スタイリッシュな「球体」スピーカーとして、根強い人気を誇るGallo Acoustics(ギャロアコースティックス)。美しく、可愛らしいデザインに目が奪われるが、その明瞭度の高さと、雄大なサウンドステージは聴きごたえ充分。これが“小さなハイエンドスピーカー”と言われる所以だ。
その上質なサウンドの秘密は、やはり個性的なエンクロージャーにある。同社の原点とも言えるスピーカーシステム、Nucleus Soloは、頑丈なアルミニウム板から加工した中空の12インチの球体をそのまま筐体とし、その表面には電解アルマイト加工が施され、硬く、精巧に仕上げられた。
この贅を尽くしたエンクロージャーは、歪みの原因となる共鳴、定在波を排除。入力された音源を素直に受け止め、あるがままに再現するハイファイ再生の象徴とも言える技術だが、現行モデルでも基本的な設計方針は変わっていない。スチール素材の表面には、熱処理されたパウダーコーティングが施され、オリジナル機同等の特性を備えた球体エンクロージャーを採用している。
今回の視聴では主力なる7.5cmユニットによるフルレンジ仕様のMicroと、10cmダブルウーファーに独自のCDT3(シリンドリカル・ダイヤフラム・トゥイーター)を加えた上級機、STRADA2の2モデルを用意した。それぞれのステレオ再生に加えて、円筒形のエンクロージャーが特徴的なアンプ内蔵サブウーファーTR-3Dを追加した2.1ch再生のパフォーマンスを検証していく。
SPEAKER SYSTEM
MICRO
¥55,000(ペア)税込
● 型式:フルレンジ・密閉型
● 使用スピーカー:75mmコーン型フルレンジ
● 出力音圧レベル:89dB/2.83V/m
● インピーダンス:8Ω
● 寸法/質量:φ102mm/795g
● カラリング:ホワイト、ブラック、レースレッド、グロスブラック、グロスホワイト、スカイブルー、アーバングレー、クリーム(以上、¥55,000ペア 税込)、ステンレス、ゴールド、ブロンズ(以上、¥66,000ペア 税込)
● 備考:1本売りも可
● オプション:オーダーメイドカラー可能、専用スタンド(MICRO STANDS、¥30,800ペア 税込)あり
● 問合せ先:フューレンコーディネート TEL 0120-004884
組み合わせるアンプはコンパクトかつスタイリッシュなデザインと、馴染みのいい上質なサウンドで高い評価を得ているニュープライムのIDA-8。パナソニックの有機ELテレビ、TH-65JZ2000の光デジタル出力をIDA-8へと送り込み、各スピーカーを駆動するというシステムだ。
球体シェイプの恩恵は明確。鮮度が高く雑味のないサウンド
まず手始めにMicroのステレオ再生で、テレビ放送のサウンドを主に野球中継で確認したが、開放感に富んだ、雑味のないサウンドに驚かされた。とにかく音の鮮度が高く、大音量、小音量に関わらず、音像が明確で、フォーカスがぶれない。球形エンクロージャーの恩恵は明らかだ。
本機は直径約10.2cmの球体スタイルのスピーカー。ソフトボールの国際大会で使われている3号級の直径は約9.7cmなので、ほぼ同じくらいのサイズとなる。ゴム製リングを使ってデスクトップ設置したり、写真のオプションスタンドでフロアスタンディングさせたりも可能。壁掛けや天井埋め込み用マウントも用意されている
今回はパナソニックの4K有機ELテレビTH-65JZ2000と組み合わせてみた。画面サイズと音のスケールのマッチングがちょうどフィットしていた。写真のラックはクアドラスパイアQAVM(¥147,400税込)
続いてそこにサブウーファーTR-3Dを加えた2.1chシステムでNetflixで配信されていた映画『マトリックス』を再生。まずTR-3Dを画面中央下に設置し、ほどよい音量レベル(音量調整位置は12時前後)に合わせて聴いてみたが、中低域の厚みが増すことで、音像のバランスが下がり、量感もがぜん豊かになる。
たださまざまなシーンで確認していくと、低音がやや遅れ気味で、キアヌ・リーブス演じるところのネオの声も、サブウーファーからも聴こえるなど、MicroとTR-3Dの音が若干かぶり気味だ。そこでTR-3Dのレベルをやや抑えると同時に、クロスオーバーのカットオフ周波数(50~180Hzで調整可能)を100Hz前後から80Hz前後に変更してみた。
この調整の結果、やや下方向からかぶり気味に聴こえたネオの声の明瞭度が増し、画面に自然に定位するようになった。反面、映像と音に一体感がでたことで、今度はアクションシーンなどで、わずかな低音の遅れが気になるようになってしまった。
