TVS REGZAは、現地時間の2022年1月5日からアメリカ・ラスベガスで開催されるテクノロジー見本市「CES(コンシューマー・エレクトソニクス・ショウ)2022」に出展する。そして本日、その展示内容が発表された。

 昨年のCESはコロナ禍の関係でオンラインのみでの開催だったが、今回は2年ぶりのリアル開催も行われるとして注目を集めている。そんな中、TVS REGZAでは6年ぶりにCESで展示を行うことになった。

画像: CES2022の展示イメージ

CES2022の展示イメージ

 現在TVS REGZAは、日本と一部のアジア地域でテレビを販売している(アジアではTOSHIBAブランド)。最近は日本国内でのテレビセールスが好調で、有機ELテレビ、液晶テレビともラインナップも充実してきている。同社ではこういった状況もあり、今後のグローバル展開も踏まえてCES出展を決定したという。

 といっても今回は具体的な製品展示ではなく、同社の持つ映像技術に関する展示という形になる。

 その中心になるのが、新開発映像エンジン「レグザエンジンZR α」だ。同社ではこれまでも様々なパネルを外部調達し、独自の映像エンジンを組み合わせることで高画質映像を実現してきた。レグザエンジンZR αはその最新チップで、3年をかけて開発されたという。

画像: レグザエンジンZR αを搭載した映像基板。写真右手前がレグザエンジンZR αのチップだ

レグザエンジンZR αを搭載した映像基板。写真右手前がレグザエンジンZR αのチップだ

 「想像を超えるリアリティ」「その場にいるかのような臨場感」「張り詰めた空気感」といった “本質” を追求し、新しい映像体験を実現しているそうだ。スペックとしては、最大29ビット幅の精度を備え、圧倒的なテクスチャー再現を実現、4K/120p入力での高画質処理も可能にしている。

 最大の特徴として、本格的なAIによる画像処理技術を導入している。具体的には、テレビの映像処理エンジンとして初めてハードウェアによる独立したDNN(ディープニューラルネットワーク)を内蔵。これにより映像解析が進化し、オブジェクトやシーンの解析・最適化の精度も向上している。なお、AIのベースである深層学習についても社内で開発しているとかで、将来的にはアップデートによる機能向上の可能性もありそうだ。

 今回のCES展示では、レグザエンジンZR αを搭載した4K有機ELテレビと、同じく4KのミニLEDバックライト液晶テレビが展示され、その画質をアピールするという。その主な機能は以下の通り。

画像1: TVS REGZAが、ラスベガスで開催されるCES 2022に出展。新開発の映像エンジン「レグザエンジンZR α」の多機能性をアピールする展示を行う

「立体感復元超解像技術」
 風景画像などで、肉眼で見ているようなリアルな奥行感を再現する機能。これまで、画面全体に超解像処理をかけると手前の被写体も背景も同じようにくっきりしてしまい、奥行再現が阻害されるケースもあった。

 立体感復元超解像では、AIで画像を部分ごとに解析して被写体と背景を識別し、被写体や近景には適切な超解像を加え、背景はエンハンスを弱めるといった処理を行う。これによって奥行感、空気感を損なわないリアルな立体感を再現できるようになっている。

画像: 立体感復元超解像技術のデモ。左がオフ(画面全体に超解像処理をかけたもの)で、右がオン。画面左側の木々のぼけ具合などに差があるのがわかるはず

立体感復元超解像技術のデモ。左がオフ(画面全体に超解像処理をかけたもの)で、右がオン。画面左側の木々のぼけ具合などに差があるのがわかるはず

「AIフェイストーン再現技術」
 従来の「美肌トーン」の進化版で、人は肌色の中でも特に顔の部分に着目していることを踏まえたもの。AIで映像から顔領域を検出し(複数の人物にも対応)、肌色がカラーシフトしていないかを判定する。

 ドラマなどで照明で色味がズレているような場合でも、より自然な肌色に戻してくれるので、ナチュラルで立体感のある映像として楽しめることになる。この機能は画面内の肌色にのみ有効で、他の色には影響がないのも特長だ。

画像: 入力された信号から、人物の顔をAIで検出して肌色が正しく再現できているかを判別する。写真の白い部分がAIが人の顔と判断したエリア

入力された信号から、人物の顔をAIで検出して肌色が正しく再現できているかを判別する。写真の白い部分がAIが人の顔と判断したエリア

「AIネット動画高画質アルゴリズム」
 ネット動画の特長に合わせて様々な処理を行い、コントラストと精細感を改善する機能。最近のネット動画では4K解像度も使われているが、ビットレートの制限等から階調情報が不足することも多い。そういった映像ではテレビ側でコントラストを上げていくと、背景にバンディングが目につきやすくなるそうだ。

 AIネット動画高画質アルゴリズムでは、そういった映像から被写体と背景を識別し、特に背景部分について、新開発のバンディングスムーサーを使ってバンディングノイズやブロックノイズを抑制、なだらかな階調として再現している。

画像2: TVS REGZAが、ラスベガスで開催されるCES 2022に出展。新開発の映像エンジン「レグザエンジンZR α」の多機能性をアピールする展示を行う

「放送波高画質アルゴリズム」
 レグザでは、従来から地デジなどの放送コンテンツの高品質化にも注力されていた。放送波高画質アルゴリズムはその最新版で、従来の「地デジビューティPRO」等に比べて超解像処理の回数を増やしている。

 これにより地デジ等の様々なノイズを低減させながら、同時に動きのあるシーンで発生する残像等も抑制、高精細でクリアーな映像を再現している。バラエティ等の字幕やワイプの中の顔に発生しやすいモスキートノイズも抑えてくれる。

画像3: TVS REGZAが、ラスベガスで開催されるCES 2022に出展。新開発の映像エンジン「レグザエンジンZR α」の多機能性をアピールする展示を行う

「ミニLEDコントロールアルゴリズム」
 レグザエンジンZR αは、液晶、有機ELといったパネルデバイスの種類を問わず、広く使える映像エンジンとして開発されている。そもそもの処理能力が高いので、それらのデバイスに最適化した処理内容をインストールすることで、パネルの能力を引き出せるということだ。

 ミニLEDコントロールアルゴリズムは、その名の通りミニLEDバックライトを使った液晶テレビ用の機能で、エリアコントロールで気になるハロ(漏れ光)を抑制しつつ、高いコントラスト再現を可能にする。

 具体的には実際のバックライト分割数よりも細かい仮想細分割エリアを設定し、それを使って実際のLED点灯値を細かく調整することで絵柄に応じた最適な明るさを実現できるとしている。同時に階調つぶれを監視しながら映像信号を補正する機能も組み合わせている。

画像: 左は従来のLEDバックライトで、右がミニLEDバックライト。バックライトの分割数が増えることで、制御はより複雑になるが、レグザエンジンZR αのスペックなら充分対応できるそうだ

左は従来のLEDバックライトで、右がミニLEDバックライト。バックライトの分割数が増えることで、制御はより複雑になるが、レグザエンジンZR αのスペックなら充分対応できるそうだ

 さて、気になるレグザエンジンZR αを搭載した製品の登場時期は、現時点では発表されていない。とはいえ同社の例年の製品リリース内容を考えると、来年度のフラッグシップモデルに採用されるものは間違いないだろう。今回展示された有機ELテレビとミニLED液晶テレビの両方で登場するのかなど、楽しみにしたいところだ。

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