まずは、製造元である城下工業の来歴を略記したい。1923年、長野県上田にて製糸業として創業。やがて電線事業、語学学習用ヘッドフォン、カセットレコーダー、CDプレーヤー、語学やコンピューターの学習教室システムなど、電気機器の製造にシフト。その輸出も盛んだ。2009年にはオーディオ用真空管アンプSW-T10を開発。そのシリーズ機全体で3千台を越える販売実績を上げている。 そして2013年、サウンドウォーリア(Sound Warrior)デスクトップシリーズを発表。最新のデジタルオーディオを含めたオーディオブランドとして、製品群を充実させて今日に至っている。
サウンドウォーリア
SWL-T20
¥64,800(税込)
●定格出力:3.2W+3.2W●入力端子:PHONO(MM)1系統、ライン3系統(RCAアンバランス×2、3.5mmステレオミニ)●入力感度/インピーダンス:5mV(PHONO)、410mV(ラインRCA)●スピーカー出力端子:1系統(6Ω〜8Ω)●使用真空管:12AX7(曙光)×1、6BQ5(曙光)×2●寸法/重量:W200×H112×D290mm/3.7kg●備考:真空管保護グリル付属●問合せ先:城下工業(株) TEL 0268(22)0612
本機SWL-T20は、外観を含めて前作SW-T10をよく踏まえた設計だ。6BQ5を2本、12AX7を1本使用したステレオ・プリメインアンプであり、出力段は5極管のシングル動作だがカソード帰還を採用している。回路は公表されていないが、ごく標準的な2段構成と思われる。高音/低音独立のトーンコントロールを搭載し、それをバイパスさせることもできる。また、MMカートリッジ用のフォノイコライザーを搭載。ライン入力は2系統。手前にせり出した操作部は木製で、真空管保護のケージともども真空管の造形を意識した意匠だ。
なお、本機と組み合わせるスピーカーを同梱した、SWL-T20SET1も用意されている。10㎝径ウーファーと25㎜径ソフトドームトゥイーターを用いた2ウェイのコンパクトスピーカーで、背面には低域増強のパッシヴラジエーターを設けている。
まずはCDを試聴。出力3・2Wと小さいので、大型モニタースピーカーB&W800Dでは無理かと思ったが意外にも元気よく鳴った。低域のゆったり感や安定した帯域バランスを示して、オーディオ用として調整された音だとわかる。ダイナミックレンジの広い現代録音から高い解像感や精密な描写性能を得るためには、たっぷりコストを掛けた大型高級機の領分になってくる。本機では声の帯域の表現意欲が明快で、ジャズやオーケストラの厚い響きやソロ楽器の陽性の表情が楽しめる。小編成コンボの女性ヴォーカルは、ベースの弾力感やピアノの小躍りする様子、囁やき声の生っぽさなどけっこうな表現力を聴かせる。トーンコントロールは効き目が良好で、バイパスすると鮮度が向上する。
MMカートリッジで聴くアナログディスクは、LP盤より往年のシングル盤で活力を感じた。
今度は、スピーカーをセットモデルのSW-SP1に付け替えて聴く。ジャズ系のビート感が厚みのある低音に支えられてなかなか快適。ボサノバの滑らかなポルトガル語も抑揚豊かに発語されて、軽妙な官能美には感心させられる。使い勝手がよく多機能のアンプ+スピーカーセットで、快活にして音源による可塑性、柔軟性がある。
ほどよい音量で自分の好みの音楽と、リラックスして付き合うには好適だ。