ドイツの音響機器メーカー、ゼンハイザー社は、コアなヘッドホンやイヤホンファンから常に動向が注目される存在だ。そんな同社から約4年ぶりとなるフラッグシップイヤホンIE900が登場。同社のフラッグシップモデルを手掛けるヤルモ・ケーンケ氏の手により、ドイツ本国で3年半もの開発期間を経て完全新設計されたモデルだ。
ハウジングはアルミブロックからの削り出し。7㎜の新型ダイナミック型ドライバーは5㎐から48k㎐の周波数特性を持たせつつ、ノンコーティングのポリマーブレンド振動板を採用して不要共振や歪みを低減。さらにハウジング内に設けられた、エアーフローを最適化する「トリプルレゾネーターチャンバー」や、渦状のホール形状を持つ「アコースティックヴォルテックス」などの音響構造によりピークやディップを抑えたという。
2.5㎜4極、4.4㎜5極、3.5㎜の3種類のケーブルが付属し、耐久性の高い「Fidelity Plus MMCXコネクター」の採用など現在のトレンドを押さえている。イヤーチップは一般的なシリコンタイプに加え、低反発で外耳道へフィットする「ビスコース・メモリーフォーム」の2種類が付属する。
本機でもっとも感心したのは、純粋な音のよさである。アステル&ケルンのSE180と2.5㎜4極端子でバランス接続して、リファレンス曲であるホセ・ジェイムズ『リーン・オン・ミー』(44.1k㎐/24ビット FLAC)から「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」を再生した。一聴して全帯域のスピード感が高く、お手本のような空間表現力に驚いた。まるでオーバーヘッドタイプのヘッドホンで聴いているような音だ。
完全ワイヤレスイヤホンの存在感が増している昨今だが、音質は依然としてワイヤードタイプに大きなアドバンテージがある。テクニクスのEAH-TZ700やソニーのIER-Z1Rなど、音質がよいモデルが登場しているが、本モデルはそれらに連なるイヤホンだ。編集部に一斉試聴テストを提案しよう。