この分冊版の第1弾が、昨年12月に発売したPart-1「スピーカー篇」であり、今回発売するPart-2「アンプ篇」が、その第2弾というわけです。
まずは上掲の写真をご覧ください(以下、本文から引用)。
「ウェスタン・エンスージァストのみならず、オーディオファイルを自認する方がこの写真を初めてご覧になったとしたら、“凄い!”と一言つぶやき、我に返るまで口を開いたまま、本をタテにしたりヨコにしたりしながら嘗めるように見つめ続けるか、あるいは意外にシンプルな、アンプとは別物の重電用機器のように感じるか、おそらく反応は、二つに一つではないかという気がする。……」
そして「本体裏のカヴァーを外して見て、驚いた。この、何という凝縮感! お馴染みのウェスタンならではの小判型トランス類や四角いコンデンサー類が、ぎっしりと隙間なく、しかも整然と配置されているのである。
その間は、銅の単線に綿被覆を施したワイアーで確実に配線されている。すでにこの時点で、ウェスタン独自のワイアリング・テクニックが確立されていたことも驚きだ。
さらなる驚きは、この『8-A』アンプの出力がわずかに0.19W! だという事実である。なぜ、その程度の小パワーを得るために、ここまでの物量投入が必要なのだろう。現代のアンプからすれば想像だにできないほどの贅の尽し方、高音質へのこだわりである。……」
上掲の写真2点と引用文は、ウェスタン・エレクトリック(WE)が1921年12月12日に発表した『8-A Amplifier』の詳解ページに掲載したものの一部です。加えて、本書では、別掲の[主な記事内容]のとおり、高名な『41』-『42』-『43』をはじめ『86』や『91』など、ウェスタン・エレクトリックの代表的なシアター用アンプや、『7-A』『25-B』『34-A/B』などのコンシューマー用アンプについて、多彩なアングルからの美しいカラー写真や、豊富な回路図・説明図や特許図などを用いて、詳細に解説しています。
主な記事内容
■ウェスタン・エレクトリック銘器撰
新 忠篤
●Amplifiers Ⅰ
8 Amplifier/9 Amplifier/10 Amplifier/
41 Amplifier/42 Amplifier/43 Amplifier/
46 Amplifier/49 Amplifier
●Amplifiers Ⅱ
7-A Amplifier/14-A Amplifier/25-B Amplifier/
34-A/B Amplifier/59-A Amplifier/D-95036 Amplifier
●Amplifiers Ⅲ
86 Amplifier/87 Amplifier/TA-7387 Amplifier/
91 Amplifier/92-B Amplifier/118-A Amplifier/
105-A/B Amplifier/106-A/B Amplifier/120-A/B Amplifier/
121-A/B Amplifier/124-A Amplifier/141-A Amplifier/
142-A/B Amplifier/Westrex A-11+R-11 Amplifier
■Equipment Bulletin
Electrical Research Products Inc.
[資料集]
8-B Amplifier/9-A Type Amplifier/10-A Type Amplifier/
11-A Amplifier/41 Type Amplifier/42 Type Amplifier/
43 Type Amplifier/46 Type Amplifier/55-A Amplifier/
57-A Amplifier/59 Type Amplifier/60-A Amplifier/
61-A Amplifier/62-A Amplifier/86 Type Amplifier/
1086-B Amplifier/87 Type Amplifier/91 Type Amplifier/
92-B Amplifier/95-A/TA-7388 Amplifier Set/
TA-7467-A Amplifier/TA-7477 Amplifier
●『8-A』-『9-A』アンプリファイアー
●『41』-『42』アンプリファイアー
●『86』アンプリファイアー
●『91』アンプリファイアー
ウェスタン・エレクトリック(WE)とは?
今日の情報化時代を拓いた先駆者であり、映画や音楽を気軽に楽しめる社会――その礎を築いたメーカーそれが[ウェスタン・エレクトリック]です。
「ウェスタン・エレクトリック(WE)」は、正式発足が1882年という、実に永い歴史を誇るメーカーです。そのルーツは、アレキサンダー・グラハム・ベルによる電話機の発明ですが、その電話の普及に伴って業績を拡大し、やがて世界有数の電信・電話会社AT&Tへと発展します(つまり、今日の情報化時代を拓いた先駆者といえるでしょう)。
一方で、多種多彩な研究を行なう「ベル・テレフォン・ラボラトリー」と、その製造部門を担うウェスタン・エレクトリックを併設し、今日につながる多大な業績を残してきました。
その業績の一端を列記すると、
①真空管の実用化と各種アンプ回路の開発、
②コンデンサーマイクの発明、
③ディスク・レコードのマイクやアンプを使った「電気録音法」の開発(これ以前はラッパ吹込み)、
④トーキー映画システムの開発(これ以前は無声映画)と高音質の徹底追求、
⑤ムーヴィング・コイル(ダイナミック)型スピーカーの実用化(これ以前はもっと単純な方式)、
⑥信号の2進数符号化(デジタル化)理論の発表、
⑦トランジスターの発明、
⑧ステレオLPレコードの開発、
など、すべてが今日の映画や音楽/オーディオの世界の根底に脈々と流れている音響理論およびテクノロジーです。
こうした卓越した理論や技術に加え、弛まぬ研究・実験の積み重ねの末に、WEは傑出した製品を次々と生み出してきました。
その初期の製品は、開発以来すでに約100年が経過していますが、それに完璧な修復を施し、念入りに調整すれば、現在でも他では得られない素晴らしいサウンドを聴かせてくれる逸品ぞろいです。
つまり、今日の映画や音楽/オーディオの世界を築き上げたパイオニアであり、常にその最高峰に君臨し続けた類稀(たぐいまれ)なるメーカー――それがWEなのです。