オッポデジタル、パイオニアと、惜しまれつつも高級UHDブルーレイプレーヤーが販売終了となるなかで、期待の星として登場したフランスREAVON(リーヴォン)のUBR-X200、UBR-X100。いずれもディスク再生に特化した自社開発のモデルで、フランスで設計され、中国・深センの協力工場で生産されているという。
同ブランドを手がけるのは、パリの有力AV機器販売店、GROUPE ARCHISOFT(アーキソフト・グループ)。プレーヤーの基本システムは、パイオニアのUDP-LX800、UDP-LX500などと同様、MediaTek(メディアテック)が提供している模様だ。
実際、日本語対応のOSD画面デザインや、再生中のディスク詳細表示(HDRコンテンツのMax FALL/フレームごとの平均最大輝度、Max CLL/コンテンツの最大輝度の表示も可能)など、機能面ではUDP-LX800、LX500に通じるものを感じさせる。ただパイオニアの技術サポートは受けておらず、メディアテックが使用可能な技術の範囲でシステムを構築していると考えていいだろう。
両機の機能には違いがあるが、基本のシャーシ構造は同一
ここで両モデルの位置づけを復習しておこう。まずUBR-X200だが、SACD再生をサポート(HDMI出力でのDSD出力も可能)し、マルチチャンネルを含むRCAアナログ音声出力(7.1ch/2ch)、XLRアナログ音声出力端子(2ch)も搭載した高級ユニバーサルディスクプレーヤーだ。高品位パーツを奢った回路設計に加えて、シャーシ設計も高剛性を追求した正攻法の仕上がりで、本体重量は6.8kgとズシリと重い。
いっぽうのUBR-X100は映像DAC、音声DACともに搭載せず、デジタル接続に特化したスタンダードモデルで、SACDの再生機能もない。写真からもお分かりのように、リアパネルはきわめてシンプル。ただHDMI出力は2系統備え、映像、音声の分離接続が可能だ。
両者の関係性は明確だが、ここで私が注目したいのは、UBR-X100がX200譲りの高剛性シャーシ構造を採用していることだ。両機種とも1.6mm厚のシャーシベースを3mm厚のスチール製リジッドアンダーベースで補強するという手法を取り入れ、ディスク回転時の機械的な振動を徹底して抑えている。
クォリティの敵となる共振、振動の影響を軽減し、より高純度の映像、音声を送り出すのが狙いだが、通常、こうした手法は高級機に限定され、普及機にここまで物量を投じることはきわめて少ない。前に触れたパイオニアのUDP-LX800とUDP-LX500を見ても、シャーシ設計はまったく別物だ。
実際に本体を両手で持ち上げて、少し力を加え、ねじってみたが、シャーシの強さ、剛性感はまったくと言っていいほど変わらず、頑強で、リジッドなつくりを実感できる。ちなみに本体重量はUBR-X200の方が600gほど重いが、これは主にアナログ音声回路用として投入されたトロイダルコアトランスによるところが大きい。
スタンダードクラスとしては、贅沢な高剛性シャーシ。UBR-X100には「より多くの人にリーヴォンが目指すクォリティを堪能してほしい」という設計陣の熱い思いが込められているのである。
両機の主なスペックは表の通り。SACD再生の可否、アナログ音声出力の有無が大きな違いだ。UBR-X100もDVDオーディオの再生は可能。レガシー的なディスクにしっかり対応してくれるところがマニアには大きなメリットだろう。また、両機ともにDLNAによるハイレゾデジタルファイル再生にも対応している
REAVON
UBR-X100
¥143,000 税込
UBR-X100のリアパネル。HDMI出力を2系統備え、映像と音声の分離出力が可能。その他の出力端子はデジタル音声出力のみという潔い仕様だ
REAVON
UBR-X200
¥297,000 税込
