シャープから、オーディオビジュアルファンも気になる32型8K液晶モニターディスプレイ「8M-B32C1」が発表された。市場想定価格198万円(税別)で、6月下旬から発売される。
8M-B32C1は、32型というサイズに8K解像度(水平7,680×垂直4,320画素)の液晶パネルを搭載、さらにHDRにも対応したモニターディスプレイだ。このサイズで8K解像度とカラーマネジメント機能を備えた製品は初めてという。まずは業務用として発売されるが、後々は一般ユーザー向けの販売ルートも検討していく予定だ。
一番の特徴は、新開発の液晶パネルを搭載していることだろう。先述の通り8Kの解像度と、上下・左右とも176度の視野角を備えている。最近のモニターディスプレイでは液晶パネルを2枚重ねて高コントラストを実現しているモデルもあるが、8M-B32C1は一枚パネルだ。
バックライトは直下型で、HDRに対応するためにLEDの数を増やして輝度をアップした。分割駆動方式だが、分割数は非公表とのことだ。なおこれだけの明るさを実現しているため、熱も多く出る。今回は背面に4基の空冷ファンを搭載して放熱しているそうだ。
ちなみに液晶パネルの表面はグレア(光沢)仕上げだが、これはノングレア(半光沢)にすると映像がにじんだように見え、8Kの精細感が正しく再現できなかったからだそうだ。
さてここ数年のシャープは、「8K+5GとAIoTで世界を変える」という事業ビジョンの下、8Kに関わる様々な製品を打ち出してきた。実際に、AQUOSスマホで8K映像を撮影し、ダイナブックのPCを使って編集、それをAQUOS 8Kテレビで再生する……といったエコシステムを構築している。
今回の8M-B32C1には、映像制作用機器としてプロ分野だけでなく、ハイアマチュアにも使ってもらいたいという願いも込められている。市場には8K静止画だけでなく、動画も撮影できるデジタル一眼レフも出てきており、それらのユーザーがせっかくの解像度を活かしたまま編集できるディスプレイとして提案しようということだろう。
それを踏まえてシャープでは、コンテンツ制作用ディスプレイに求められる条件として、「細やかな階調を表示できること」「正しい色域を表示できること」「画面に色ムラや輝度ムラがないこと」「一定の表示品質を保てること」の4つを考え、それぞれに必要なスペックを搭載したそうだ。
細やかな階調再現については、32型8Kパネルの搭載で対応。8M-B32C1は約280dpiという解像度を持っており、これはカラー写真(約300dpi)やカタログなどのフルカラー印刷(300〜350dpi)に匹敵するクォリティだ。
さらに1,000カンデラ/平方メートル(全白時は800カンデラ/平方メートル)の輝度と、コントラスト比100万対1をクリアー。HDR方式として「PQ」(HDR10)と「HLG」のふたつの方式に対応している。
色域もハイビジョン放送のBT.709やアドビRGBの100%、4K8K放送で使われているBT.2020の85%をカバーしている。8つのカラーモードも準備されており、ここを切り替えると、コンテンツに最適な設定(色域とHDRの種類)を自動的に選んでくれる。
色ムラ、輝度ムラに対しては、「SHARP Advanced UCCT」(SHARP Advanced Uniform Color Calibration Technology)も搭載された。これは大画面展示会などでマルチディスプレイを構成する際に、液晶ディスプレイのRGB入力信号に対する表示特性を細かいエリアで測定し、それぞれについて色度と輝度を補正することで均一な表示ができるように開発された技術だ。
カラーキャリブレーション機能は、別売の測色センサーとシャープが提供するアプリ「SHARP Display Calibration Utility」(ウィンドウズ用)を使って行う仕組みで、明るさや色味の経年変化を補正して、安定した表示品質を保ってくれる。なお、モニターの使用状況等にもよるが、測定は1時間前後かかるそうだ。
その他、編集・撮影時のサポート機能として、HDRで表示する際に設定した輝度を超える領域を警告する「輝度クリッピング」や、BT.2020やDCI-P3の映像でBT.709に収まらない領域を警告する「色域外警告」なども備えている。
映像入力端子は、8K信号がケーブル1本で伝送可能なHDMI2.1を1系統と、HDMIケーブルを4本使うHDMI2.0が1系統(端子は4つ)。さらに4K信号用のHDMI入力1系統とディスプレイポート1系統を搭載する。