オルトフォンがMM型の最高傑作と自負するのが、楽聖ベートーヴェンの生誕250周年を記念する新製品のプレミアムモデル、2MブラックLVB250である。最大の特徴は、オルトフォンのMM型では初めてとなるボロン製カンチレバーの採用であろう。ダンパーのゴムも専用に開発されており、針先はシバタ針。発電コイルには純銀メッキ高純度銅線が使われている。
本誌リファレンス・プレーヤーのテクニクスSL1000Rに装着して本機の音を聴いている。出力電圧は5mVと大きいため、プリアンプのエアータイトATC5にとってもS/N感の点で大いに有利になっている。
ボロンカンチレバー+シバタ針という構成は、ともすれば大味な音になりがちなMM型カートリッジにトランジェント性能に優れた緻密な音世界をもたらした。フュージョングループのフォープレイ「ビトゥイーン・ザ・シーツ」は、まるでMC型を聴いているようなディテールの鮮やかさに加えて、高い出力電圧が反映されたダイナミックな音。ゲルギエフ指揮「春の祭典」も、音楽の重心が低く腰の据わった音を基調に、迫力満点の打楽器の連打がズシンと響く。ドナルド・フェイゲンも切れ込みの鋭いリズミカルな音だった。
ステレオ仕様の2Mは4機種あり、実は本機のボディはブラックとブロンズと同じ内容。すなわち、LVB250用の交換針を装着することで本機と同等の音質が得られるのだ。