Amazon(アマゾン)から、今月初旬にFire TVシリーズの新機種「Fire TV Stick 4K Max」が発表された。
Fire TV Stick 4K Maxは、1.8GHzクアッドプロセッサーと2GバイトのRAMを搭載したことにより、アプリの起動がより速くなり、コンテンツ検索なども快適になっている。またFire TVシリーズとして初めてWi-Fi 6への対応も果たした。
4K解像度のコンテンツはもちろん、Dolby Vision、HDR10、HDR10+といったHDRフォーマットや、イマーシブオーディオのドルビーアトモスに対応し、臨場感あふれるサラウンド再生も再生可能。
そんなFire TV Stick 4K Maxは、実際どれくらい快適で、どんな画質・音質が楽しめるのか気になるところ。今回Fire TV Stick 4K Maxの視聴機を借用できたので、自宅のホームシアターで試してみた。
わが家ではこれまで「Fire TV Stick(第3世代)」を常用している。これをAVセンター、ヤマハ「CX-A5200」のHDMI端子につないで、映像はソニーの4K/SDRプロジェクター「VPL-VW1100ES」、音は7.0.4chスピーカーで鳴らすという構成だ。
Fire TV Stick(第3世代)は、クァッドコア1.7GHzプロセッサーと1GバイトRAMを搭載したモデルで、ドルビーアトモス音声には対応していたけれど、映像は2K解像度までしか出力できなかった。Fire TV Stick 4K Maxに交換することで、4Kで配信されているコンテンツがネイティブクォリティで楽しめるわけで、これは嬉しい進歩。
さっそくFire TV Stick 4K MaxをFireTV Stick(第3世代)と入れ替えて、初期設定をスタート。ここは画面の表示に従っていくだけで(アマゾンへの登録が済んでいれば)簡単に終了した。
Fire TV Stick 4K Maxのメニュー画面は、これまでと変わりはない。画面上側にお薦めコンテンツがランダムに表示され、中断に「ホーム」「探す」「ライブ」に並んでよく使うアプリが表示されている(カスタマイズも可)。右端の歯車マークから「設定」を行うのも同じ。
設定項目もFire TV Stick(第3世代)と同様だが、細かい点では違いもあった。「ディスプレイとサウンド」の「ビデオ解像度」では当然ながら4Kが選べるようになっているし、「オーディオ/ビデオの診断」という項目では、再生機器(AVセンターやプロジェクター)がドルビーアトモスに対応しているかや、映像の最大解像度、リフレッシュレート等もチェックできる。
一通りの設定ができたところで、コンテンツを再生してみる。その際の使い勝手は、確かにレスポンスがいい。カーソルの反応は大きな変化はない気がしたが、アプリの起動や画面の切り替わり時間が短縮されているので、操作にまつわるストレスがない。
動画再生を途中でやめた場合など、これまではブラックアウト後に少し待たされていたが、Fire TV Stick 4K Maxではすぐにメニュー画面が現れる。これなら色々なコンテンツをザッピング的に観ようと思った場合でも気分がそがれることはない。
なお先述のようにFire TV Stick 4K MaxはWi-Fi6にも対応しているが、わが家にはその環境がないのでこの点は未確認。ただし、Fire TV Stick(第3世代)はイーサネットアダプターを使って有線接続していたので、Fire TV Stick 4K Maxでも同様につないでいる。
つまりネットワーク接続という点では同一条件というわけで、それでもレスポンスに違いがあるから、これはFireTV Stick 4K Maxの処理速度が上がった証拠だろう。
さていよいよ画質・音質で違いがあるかを確認する。まず2Kコンテンツから、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を再生。
冒頭パリ市街での戦闘シーンでは、赤く染まった街並やエッフェル塔のディテイルが緻密。なかなかにクリアーで透明感のある映像だ。試しにFire TV Stick(第3世代)に戻してみると、大きく印象は変わらないが、輪郭などの描写はFire TV Stick 4K Maxの方が繊細かもしれない。
再生環境としては、Fire TV Stick(第3世代)の場合は2K出力された映像をプロジェクターで4Kにアップコンバート、Fire TV Stick 4K Maxの場合は内部でアップコンバートして4Kで出力していることになる(フレームレートはどちらも24p)。
つまり印象の違いはアップコンバートに起因するもので、ここは好みで選んでいいと思う。Fire TV Stick4K Maxの4Kアップコンバートもよくできていて、エヴァが使徒を迎撃するシーンでも、ボケたり違和感を覚えることもない。Fire TV Stick 4K Maxは4K出力で常用していいだろう。
続いてNetflixの4K/ドルビーアトモスコンテンツから、『テイラー・スウィフト レピュテーション・スタジアム・ツアー』を再生する。なおFire TV Stick 4K Maxのリモコンには「prime video」「Netflix」といった配信サービスへのダイレクトボタンが搭載されていて、これを押すと各アプリが起動する。この起動もとても速く、ヘビーユーザーには嬉しい改善ポイントだ。
『テイラー・スウィフト〜』をスタートすると、CX-A5200の表示部に「Atmos/DD+」の文字が出て、ドルビーアトモスのビットストリーム信号が出力されていることが確認できた。
このコンテンツは初見だったが、ライブステージ映像という事もあって照明環境が厳しい。そのため4Kらしい精細感のある部分と、おやっ? と思う部分が混在している。しかしきちんとライティングされたカットでは細かいラメが施された衣装の質感まで再現される。わが家のプロジェクターはSDR機だが、それでも会場の雰囲気を充分楽しむことができた。
ただドルビーアトモス音声はやや寂しい。全体的に音が薄めで、せっかくのアトモスなのに高さの表現が曖昧で、包み込まれる感じが弱い。試しにCX-A5200の「SURROUND:AI」を掛け合わせてみたら若干改善はされたが、低音の厚みなどもう一歩と思った。
まぁこれはコンテンツ由来なわけで、Fire TV Stick 4K Maxの能力とは関係ないはず。まずは4Kとイマーシブオーディオを手軽に楽しめるデバイスとして、Fire TV Stick4K Maxはとてもよくできていると感じた次第。これでお値段¥6,980(税込)というのだから、恐るべし。(取材・文:泉 哲也)