ASUSから昨年発売されたノートPC「Zenbook S14(UX5406SA)」の取材機を借用できたので、しばらくテストさせてもらった。
といっても普段はマックを愛用しており、こんなにじっくりWindowsマシンを使うのはWindows Vistaの頃以来、つまりほぼ10年ぶりになる(またはそれ以上)。そんなブランクがありながら、なぜ今回ZenbookS14を借用したのかと言うと、エンタテインメント用としてのパフォーマンスが高そうだったから。

「Zenbook S14(UX5406SA)」。W310.3×H11.9~12.9×D214.7mm、重さ約1.2kgと持ち運びやすいサイズだ
ノートPCとしてのスペックは、CPUにインテルCore7 Ultraプロセッサー(シリーズ2)を搭載し、OSはWindows 11 Homeで、最新のAI機能も体験可能とのこと。ボディはASUS独自のCeraluminum(セラルミナム)ハイテクセラミック素材を使ったオールメタル製で、取材したスマイアグレー仕上げは、マット調の表面に数本のラインが入ったデザインが目を惹く。
そしてここからがエンタメ用として気になったポイントで、まずディスプレイに14型3K ASUS Lumina OLED2を採用している。HDR映像の表示にも対応した有機ELディスプレイで、水平2,880×垂直1,800ドットの解像度(アスペクト比16:10)を備えている。デジタルシネマの色域であるDCI-P3を100%カバーしているというのも、気になるところだ。
サウンド面ではクアッドスピーカーシステム(キーボードの左右に各2基、合計4基のスピーカーを内蔵)を搭載し、2ch再生に加えて、動画配信などの5.1chやドルビーアトモス音声もバーチャル再生してくれる。

本体左側面にはHDMI端子とUSB Type−C×2、3.5mmヘッドホン出力を装備(写真上)。右側はUSB Type-Aが1系統という仕様だ(写真下)
これらのスペックを見るにつけ、Zenbook S14なら配信の4K動画やハイレゾコンテンツを手軽に、高品質で楽しめるんじゃないかと思いついた次第。本来はOfficeなどのビジネスアプリでテストをするんだろうけど、今回はそちらは全スルーして(既に多くのレビュー記事が出ているし)、動画配信とハイレゾ再生をメインに確認させてもらった。
まず動画配信コンテンツから。ちなみにZenbook S14には有線LANのコネクターはついていないが、WiFi7に対応しているので無線による動画再生も問題ないだろう。わが家も先日10Gbps環境を導入したので、試しにZenbook S14の通信速度を調べてみたところ(USENスピードテストで平日の午後に測定)、下り800〜900Mps/上り400〜500Mbpsが達成できていた。
この状態で、ブラウザ経由でネットフリックス再生をチェック。Zenbook S14はドルビーアトモス対応なので、話題の樋口真嗣監督『新幹線大爆破』やアニメ映画『スラムダンク』などを再生した。さらに5.1chコンテンツから『ポップスが最高に輝いた夜』や、2ch番組の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』も選んでいる。

ブラウザ経由でネットフリックスを再生。音声もドルビーアトモスが選択されていることが確認できた
映像は、画面がグレア仕上げということもあって、きりっとした高コントラストが持ち味。最近のデジタル製作コンテンツとの相性もよく、クリーンな映像を楽しめる。ディテイル再現も緻密で解像感も高い。ただ、フィルム撮影の映画などはクリーンになり過ぎる印象もあり、視聴ソースとの相性はありそうだ。
サウンドは、まず内蔵のクアッドスピーカーで再生する。デスクにZenbook S14を置いて正面中央50〜60cmくらいの位置から見ると、両耳の周りに音が広がっているような体験ができた。ドルビーアトモスらしい高さ感や包囲感はもう少し欲しいところだが、サラウンドの雰囲気は楽しめる。
この印象は5.1ch作品でも同様なので、マルチチャンネルコンテンツの再生では同じような処理が行われているのだろう。2ch素材では音場空間はやや小さくなるが、セリフの押出し感は向上する。

HDMIケーブルでAVアンプにつなぐ。この状態では4Kとドルビーアトモス音声が出力されていた
Zenbook S14は3.5mmヘッドホン端子も備えているので、有線ヘッドホンをつないでみた。ヘッドホンでの頭内定位にはなるが、低音の量感や細かな効果音の再現性はアップして、セリフも聞き取りやすい。ややすっきりした音作りだが、ドラマやアニメ作品ならこういった使い方もありだろう。
もうひとつ、Zenbook S14はHDMI端子も搭載している。本来は外部PCモニター用だけど、テレビやAVアンプとつなげばホームシアターのプレーヤーとしても使えるはずだ。
そこでAVアンプのヤマハ「CX-A5200」と接続して、プロジェクター&ドルビーアトモス環境でネットフリックスの『新幹線大爆破』を再生してみた。HDMIケーブルでつないだだけで映像(Zenbook S14側で4Kに変換)がすんなりスクリーンに表示され、音声もドルビーアトモス(コーデックはドルビーデジタル・プラス)で出力されている。フルスクリーン表示にすればウィンドウの枠が気になることもないし、サラウンド再生にも違和感はなかった。

USB Type-Cアダプターを使って、USBメモリーに保存した音楽ファイルを再生
USBメモリーに保存したハイレゾ音源も聞いてみる。今回はプリインストールされている「メディアプレーヤー」を使ったが、384kHz/24ビットのリニアPCMファイルも再生できていた(DSDには非対応)。
こちらも内蔵スピーカーから確認する。CDからリッピングした44.1kHz/16ビット音源は、はっきり・くっきりしたトーンだ。続いてハイレゾソースから96kHz/24ビット、192kHz/24ビット、384kHz/24ビットを選んでみたが、音質の変化はほぼなく、ハイレゾの違いを聞き分けるのは難しいと感じた。
AVアンプで信号を確認すると、すべてのサンプリング周波数のデータが48kHzに変換されている(HDMI接続の場合)。ハイレゾの音質差がわかりにくかったのは、ここが原因かもしれない。もちろんこれはアプリ側の制約もあるので、ハイレゾをきちんと楽しみたい場合は対応アプリやUSB DACを準備するといいだろう。

左が「Zenbook S14」で、右が「Macbook Air」のスカイブルー。本体サイズや重さはほぼ同等だった
エンタテインメントのためにPCを選ぶというケースは少ないかもしれないが、Zenbook S14は仕事でも趣味でも快適に使える、魅力的な製品だということが確認できた次第だ。(取材・文・撮影:泉 哲也)