艶やかなプレスリーの声音が自然に前に出て音像となるのが好印象
英国のBBCモニターの設計を受け継ぐスペンドール「LS 3/5a」は1982年に登場し、ウーファーは11㎝径だった。1998年にはユニットを一新させたモデルとして「S 3/5」が登場。ウーファーは14㎝径となり、低域のゆとりが増し、力強い音を放射できるようになった次第。2017年には「Classic 3/5」として、さらに新開発したユニットを採用。ウーファーは15㎝径のEP77ポリマーコーンとなり、ダンプ剤の厚塗りは見られない。ソフトドームトゥイーターは、2.2㎝径のワイドエッジ型である。
それと同じユニット構成を採り、バッフル板の幅を少し広げたのが今回の「Classic 4/5」だ。出力音圧レベルは84㏈となっている。
当初は開き角60度の定位置で試聴したがやや薄味になるので、L/Rのそれぞれ横幅分だけ内側に寄せると、表情にゆとりが得られた。プレスリー初期のゴスペル録音は、その現場を響きが充溢させていく様子が明瞭だ。艶やかなプレスリーの声音が自然に前に出て音像となるのが好印象。また、ビッグバンドジャズの構成感のある和声の積層、成熟感のある音色が響きの濃淡を伴ってじわりと迫ってくる。ピアソラのタンゴは現代の室内楽作品風に緊密だ。こうしたしっとり系のトーンに実体感が伴うのは、陰影描法の上に輪郭描写を加える手法だからだ。その基調に加えて現代的な鮮度や解像感を演出するのだから実に巧みな設計だ。