澄み渡った音と敏感さが相乗的に高まった精緻さが印象的
英国ロクサンの創業者でアナログプレーヤーの設計者、トラジ・モグハダム氏が主宰するのがヴァルテレである。彼とは海外のショウで何度も会って話をしているので、ずいぶん時間をかけて日本市場に登場したものだと思う。MG1は中堅クラスのアナログプレーヤーで、フォノカートリッジは付属していない。
筐体は硬質で精度の高いアクリル製。きわめて精度の高い軸受けとプラッターは見事というしかない。センターピンが外せる仕様はロクサンがオリジナル。ベルト駆動のモーターは小型のACシンクロナス型である。プラッターの表面にはアナログ盤とインピーダンスが近いというキャスト製法の黒いアクリル板が貼られている。振動を遮断するトッププレートのカット構造もロクサンの流れを汲んでいる。設計者が同じなのだから当然か。
本機はディスクスタビライザーを使わないのが流儀。MC型のフェーズメーションPP-2000を装着して管球王国試聴室で聴いた音は、澄み渡った音と敏感さが相乗的に高まった精緻さが印象的だ。ワンポイントの先端を3個の精密球で受けるトーンアームの支持方式はユニーク。アンセルメ指揮「三角帽子」は音数の多さと豊かな空間の拡がりが好ましく、総じて曖昧さを排した音に思わせる。ダイレクト盤のデイヴ・グルーシンは、生演奏の緊張感を漂わせながら精緻な音を聴かせた。
トーンアームの調整箇所は多い。精密な針圧計を用意して音を詰めていきたい製品だ。
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