NHKは、12月23日(水)から26日(土)の4日間、東京・品川の品川インターシティホールで、年末の風物詩であるベートーベンの「第九」を8Kの超高精細映像と22.2chサラウンドで体験できる上映イベントを開催している。
会場には、今年8月に開催された『8K de 音楽フェス〜音楽ライブざんまいの3日間〜』と同様
に450インチ8Kスクリーン&22.2chサラウンドシステムが設置されている。
23日19時からはこのシステムで、『生中継! ベートーベン生誕250年記念N響「第九」演奏会』が上映された。同時刻にNHKホールで開催された演奏会はNHK BS8K放送で生中継されていたが、それを品川インターシティホールにも中継していたわけだ。
ちなみにNHKホールには5〜6台の8Kカメラと40本前後のマイクが設置されていたようで、これをリアルタイムで映像スイッチング、さらにマルチチャンネル収録されたサウンドを22.2chにエンコードしていたとのこと。
そうして制作された8K映像と22.2chサラウンド音声がNTTの専用回線を使って品川インターシティホールに伝送され、先述の450インチ&22.2ch環境で再現された。その際は150Mbps前後のビットレートだったとかで、その点では放送よりも好条件で楽しめたことになる。
その中継映像が品川インターシティホールのスクリーンに映されると、現場の空気感が伝わってきて、まさにNHKホールに紛れ込んだかのように感じられた。お客さんのざわめきや、密を避けるように呼びかけるアナウンスがひじょうにリアル。特にアナウンスはNHKホールからの中継なのか、品川インターシティホールでリアルになされているのか混乱してしまったほどだ。
もちろん演奏会もその緻密な映像と立体音響の効果から没入・堪能することができた。8K映像が指揮者のパブロ・エラス・カサドの表情まで克明に描き出し、彼が楽しそう指揮をしていることがよくわかる。さらにほとばしる汗やダイナミックな腕の動きも迫力充分。実際の演奏会では決して見ることができないアングルからの映像に圧倒される。
22.2chサラウンドもまさにリアルな場を展開する。ヴァイオリンを始めとする弦楽器の調べや打楽器の小気味いい響き、トライアングルの澄んだ高音までどれも眼前で演奏されているかのようだ。品川インターシティホールに送られる音声はAAC圧縮されていなかったことも有利に働いていたのかもしれない。
今回のイベントは入場時に消毒と検温が必要で、さらに座席の間隔も充分に空けられるなど、新型コロナウイルス感染症対策もしっかり取られている。23日の上映時の来場者も、親子連れから女性の二人連れ、ご夫婦まで幅広い世代に渡っており、みんな厳しい環境下でも年末の「第九」を楽しみにしていたであろうことがうかがえた。終演後には会場から拍手があがり、来場者が8K&22.2chの「第九」を充分に楽しんでくれたことは間違いない。
明日からは、『世界三大オーケストラの響き ベートーベン第9 アンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』や『いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台 レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ベートーベン交響曲第9番・合唱付き』といったBS8Kの人気コンテンツを上映予定なので、こちらも必見だ。
なお今回のイベントは予約制だが、まだ席に余裕があるとのこと。各回とも上映1時間前から当日券が配布されるので、8K&22.2chの「第九」を体験したい方は早めに会場をのぞいてみてはいかがだろう。(取材・文:泉 哲也)
8Kクラシックシアター「8K de 第九!」
●開催日時:12月23日(水)〜26日(土)
●会場:品川インターシティホール(JR品川駅港南口より徒歩5分)
●上映システム:8Kスクリーン(450インチ)&22.2chサラウンド
●席数:250席程度(新型コロナウイルス感染防止のため、座席数を定員から減らし、ソーシャルディスタンスを確保した上での配置)
●入場無料