瀬戸物のキャビネットで限定製作されたMC型カートリッジの新装ヴァージョン
JICO(ジコー)は、MM型フォノカートリッジの優れた互換交換針で世界的に知られる存在。その本社と工場は、大阪や神戸などの都市部から約200㎞離れている兵庫県の新温泉町にある。会社名は日本精機宝石工業株式会社である。
瀬戸彫・リモデルは、瀬戸物のキャビネットで限定製作されたMC型カートリッジの新装ヴァージョンである。硬質セラミックの瀬戸物は、焼結過程で僅かに収縮する。それを計算に含めて製作したのがオリジナルだ。リモデルと称する本機は、瀬戸彫を金属製ヘッドシェルと一体化したことが特徴。アルミと銅の合金素材を5軸の精密CNCマシンで切削加工したヘッドシェル部分は、流麗なフォルムで魅せる。MC型のコア部分は、マイクロリッジ針をボロン製カンチレバーに組み合わせた振動系を搭載。鉄芯を使った複層巻きの発電コイルにより、2mVの高出力を実現したと考えられる。その分、出力インピーダンスは130Ωと高めである。
管球王国リファレンスのシステムでは、ハイインピーダンス対応の昇圧トランス(エアータイト)と組み合わせることにした。アンセルメ指揮「三角帽子」は、音の勢いと力強さが印象的で、色彩的にも鮮やかなダイナミックな表現で楽しませた。笛の鋭い音色も突き抜けており、レンジ感の広さも特筆できよう。ドナルド・フェイゲンも締まった密度の高い音を聴かせ、スピーカーの前に音像を提示する、存在感の高い表現力に驚かされた。