろう。

 またCINEMA 50では「プリアンプ」モードが進化し、各チャンネルを内蔵アンプで鳴らすか、プリアンプモードを使うかといった選択が、個別で可能になった。プリアンプモードを選べば、使用しないパワーアンプの動作を停止できるので、高品位と省電力が実現可能。地球に優しい新機能といえるだろう。

画像: 高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を搭載したプリアンプ基板

高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を搭載したプリアンプ基板

 CINEMA 50のプリアンプ回路にはマランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」が使われている。もちろんこれまでも同様のケースはあったが、それらはAVセンター用に組まれたHDAMだった。今回のCINEMA 50ではハイファイモデルと同等の回路が初めて搭載されているとのことで、さらなる品質向上が期待できそうだ。

 9chパワーアンプは、パーツや回路設計の自由度の高いフルディスクリート構成を採用。電源部のEIコアトランスやカスタムコンデンサーについても、電源としてこうあるべきという発想から選ばれており、コストも充分かけられているようだ。実用最大出力は220W(6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動)で、バイアンプ駆動にも対応する。

 接続端子はHDMI入力6系統のすべてで8K/60p、4K/120p、HDR10+、HDCP 2.3を受付可能。HDMIの「MONITOR1」出力はeARC対応だ。他にも先述の11.4chプリアウトや4系統のデジタル入力(光×2、同軸×2)も備える。ちなみにスピーカー端子は、ケーブルをつなぎやすいようにという配慮から、本体下側に横一列に並べられている。

 なおCIENMA 50では、フロントパネル裏側(表示部の後)にスチールインナーと呼ばれるシールドが加えられ、構造強化とノイズカットを実現している。

画像: CINEMA 50のフロントパネル背面には構造強化を兼ねた鉄板製のシールドが追加されている

CINEMA 50のフロントパネル背面には構造強化を兼ねた鉄板製のシールドが追加されている

 音楽ストリーミングやインターネットラジオ、NAS等のネットワーク再生にはHEOSを使用。Amazon Music HD、AWA、Spotifyなどのロスレス・ストリーミングも高品質で楽しめる。DSD、WAV、 FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生にも対応しており、クラシック音楽や、ライブ盤などを聴いても曲間で音が途切れることはない。対応フォーマットはリニアPCMが最大192kHz/24ビット、DSDは5.6MHzまで。この他Bluetoothの送受信機能も備えている(コーデックはSBC)。

 オートセットアップには従来同様にAudyssey Mult EQを採用。CINEMA 50では高精度のフィルター解像度で補正を行う「Audyssey Mult EQ XT32」が奢られている。さらに今回、有料アプリの「Audyssey Mult EQ Editor」を購入することで、単体では設定できない詳細な項目の調整も可能になり、部屋に起因する音響的な問題も解消できるという。

 その他に、周波数特性だけでなく、部屋の反射やスピーカーの位置ずれに起因する音の遅延を測定、補正する「Dirac Live」のアップデートも予定されている(2023年の有償ファームウェアアップデートを予定)。

画像: 「CINEMA 70s」は、写真のシルバーゴールドの他にブラックをラインナップ

「CINEMA 70s」は、写真のシルバーゴールドの他にブラックをラインナップ

 シリーズ末弟のCINEMA 70sは7.2ch仕様の一体型で、高さ109mmのスリムデザインが特長。新世代のマランツを象徴する筐体デザインが与えられている。同社ではこれまでも薄型デザインのAVセンターが好評だったそうで、新シリーズでもそれを継承した形になる。

 とはいえイマーシブフォーマットへの対応は万全で、ドルビーアトモス、DTS:X、MPEG-4 AACの再生が可能。7chパワーアンプを内蔵しているので、CINEMA 70sだけで5.1.2のサラウンドが楽しめる。プリアウトは7.2chまでの対応だが、外部パワーアンプの追加による音質向上や、パワーアンプダイレクト入力のあるプリメインアンプとの組み合わせによる、オーディオシステムとの共有もできる。サブウーファーは2台まで接続できる。

画像1: マランツAVセンターの新ラインナップ「CINEMA 50」「CINEMA 70s」が12月に順次発売。“新しい価値観の提案”を目指し、音のクォリティだけでなく、リビングに調和するデザインを実現

