ネットワークオーディオはノイズとの闘いだ。効率を身上とする通信技術を活用するのだから、ノイズの存在は避けられない。対ノイズ武闘の騎士として彗星の如く登場したのがエディスクリエーションのネットワーク機器だ。電子技術者でオーディオマニアのエディソン・ウォン氏が「理想のオーディオを作る」との思いで2014年に設立した、香港のブランドだ。今回、日本デビューを果たすのは光ファイバー分離機器FIBER BOX2とオーディオ用スイッチングハブSILENT SWITCH OCXOのいずれも日本仕様品。本稿では後者を試聴した。

「エモーション、パッション、プレシジョンが私のモットー」というウォン氏のこだわりはモノづくりの全工程に及び、製品を自らの手で製作し、最終チェックまで行なう。ウォン氏の慧眼は機器内部で発生するノイズと外部からのノイズの抑制方法だ。内部では考えうる最高の構造、回路を採用した。クロックは超高精度のOCXO(恒温槽付水晶発振器)にて生成、リニア電源に超低ノイズレギュレータを加えた。外部ノイズに対してはケースを航空機グレードのアルミニウムをCNC加工して製造した。さらに世界初のグラウンドアイソレート(絶縁)スイッチを搭載。ルーター、NASなどからメタルプラグケーブルを経由して飛び込むグラウンドノイズを遮断する。端子ごとにオン/オフ可能だ。

画像: LAN端子を8系統備えるギガビット対応のスイッチングハブ。強力なアナログリニア電源の搭載や、ソリッドアルミニウムによる強靭な筐体構造、OCXO(恒温槽付き発振素子)を使った低ジッタークロック、ロック機構付きのLAN端子など、細部までオーディオコンポーネント流儀の設計が徹底されている。LAN端子からのノイズ混入防止のため、グラウンド分離スイッチをそれぞれの端子の下に備えている

LAN端子を8系統備えるギガビット対応のスイッチングハブ。強力なアナログリニア電源の搭載や、ソリッドアルミニウムによる強靭な筐体構造、OCXO(恒温槽付き発振素子)を使った低ジッタークロック、ロック機構付きのLAN端子など、細部までオーディオコンポーネント流儀の設計が徹底されている。LAN端子からのノイズ混入防止のため、グラウンド分離スイッチをそれぞれの端子の下に備えている

顕著な音質差を実感
アイソレート機能も効果抜群

 試聴は音質編と画質編の二部で行なった。まず音質編。リンのアキュレイトDSM、サーバー、ルーターからの3本のLANケーブルを挿し込み、バッファロー製の定評あるハブ、BS-GS2016Aと比較する。遮断スイッチはすべてオフの状態で聴き比べた。音源はUAレコードの情家みえ「チーク・トゥ・チーク」。192kHz/24bitだ。

 衝撃を受けるほどの顕著な音質差だ。冒頭のベースの音の核がリジッドに形成され、ベースに加えヴォーカル、ピアノ、ドラムスの音像イメージが明確になった。音場全体でノイズフロアーが下がった結果、ヴォーカルの伸び、微細なニュアンス感なども明瞭に浮かび上がる。まずアイソレート機能を使わずに比較したが、それでも大きな差が分かった。筐体、電源、回路のトータルな成果だ。

 では、遮断スイッチをひとつずつオンしよう。まずはルーターからのLAN端子だけをオン。音場の透明感が格段に向上。ヴォーカルの天井が高くなり、クリアーさが増した。次にサーバーからのLAN端子だけをオンにする。質感に効いた。歌いがよりていねいになり、肌感覚が豊かに、音像的なボディ感がリッチになるのだ。最後にプレーヤーと結ぶLAN端子をオン。この違いがもっとも大きかった。フォーカスが大幅に向上し、ピアノのタッチ感がより明晰になり、ベースがより弾んだ。アイソレート機能オンの利点は確かにあった。

 では3つの端子のアイソレート機能をすべてオンにし、ノイズ遮断を最高度にしたらどうか。これは凄い。まさに個別で得た透明感+質感+フォーカス感のトータルが一挙にブレイク。ひじょうにフォーカスが鋭く、ヴォーカルが上質で、楽器は核を持ったしなやかさ……と、ひとことで言うとハイエンド的な音調が得られた。ヴォーカルも音像はリッチだけど、締まりはタイトという、まさに本作のプロデューサーである私がこの音源に仕込んだ狙いが、そのまま再現されたと聴いた。しかも性能的には抜群だが、蒸留水的ではなく、たいへんおいしい水、といった印象だ。

画像: 内部は比較的余裕をもたせた設計となっているが、これは内部的なノイズ対策を入念に検討した結果だろう。シャーシ全体の強度はひじょうに高く、振動対策が充分にとられていることがうかがえる

内部は比較的余裕をもたせた設計となっているが、これは内部的なノイズ対策を入念に検討した結果だろう。シャーシ全体の強度はひじょうに高く、振動対策が充分にとられていることがうかがえる

画像: 右下の四角いケースがOCXOクロック。恒温槽(オーブン)に水晶発振器を封入し、温度管理を厳密に行なうことで低ジッター化を図る、本機の心臓部ともいえる回路だ。左側には、トロイダルトランスや巨大な電解コンデンサーなどが配置されている

右下の四角いケースがOCXOクロック。恒温槽(オーブン)に水晶発振器を封入し、温度管理を厳密に行なうことで低ジッター化を図る、本機の心臓部ともいえる回路だ。左側には、トロイダルトランスや巨大な電解コンデンサーなどが配置されている

光の表現力が大幅に向上!
映像配信も明確な効果あり

 ストリーミング画質が本ハブでどう変わるかも大いに関心のあるところだ。そこで、4K配信されている映画『グレイテスト・ショーマン』をApple TV 4Kでストリーミング再生する時のハブに本機を使う。インターネット接続のルーターからのLANケーブルと、Apple TV 4KへのLANケーブルを接続。ここでもバッファロー機と比較する。遮断スイッチは、どちらもオンにした。

 東芝の4K有機ELテレビ48X9400Sで観ると、粒子サイズの細やかさ、微小信号部分のコントラスト再現性、小面積のピーク感、そして光の抑揚感が格段に違った。チャプター15のバーナム夫人の淡い水色のプリーツ服。その襞から立ち昇る微少な光粒子の繊細さ、一転して高彩度なハイコントラストの屋外シーンでの光の屹立感、艶やかさという表現の幅こそ、SILENT SWITCH OCXOの独壇場だ。

 音質も画質も著効のSILENT SWIT CH OCXOは、もはや高品位なネットワーク再生の定番品といえよう。

画像: 光の表現力が大幅に向上! 映像配信も明確な効果あり

SWITCHING HUB
EDISCREATION SILENT SWITCH OCXO “JAPAN STANDARD MODEL”
¥187,000(税込)
● 型式:スイッチングハブ
●接続端子:LAN端子(RJ45)8系統
●寸法/質量:W270×H85×D220mm/2.9kg
●問合せ先:㈱タクトシュトック TEL 03(5848)2239

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