この対策としてはサブウーファーの位相調整、設置位置自体を変更するというふたつの方法が考えられるが、まず位相を0度から180度に変更してみたところ、効果はてきめん。空間を切り裂くような効果音、その場を盛り上げる音楽と、激しい決闘シーンでも映像と音のズレはほとんど気にならず、ストーリーに集中できるようになった。
またサブウーファー位置の移動でも確かな効果が期待できるため、カット&トライで試してみるといいだろう。ちなみにリスニングポジションの後ろ側がハマるというケースもある。
SUBWOOFER
TR-3D
¥126,500(台)税込
● 型式:アンプ内蔵サブウーファー
● 使用ユニット:250mmコーン型
● アンプ出力:300W
●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA)、アナログ音声出力1系統(RCA)、スピーカー入力1系統、スピーカー出力1系統
● 寸法/質量:W275×H305×D345mm/12.4kg
ネット動画では迫力の低音が魅力の作品も多い。そこで純正サブウーファーTR-3Dを追加。IDA-8のプリ出力をTR-3Dにつないだ
本文にあるようにサブウーファーとステレオスピーカーを組み合わせて使う場合にはコツがある。TR-3Dの①レベル調整(どれくらいの音量で再生するか)、②カットオフ調整(どれくらいの音域で鳴らすか)、③位相調整(0度か180度のどちらがフィットするか)を行ない、MICRO側とのサウンドバランスを図る。TR-3D自体をどこに設置するかも重要ポイントだ。写真はIDA-8アンプの接続時の様子
気持ちいい音が見事なSTRADA2。思わず映像の世界に引き込まれる
続いて大音量のパワーハンドリングにも対応したダブルウーファーモデル、STRADA 2。最大の注目点は、やはり独自のトゥイーター、CDTにある。なんと既存のドライバーにとっては必須となるボイスコイル、磁気回路がない。信号はダイヤフラムの導電体の表面にそのまま流れる方式で、このためロスが少なく、拡散性にも優れるという。
まず単独で『マトリックス』を視聴したが、帯域に余裕があるためか、画面から拡がる音に厚みがあり、ネオの声も自然だ。また音量を思い切って上げても、窮屈に聴こえるような癖っぽさがなく、全帯域にわたって気持ちよく音が吹き上がる。サブウーファーなしの2ch再生で、この安定感、落ち着きは見事だ。
SPEAKER SYSTEM
STRADA 2
¥303,600(ペア)税込
● 型式:2ウェイ3スピーカー・密閉型
● 使用スピーカー:CDT型トゥイーター、100mmコーン型ウーファー×2
● 出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
● インピーダンス:8Ω
● 寸法/質量:W127×H343×D180mm/5.2kg
● カラリング:ステンレス、ブラック
●備考:専用スタンド(GSTRFS、¥74,800ペア 税込)、壁掛け用ブラケット/平置き用ブラケットあり(いずれも¥22,000/本 税込)
続いてサブウーファーTR-3Dを加え、シャーリーズ・セロンの圧倒的アクションで話題のNetflix映画『オールドガード』を2.1chで再生。TR-3Dの音量レベルは10時前後、カットオフ周波数は80Hz前後に調整している。
明確なセリフの定位といい、緻密な響きの拡がりといい、まさしくギャロ・アコースティックスの血統を感じさせる仕上がり。とにかく天井の高さ、奥行ともに、音の空間描写が豊かだ。冒頭部、静寂のなかの低音の効果音も、分解能が高く、クリアー。知らず知らずのうちに、その世界に引き込まれていく感覚は、ムービーサウンドとしては理想的と言っていいだろう。
MICROにつづいて、上級モデルのSTRADA 2もパナソニックの4K有機ELテレビと組み合わせてみた。まず2chステレオの状態でチェックし、その後TR-3Dを加えた2.1chシステムで各種ネット動画コンテンツを再生した
本作は、叫び声や銃声、ヘリの旋回音と、激しいアクションシーンが少なくないが、声、効果音、音楽と、いずれも大音量でも刺激的にはならず、あくまでも冷静に、スケール感に富んだ、反応のいいサウンドで楽しませる。この迫力、臨場感を一度体験したら、もうテレビの音に後戻りするのは難しい。
がっちりとした低域と明瞭度の高い中域、そして清々しい空間描写を持ち味にした上質なムービーサウンド。この音で、映画ががぜん楽しくなる。