オーロラサウンドから、MMエキスパンダーのAFE10とRIAAコンバーターのAFE10という趣味性の高い機器が発売された。本誌試聴室で試してみたのだが、なかなか面白く有意義な製品だったので紹介したい。
MMエキスパンダーのAFE10は、アンプのMM型フォノ入力とフォノカートリッジの間に挿入する機器だ。主宰者の唐木志延夫氏によれば、47kΩ負荷で固定されているMM型入力ではヴィンテージのフォノカートリッジを組み合わせた場合に高域が強調されすぎたり音が暴れたりするという。AFE10は負荷抵抗(Ω)と負荷容量(pF)を段階的に変化できるのが特徴。聴感でエネルギーバランスを調整する機器である。ステレオカートリッジでモノーラル盤を聴く場合にノイズ成分となる縦振幅の音をキャンセルできる、MONOスイッチも便利な装備といえよう。
対応するカートリッジはMM型だけではなく、GEのバリレラや高出力MC型にも対応する。また、昇圧トランスを経由したMC型も可能である。AFE10は電源不要のパッシヴ機で、信頼性の高いロータリースイッチを採用。TAKMAN製の固定抵抗器(誤差1%級)と独WIMA製のフィルムコンデンサーが、音声信号に並列接続されるようになっている。
シュアーのM44Gでデイヴ・グルーシンのダイレクト盤を聴いてみると、中高域が張ったエネルギーバランスで違和感がありあり。そこで推奨値(47kΩ/470pF)にすると、オヤッと驚くほど聴き慣れたバランスに仕上がった。また、ザ・ビートルズ「プリーズ・プリーズ・ミー」のモノーラル盤(英国パーロフォン)をGEのバリレラで聴いてみると、高音域が突っ張ったウルサイ音になってしまう。それをAFE10で6.8kΩの負荷抵抗にすると、ヴォーカルが聴きとりやすく中音域を重視した好ましい音調バランスに変貌。負荷容量のベストポジションはお好みということだが、何度か聴き比べると最適値が見出せそうだ。同じくモノーラル盤のザ・ビーチ・ボーイズ「グッド・ヴァイブレーション」(レコードストアデイの10インチ/78回転盤)を聴いたが、試聴環境ではGEのバリレラは6.8kΩ負荷が最適だった。
視聴したレコード
試聴したヴィンテージ・カートリッジ
RIAAコンバーターのAFE11は、CDプレーヤーなどのラインレベル信号をMM型フォノ入力で聴くことができる、逆RIAA補正カーブと減衰回路を内蔵した製品。ACアダプターからの電源供給で、そこでのリップル成分を低減する回路も内蔵している。
入出力には高音質オペアンプを使ってインピーダンス変動の影響を回避した。正確なRIAA逆補正カーブは、米国オーディオプレシジョンの高性能計測器で詰めたもの。
本機を介してアキュフェーズDC950の出力信号をエアータイトATC5プリアンプのMM入力に接続して聴いたが、良質のアナログ盤を聴いたイメージである。真空管回路らしい温かみと弾力のある美音が愉しめた。