UBR-X200のリアパネル。アナログ音声出力は2ch/7.1chを装備。DAC素子から別建てであり、各々のL/Rを聴き比べたところ、2ch出力が好ましいと判断し、こちらを使ってテストを行なった
UBR-X100
つくりのよさを実感できる、中庸な映像と贅肉のない音声
では早速、UBR-X100のパフォーマンスから検証していこう。今回は視聴用リファレンス機器としてJVCのプロジェクターDLA-V9R、デノンのAVセンターAVC-X8500HAを使用している。まずその素性を把握するために、BD『きみに読む物語』を再生。
空が赤く染まる夕暮れ時、静かな湖面を漕ぎだしていくボートが映し出されるオープニングを確認したが、画面全面にしっかりとフォーカスを合わせて、自然な色調、フラットな階調性で描きだしていく。
解像感、コントラスト感ともに中庸。ローライトにわずかなノイズのザワツキが感じられるが、これはコンテンツに入ったノイズをそのまま表示している印象だ。沈みゆく太陽が放す真紅、オレンジの光のグラデーションも破綻がなく、厚みのある色遣いで、メリハリの効いた映像を描き出していった。
水面を照らす光の反射や、アリーの乗っている高級車の硬質な金属感はなかなか見応えがあるが、反面、私の好みからすると、輪郭、ディテイルと、もう少し柔らかなタッチで表現したい。そこで画質調整を確認してみたが、シャープネスはミニマム値(リファレンスモード)で、これ以上下げられない。
地デジ録画(BD-R)のようなブロックノイズが目立つコンテンツも存在するため、画質の調整幅を広げてほしいというのが正直なところ。ただ今回はDLA-V9R側の映像モードを各種補正がキャンセルされる「THX」モードを選ぶことで、ノイズが抑えられ、より穏やかな画調に収めることができた。
続いてUHDブルーレイ『マイ・フェア・レディ』の再生。ドルビービジョン対応だが、DLA-V9Rとの組合せではHDR10での再生となる。花市場、競馬場、舞踏会と、豪華な舞台装置、贅を尽くした衣装、そしていかにも高価そうなジュエリーと、V9Rの「Frame Adapt HDR」機能との共演が功を奏し、明るさ不足を感じることなく、本物っぽさが際立つ。
そして社交界のイベント「ロイヤル・アスコット競馬」のシーン。イライザ(オードリー・ヘプバーン)が、黒いラインで装飾されたシルエットの細い白のドレスで登場するが、この生地の質感の生々しいこと。BD再生に比べると、S/Nに余裕があり、グレインノイズが目障りになることはなかった。
サウンドは贅肉のない引き締まった音像をくっきりと描き出す印象だ。スクリーンに自然に定位する歌声と、目の前に拡がる空間描写のバランスは良好。個性豊かなイライザの声はもう少ししなやかさが欲しいところだが、ニュアンスは豊かで、彼女の感情の起伏まで感じとれる。
HDMI接続で聴くCD再生は音の立ち上がりが素早く、軽快。聴き手に向かってグイグイと押し込んでくるような押し出しの強さは感じないが、定位は明確で、小気味のいいサウンドは悪くない。
ただCD再生を音質重視で楽しむのなら、同軸端子の接続がおすすめだ。反田恭平の「リスト:ラ・カンパネラ」の再生ではホールの空気感、雰囲気をていねいに再現し、音そのものの鮮度の高さが実感できる。中低域が気持ちよく吹き上がり、躍動感が増す印象で、剛性を追求した贅沢なシャーシ設計の恩恵をより明確に感じ取ることができる。
UBR-X200
比較で際立つのは映像の質感のよさ、アナログ音声出力も高品位だ
このままプレーヤーをUBR-X200に入れ換えて、再生スタート。接続は映像、音声ともにHDMI。
BD『きみに読む物語』でさまざまなシーンを見ていくと、映像の深みというか、艶というか、映像の質感からグレードの違いが実感できる。
