今や、巷のヘッドホン/イヤホン再生の主流となっているのは完全ワイヤレスイヤホン。国内外のオーディオブランド、パソコン周辺機器メーカー、ガジェットブランド、さらにファンションブランドまでもがさまざまなモデルを発売している状況だが、1945年にフリッツ・ゼンハイザー博士によって創立されたドイツの名門ゼンハイザー社も、積極的な製品展開を行なっており、コアなヘッドホンファンからも定番として信頼されるブランドとなっている。
今回レビューするCX Plus True Wirelessは、同社が9月に発売したミドルクラスの最新鋭モデル。HiViベストバイ超激戦区のワイヤレスイヤホン部門Ⅱで5位になるなど、早速、高く評価されている。
名門ゼンハイザーらしく、音質を最重視した設計が特徴だ。特に本機のポイントとなる振動板で、同社最上位機種の「Momentum True Wireless 2」と同等のダイナミック型ドライバーを採用。ドイツ本社で開発された、虎の子ともいえるパーツがスライド投入される。
また、高音質コーデックへの対応にも注目したい。汎用的なSBC、AAC、aptXに加え、aptX Adaptiveもサポートしている。これは24ビットでの伝送を行なう音質に優れたフォーマットで、データ転送時のビットレートを280kbpsから420kbpsの間で可変させることができるので、音切れへの安定性も高く低遅延でもある(送信/プレーヤー側も対応していることが条件)。
その他、ノイズキャンセリング機能は、左右のハウジングにそれぞれ備わる2ビームフォーミングマイクを用いている。また、スマホ/タブレットにインストール可能な専用アプリが用意されており、音楽の再生指示やボイスアシスタント等の動作設定が可能。バッテリーの持ち時間は充電ケース併用で最大24時間。IPX4の防滴仕様も備えるなど、機能面のトレンドもしっかり押さえている。
では気になる音質はどうか?デジタルプレーヤーにアステル&ケルンのSE100を用い、aptXで接続して試聴してみた。ホセ・ジェイムズ「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」(44.1k㎐/16ビット FLAC)を再生すると、音色はフラットな帯域バランスを基軸としつつ、高域と低域をごくわずかにブーストする最近のトレンドを踏襲。特に、全体域のディテイル表現に優れており、ヴォーカルやベースの質感表現はソースに忠実だ。空間表現力も高く、ヴォーカルの位置が適切で、各楽器の距離感もよく伝わってくる。
最近発売された多くの完全ワイヤレスイヤホンと比べてみても、本機の音質表現はひとつ上のクラスに達していると言えるだろう。
それに、合計4基のマイクを搭載した事により通話品質も良好で、安価な製品で時折感じるボイスエコーもない。さらに側音(サイドトーン)機能により、通話時に自分の声を適度にモニタリングしながら通話できるのも快適。音楽再生だけにとどまらず、テレワークやビジネスで使える全方位的な完成度を持っているのもまた魅力である。