 内蔵パワーアンプは、CINEMA 50同様にフルディスクリート構成で、上級機でも用いられる高音質パーツを多数採用し、より高解像度で情報量の豊かな、サウンドを実現している。パワーアンプ回路に電源を供給するブロックコンデンサーにはCINEMA 70s専用にサプライヤーと共同開発したカスタムコンデンサー(6,800μF×2)を採用。さらに、25Aの大電流容量に対応する整流ダイオードを用いることにより、高速かつ安定した電源供給を実現している。

 ネットワーク再生機能のHEOSもCINEMA 50と共通で、Amazon Music HD、AWA、Spotifyといったロスレス・ストリーミングにも対応。対応フォーマットも最大でリニアPCM 192kHz/24ビットとDSD 5.6MHzで、CINEMA 50と同一だ。

 自動音場補正機能は「Audyssey Mult EQ」を搭載。最大6ポイントでの測定結果をもとに、スピーカーの距離、レベル、およびサブウーファーのクロスオーバー周波数を最適な状態に自動設定してくれる。有償アプリのAudyssey Mult EQ Editorも使用可能だ。

画像2: マランツAVセンターの新ラインナップ「CINEMA 50」「CINEMA 70s」が12月に順次発売。“新しい価値観の提案”を目指し、音のクォリティだけでなく、リビングに調和するデザインを実現

 先日、マランツの試聴室で両機の最終の音を確認するチャンスがあった。まずCINEMA 70sと、同じく薄型モデルの「NR-1711」をアナログ入力の2chで聴き比べると、CINEMA 70sではS/Nが向上し、音のキレ、スピード感も増した印象になる。ヴォーカルも若やいで、力が漲ってくる。2chとはいえスピーカーのB&W「801 D4」をしっかりドライブする駆動力を備えていることも驚きだ。

 上位機のCINEMA 50に変えると、音のボディ感が増し、声の品位、艶感まで再現される。細かい音の再現性が向上して、ステージ全体がより緻密に表現されるようになった。このあたりが、プリアンプ部にHDAM-SA2を搭載した恩恵かもしれない。

 UHDブルーレイでドルビーアトモスの映画作品を再生すると、静かなシーンの風のそよぎがリアル。一転して爆音がずんと響くが、その低音ももたつくことがなく、キレよく再現されている。街中のカーチェイスでの疾走感、防弾ガラスに当たる銃弾の音など、思わず首をすくめてしまうほどだ。

 マランツの新AVセンターラインナップは、2ch、マルチチャンネルを問わす、これまで以上のスピードと実体感、臨場感を楽しませてくれるシリーズに進化している。残る上位2ラインの登場が楽しみだ。

「CINEMA 50」の主なスペック

●定格出力:110W×2(8Ω、20Hz〜20kHz、THD0.08%)
●実用最大出力:220W(6Ω、1kHz、THD10%、1ch駆動、JEITA)
●周波数特性:10Hz〜100kHz(+1、-3dB、ダイレクトモード時)
●接続端子:HDMI入力×6(8K対応)、HDMI出力×3(8K対応×2)、アナログ音声入力×5、Phono(MM)×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2、11.4chアナログプリアウト×1、ゾーンプリアウト×1、ヘッドホン出力×1、LAN×1、USB(フロント)×1、他
●Bluetooth対応コーデック:SBC
●消費電力:680W(待機電力0.2W、通常スタンバイ)
●寸法/質量:W442×H165×D404mm(アンテナを寝かせた場合)/13.5kg

「CINEMA 70s」の主なスペック

●定格出力:50W×2(8Ω、20Hz〜20kHz、THD0.08%)
●実用最大出力:100W(6Ω、1kHz、THD10%、1ch駆動、JEITA)
●周波数特性:10Hz〜100kHz(+1、-3dB、ダイレクトモード時)
●接続端子:HDMI入力×6(8K対応×3)、HDMI出力×1(8K対応)、アナログ音声入力×3、Phono(MM)×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1、7.2chアナログプリアウト×1、ゾーンプリアウト×1、ヘッドホン出力×1、LAN×1、USB(フロント)×1、他
●Bluetooth対応コーデック:SBC
●消費電力:250W(待機電力0.2W、通常スタンバイ)
●寸法/質量:W442×H109×D384mm(アンテナを寝かせた場合)/8.7kg

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