市川崑監督による往年の名作『犬神家の一族』が4Kデジタル修復版で復活してから一年。またまたKADOKAWAから驚愕のニュースが届いた。数ある角川映画のなかでもとりわけ人気の高い1979年の劇場公開作品『戦国自衛隊』が4Kデジタル修復版として帰ってくるのだ。全編に渡ってエネルギーが漲る、まさに角川映画全盛期を代表する一作と断言しても異論は無かろう。
先の『犬神家の一族』4Kデジタル修復版が好評をもって受け入れられ、角川映画祭での上映に足を運んだファンも多く、UHDブルーレイも予想以上のヒットになったと聞く。『犬神家の一族』4Kデジタル修復版制作リポートの最終回でも触れていたように、筆者にとっても本作の4Kデジタル修復版での登場はまさに “悲願” だったのである。
『戦国自衛隊 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』
￥18,480（税込、10月28日発売）
●DAXA-5873●本編138分＋特典110分以上/4KUltra HD Blu-ray＋Blu-ray＋特典Blu-ray＋CD 計4枚組●カラー/ビスタサイズ●1979年●日本●音声：[UHD]日本語2022 Remix Dolby Atmos、日本語 劇場オリジナル4chステレオ、日本語 劇場オリジナル 2chモノラル、［BD］日本語 劇場オリジナル4chステレオ、日本語2.0chステレオ、日本語2005 Remix 5.1chサラウンド、英語 吹替2chモノラル●字幕：日本語字幕●発売・販売：KADOKAWA
※『戦国自衛隊 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』のご予約はこちら ↓ ↓
既報の通り、10月にはUHDブルーレイでのリリースが予定されている。それに先駆けて2Kダウンコンバート版が時代劇専門チャンネルでオンエアされたばかりだ。8月28日（日）の日本映画＋時代劇4Kでのピュア4K放送も待ち遠しい。
今回の4Kデジタル修復版の制作はKADOKAWAと本作の “初号ラボ”（撮影ネガの現像から始まり、合成やタイトル入れ等作品の仕上げ工程を担当。当時、初号プリントを制作した現像所）でもある旧東洋現像所ことIMAGICAエンタテインメントメディアサービス（以下、Imagica EMS）が手掛けている。作業に携わったスタッフも『犬神家の一族』と同じ布陣が敷かれ、心強い。
4Kデジタル修復化にあたって使用したフィルムは35mmのオリジナルネガ。「幸運にも大きなダメージはなく、フィルムのRGB調整が数値化された当時のタイミングシートが現存していたこともあり、『犬神家の一族』ほどの苦労をすることはなかった」とImagica EMSのスタッフは語る。
劇場公開時の姿を再現するために、撮影監督の藤澤順一（当時は撮影部助手）が監修として参画。4K/SDR版だけでなく、UHDブルーレイに収録される4K/HDR版の監修にも携わっている。
藤澤に本作の思い出を訊ねてみると「それはもうたいへんのひと言ですよ」と笑う。当時は撮影部の助手のなかでもセカンドだったので、フォーカスを担当。ヘリからぶら下がる千葉真一を同じく飛行中のヘリに据えたカメラで捉えるシークエンスでのフォーカス合わせには「勘だけが頼り。とにかく苦労しました」。
今回の監修作業のテーマは「オリジナルのトーンを大事にしたい」と語る。新たに完成した4Kデジタル修復版でフィルム時代の作品ならではの力強さやフィルムそのものが持つ力を藤澤はあらためて再確認したという。「4Kでこういったフィルム作品をアーカイブしておくことは本当に大切なんです」。
今回の4K映像を監修した、撮影監督の藤澤順一さん（当時は撮影部助手）にもお話をうかがっている
筆者も4Kデジタル修復版は時代劇専門チャンネルでの2K/SDR放送だけでなく、Imagica EMSで行われた4K/SDR版の初号試写でも既にその出来映えを目にしている。本作の場合も4Kスキャニングからレストア、グレーディングにはたっぷり時間がかけられていることは一目瞭然だ。
従来のマスターとは一線を画す4Kマスターならではの解像度。旧HDマスターではやや赤味を帯びていた全体のトーンがナチュラルになり、暗部の情報もしっかり掘り起こされている。オリジナルの画調の持ち味はそのままに、ブラッシュアップされた新たなグレーディングには感心することしきり、である。とりわけこれまで埋もれていた“青”系の色味が鮮やかに蘇っていることには目を見張った。
オプチカル合成が多用されたタイムスリップのシーンでマスターとして使われているデュープネガはフィルムの性質上、劣化の進行が早い。カットごとにフィルムのコンディションにはばらつきがあったようだが、シークエンス内の画の統一感がしっかりと出ている。なにより出演者がみな旧マスター版よりも若々しく見えるのだから不思議だ。
“究極にして最終形態” のパッケージを目指し、過去に発売されたLDやDVD等も細かく検証している。写真左上が公開当時のタイミングシート
併せて4K/HDRマスターもImagica EMSのグレーディングルーム内のモニターでいくつかのシークエンスを見る機会があった。パッケージ版では本作の4K/HDRはドルビービジョン対応となる。オーディオビジュアル的にはこのポイントは見逃せない。追ってリポートしたいと思う。
『戦国自衛隊』4Kデジタル修復版。実は音声トラックの再現には『犬神家の一族』よりもかなり手がかけられている。それが劇場公開時に主要都市、一部の劇場での上映時に用いられた4chステレオサウンド版（フロントL/C/R＋モノーラルサラウンド）の復元だ。もちろんパッケージに収録される新たなドルビーアトモス音声にも注目しておきたい。
サラウンド感たっぷりの角川フェニックスロゴから始まるこの2種類のトラックがまさに感涙もの。出色の出来なのである。その制作時のエピソードとインプレッションについては……次回へと続く。（本文敬称略）
「ジャケットどれにしよっかなキャンペーン」は、8月25日23時59分締め切り！ 投票はお早めに
『戦国自衛隊 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』の発売決定に合わせ、公式Twitter（@kado_cine）にて、ジャケット写真の絵柄を投票で決める「ジャケットどれにしよっかなキャンペーン」を開催中だ。上記A〜C案の3種類の絵柄の中からアナタのお気に入りを選んでツイートすると、投票が多かったものが製品に採用される。締め切りは8月25日23時59分なので、ぜひお気に入りのジャケットに1票を投じていただきたい。
©KADOKAWA 1979