シャープネスはやや抑えられ、ドレスの生地の風合い、肌のディテイル、髪の毛のグラデーションと、微妙な濃淡の描きわけがなめらかだ。全体にS/N感に余裕が生まれたことで、黒が艶っぽく、階調性もより豊かだ。
チャプター13のアリー(レイチェル・マクアダムス)が愛しの人、ノア(ライアン・ゴズリング)の家を訪ねていくシーン。強い日差しが照りつける中、木々の緑、深い青空が強調され、高級車ならではのライトブルーの塗装のよさ、複雑な造形が鮮明に描きだされる。
映像の4Kアップコンバート出力と2Kオリジナル出力を比較視聴したが、クォリティ差は少ない。ただV9Rとの組合せに限れば、見た目の解像感、輪郭の品位と、4Kアップコンバートではなく、1080/24pで入力した方が、好ましいように感じられた。
UHDブルーレイ『マイ・フェア・レディ』や如何に。さきほどのX100に比べると、グレインのざわつきが細かく、ドレスの柔らかな風合いも感じ取りやすい。黒のラインと白生地のコントラストを明確に描きだしながら、その中のディテイルがフワッと浮き上がる。微小信号、色再現、階調性と、細部の情報を曖昧にすることなく、しっかりと描きだしてみせた。
HDMI接続で聴くムービーサウンドについては、X100のキャラクターに近い。ただわずかながら穏やかに、柔らかなタッチで肌合いのいい聴かせ方となり、中低域の吹き上がりもやや余裕が感じられる。
試しにアナログ接続(2chバランス接続)でも確認してみたが、これが予想以上にいい。口の動き、表情までもが感じ取れるほどニュアンスが豊かで、イライザのかすれ気味の声の鮮度の高さにドキッとさせられるほど。
その歌声も吹き替えとは言え、あたかも彼女が自分の目の前で歌っているかのような生っぽさで、音の出口の大きさ、広さをダイレクトに実感させてくれる仕上がりだった。
続いてデビューから50年となる小椋桂のSACD『Stereo Sound ORIGINAL SELECTION Vol.13小椋桂』からNHKホールでの初コンサートから収めた「木戸をあけて-家出をする少年がその母親に捧げる歌-」を再生(アナログバランス接続)。
30歳前後の若き日の小椋のフレッシュな歌声が清々しく、彼自身が爪弾くアコースティックギターの響きの鮮度が高い。そしてスピーカーの音離れのよさはSACD再生ならでは。ライヴ収録ならではの空間の拡がりから、会場のスケール感、盛り上がりの様子まで感じとることができた。
よくも悪くも、ディスクに刻まれた情報をダイレクトに、あるがままに描きだすX100。これに対してX200はディスク情報をいったん受け止めて、自分なりの作法で、整えて描きだす円熟さを感じさせる。CD再生(同軸接続)を中心に、BD、UHDブルーレイディスクも楽しみたいというのなら、X100のコストパフォーマンスの高さが魅力的。ただクォリティ、機能性の両面で、頼れるユニバーサルプレーヤーを求めるのであれば、これという欠点が見当たらないX200をおすすめしたい。
UBR-X100を選ぶべきユーザーは……
>総合的コストパフォーマンスに優れたユニバーサルプレーヤーを探している
>UHDブルーレイ再生が中心
>SACDの再生は必要ない
UBR-X200を選ぶべきユーザーは……
>少しでも高画質/音質のユニーバサルプレーヤーが欲しい
>映像系再生ディスクはDVDやBDも想定
>SACDのマルチchの再生は外せない
本文の通り、リーヴォンの2製品ひと言で表すと、「よくも悪くも、ディスクに刻まれた情報をダイレクトに、あるがままに描きだす」UBR-X100と、「自分なりの作法で、整えて描きだす円熟さ」があり「これという欠点が見当たらない」UBR-X200。このことから、上記のような方々にそれぞれの機種をおすすめしたい。(編集部)
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本記事の掲載号は HiVi 2022年3月号