NHKでは、10月1日から、東京・池袋の東京芸術劇場2Fで「8Kリビングシアター」をオープンしている。これは8K放送の普及推進と、芸術(音楽・演劇・美術)分野における活用のトライアルとして企画されたもので、8Kで収録したクラシック音楽や演劇などのコンテンツを長期間にわたって上映するイベントだ。
今回は、初日のオープン直後に東京芸術劇場にお邪魔してみた。エントランスを入り、エスカレーターで2Fに上ると「8Kリビングシアター」の看板が目に入る。ここは以前カフェがあったスペースで、その中に12畳ほどのリビングを設置、8K液晶テレビと22.2chのサラウンドシステムを常設している。
使用機器はシャープ製8K液晶テレビや英国のオーディオブランドKEFのインウォールスピーカー、サブウーファーで、これまでも様々なイベントで使われていたもの。その分エージングも進んでおり、サラウンドの面ではより快適な体験が可能になっている。
実際にこの空間で「ウィーンフィル演奏会」や「8K N響演奏会」などの音楽コンテンツを視聴させてもらったが、ステージの生々しさ、楽器のリアルさなど、まさに8Kの魅力全開。そこに包囲感に優れたサラウンドサウンドが加わることで、コンサートホールそのもののような臨場感が体験できた。
初日は平日だったにも関わらず、会場には複数の来場者があり、中には壁に埋め込まれたサラウンドスピーカーでどんな音が再現されているのか、ひとつひとつに近づいて耳を傾けている方もあり、その自然な心地よさに驚いているようだった。
そんな中、NHKの説明員に熱心に質問している方を発見。オーディオビジュアルにも詳しい様子だったので、声をかけさせてもらった。
その高田眞輔さんは、なんと福岡で活躍しているムービー/フォトグラファー。今回は同日に公開がスタートした『007/ノータイム・トゥ・ダイ』を池袋グランドシネマサンシャインのIMAX劇場で鑑賞するために上京していたとのこと。そしてStereoSound ONLINEの記事で「8Kリビングシアター」がスタートすることを知り、映画鑑賞後に駆けつけてくれたわけだ。
高田さんはもともと映画館に足を運ぶのが大好き。特に映画作品は初見でどんな劇場を選ぶかによって印象がかなり変わるので、気になる作品については可能なかぎり評判のいい劇場を選ぶようにしているという。
そんな経緯で参加した「8Kリビングシアター」も好印象だったとのこと。8Kと22.2ch自体は地元のNHK福岡でも体験したことがあったそうだが、リビング相当の空間での視聴は初めてで、特に音のまとまりの良さが印象的だったそうだ。
「コンサートにも出かけますが、今日の8Kと22.2chはまさに現場の雰囲気が感じられました。もっともっとこんな体験ができる場所が欲しいですね。福岡のNHKにもこういったイベントをリクエストしたいです」と8Kリビングシアターの感想を的確に話してくれた。
今回の催しについては既に11月の上映作品も予定されているなど、長期に渡って楽しめるのも特長だ。入場無料なので、この機会に8K超高精細映像と22.2chのサラウンド音響の魅力を体感してみてはいかがだろう。なお、新型コロナの感染防止対策として、当面、定員5席での鑑賞となるので、その点は事前に了解いただきたい。(取材・文:泉 哲也)
「8Kリビングシアター」
●開催期間:2021年10月1日(金)〜12月下旬(予定)
●時間:平日 午後2時〜午後6時、土日祝 正午〜午後6時(※休館日を除く)
●場所:東京・池袋 東京芸術劇場2階 プレイハウス(中ホール)隣(東京都豊島区西池袋1-8-1)